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日本の社会保障、雇用制度に対して懸念、国連社会権規約委員会
4月29日から開催されていた社会権規約委員会の第50会期が5月17日、今会期に審議された日本を含む7カ国に対する総括所見を採択して閉会しました。
日本への総括所見は、37段落あり、63段落あった2001年の総括所見よりも絞ったものになっているものの、社会権規約の実体規定全般にわたり、いまの日本の状況に対する懸念や勧告が出されています。
委員会はまず、社会権規約が、日本の裁判所で適用できないことについて懸念を表明し、自動執行力を有していないと考える規定については、必要な立法上の措置をとることを含め、社会権規約が国内法上の効果を持つよう必要な措置をとることを求めています。また、規約上、権利を漸進的に実施すればよいと考える日本政府に対し、各権利の「核心」的義務については、直ちに実施しなければならないことを思い起こすよう求めています。
そのほかにも次のような点について、懸念・勧告を表明しています。
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形式的、実質的差別を撤廃するための包括的な法律をつくること
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ジェンダー的役割に関する固定観念を変えるために教育、啓発を行う他、第3次男女共同参画基本計画(2010年12月)より一層大胆な目標を設定すること
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有期雇用の濫用を防止し、無期雇用契約への転換回避の雇い止めが起らないようモニターすること
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過労死や職場のハラスメントによる自殺などが起っていることに対し、長時間労働を防止する措置を強化し、職場におけるあらゆる形態のハラスメントを防止、禁止すること
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労働者とその家族が人間らしい生活を確保できるよう最低賃金を決定する際考慮する要素を見直すこと
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賃金の格差、特に男女の賃金格差が大きいことについて、同一価値労働同一賃金の原則の雇用者、労働基準監督官などへの周知、啓発をおこなうこと
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セクシュアル・ハラスメントを禁止し、処罰すること
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非正規滞在、庇護申請者、難民を含む移住労働者に在留資格に関わらず労働法が適用されることを周知すること
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高齢者の貧困に対応するために、年金の最低保障額を導入すること、生活保護申請者が尊厳をもって対応されるよう確保し、福祉手当を受給することに関するスティグマを撤廃するよう社会を啓発すること
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夫婦間レイプを含む配偶者間の暴力を犯罪とすること
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災害に対する救援や復興において、人権を基盤とするアプローチをとること、特に災害対策が経済的社会的および文化的権利の享有の差別につながらないよう確保すること
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原発施設の安全に関連する問題に関し、透明性、事故対策を強化し、危険の可能性、防止措置や対応策について包括的で信頼のできる、正確な情報を住民に提供し、事故が起った際にはすべての情報を直ちに開示すること
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「慰安婦」の受けた搾取の被害に対して必要な措置をとり、彼女たちに対するヘイトスピーチなどを防止するために社会を啓発すること
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教育に関する差別禁止は直ちに実施しなければ成らない義務であり、朝鮮学校に通学する子どもにも高校無償化の制度が適用されるよう確保すること
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義務教育が外国籍の子どもにも、その法的地位に関わらず適用されるようモニターすること、無償化制度に入学金や教科書代もできるだけ早急に含めること
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アイヌの人々の生活水準改善に向け、特に雇用と教育の分野における特別措置を含む努力を強化し、その取組を北海道以外に住むアイヌの人々にも拡大すること
出所:
社会権規約委員会 第50会期 (OHCHR) http://www2.ohchr.org/english/bodies/cescr/cescrs50.htm
第3回報告審査の総括所見 (日本語訳:社会権規約NGOレポート連絡会議)(ARC 平野裕二の子どもの権利・国際情報サイト)
http://www26.atwiki.jp/childrights/pages/234.html
参考:
「日本の社会権規約の実施が国連で審議」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2013年5月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2013/05/post-46.html
第2回報告に関する総括所見(2001年8月)(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/kenkai.html