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反人種主義・差別撤廃世界会議NGOフォーラム
宣言と行動計画
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(訳注およびこの翻訳の著作権について)
二〇〇一年九月三日反人種主義・差別撤廃世界会議NGOフォーラム宣言
前文
1 われわれ、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議(以下、世界会議)」のために二〇〇一年八月二八日から九月三日の週にかけて南アフリカ・ダーバンに世界各地から集結した草の根、国内、国際NGOさらに市民社会のグループは、人種主義および人種差別に対する闘いにおけるわれわれの責務に導かれ、かつ世界会議の準備のためにストラスブール(フランス)、サンチアゴ(チリ)、ダカール(セネガル)、テヘラン(イラン)で開催されたNGOフォーラムおよびワルシャワ(ポーランド)、カトマンドゥ(ネパール)、カイロ(エジプト)、キト(エクアドル)で開催された関連するサブ・リージョナルなNGO会議の勧告に鼓舞され、ここに以下の「宣言」を行う。
2 南アフリカにおいて正義と自由を勝ち取るために苦しみに耐えたすべての人びとに厳粛に感謝を捧げ、「アパルトヘイト」に対する闘いのために自らの命を犠牲にした人びとの記憶を称え、人種主義および人種差別のない新たな社会を築こうとした南アフリカ人民の精神を賞賛し、それが世界共同体に対し希望の光となったことを認識し、
3 人種主義、人種差別、ジェノサイド、奴隷制、外国人排斥および関連する不寛容、集団虐殺的慣行およびあらゆる他の形態の差別や排除に対し闘ったすべての人びとに敬意を表し、この闘いおよび抑圧に対する他の闘いに命を捧げた人びとを称え、人種主義という悪に対して闘い続ける人びとを励まし、かつ、支援し、
4 「アパルトヘイト」を人道に対する罪であるとした宣言がこの非人道的な人種差別主義国家システムの根絶を追求してきた国際社会によってとられた進歩的な一歩であった事実に留意し、南アフリカ人民の「アパルトヘイト」に対する闘いの支援における世界共同体の積極的な役割を想起し、
5 すべての人間は、尊厳と権利において生まれながらに自由で平等であり、自らの社会の発展と福祉に建設的に貢献できる能力をもっていること、そして、すべての人類社会は、尊厳、平等、正義、寛容、連帯、多元主義、多文化主義という価値を共有しうることを認識し、
6 すべての人権は、普遍的で不可分、相互関連性をもち、不可侵であること、すべての人間は、人種、階層、皮膚の色、性別、市民権、ジェンダー、年齢、障碍の有無、性的指向、ジェンダー・アイデンティティ、言語、国籍、民族性、文化、宗教、カースト、門地(世系)、職業、経済・社会的地位あるいは出自、HIV/AIDS感染状態を含む健康状態や他のいかなる地位のようなあらゆる区別と関係なく、これらすべての権利を有することを再確認し、
7 世界における文化、言語、宗教および民族の多様性は豊かであり、こうした多様性こそが人種主義、人種差別、ジェノサイド、奴隷制、外国人排斥および関連のある不寛容のない世界を創造する可能性を有することを認識し、
8 人種主義、人種差別、ジェノサイド、奴隷制、外国人排斥および関連のある不寛容は、人種の優位性、皮膚の色、アイデンティティ、優性・純化思想および多数派の地位という概念を通して、ある特定の人びとの集団に他を圧する政治的、経済的、社会的権力を与えるイデオロギー上の産物に基礎づけられたものであることを認識し、
9 「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(以下、人種差別撤廃条約)」が定義するように人種差別主義のイデオロギーは、「科学的に根拠がなく、倫理的に批判されるべきものであり、社会的に不当で危険」であり、経済的に破壊的であるということ、および、いかなる場所でも理論上も実践上も人種差別は正当化されないことを再確認し、
10 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の撤廃における「国際刑事裁判所」の役割およびその特異な重要性を認識し、かつ普遍的な批准の必要性を強調し、
11 多くの人種主義および人種差別の今日的な現れの根本には、認知および賠償がいまだかつてなされていない人民の強制移住、領土および資源の大規模な収奪、および、政治的、宗教的、社会的制度の破壊に導き、かつ、優位性、優性・純化のイデオロギーに基づく歴史的不正義と今日まで引き継がれているその結果を生み出した、奴隷貿易、奴隷制、植民地主義および外国による占領という遺産が位置付けられることを考慮し、
12 攻撃的なナショナリズムや自民族中心主義の高まりは、とりわけ移行期にある国において、奴隷貿易に起因するものではないにしても、以下の特定の集団を標的に大規模な人権侵害および差別、迫害をしばしばもたらすエスニック、宗教的マイノリティに対する歴史的な偏見と嫌悪に深く根ざした人種主義および外国人排斥の表現である。こうした標的になる集団にはユダヤ人、ロマ人、クルド人、コーカサスおよび中央アジアからやってきた人びと、メシェティアン・トルコ人が含まれ、とくに旧ユーゴスラビア、チェチェンにおいて、ジェノサイドの一形態ともいえる民族浄化(ethnic
cleansing)と人道に対する罪をまさにたびたび引き起こしてきた。
13 人種主義、人種差別、ジェノサイド、奴隷制、外国人排斥および関連のある不寛容を撤廃するための国際的な法的権利および義務の創設に関して国連が担う役割を認識し、これらの文書および機構の履行に政府や国連によって行われてきた努力が、それにもかかわらず、大いに不十分であり、市民社会アクターを排除しており、また、加害者および共犯者を罰しないまま放置してきた事実に、われわれは落胆する。
14 国際的な金融・貿易機関、多国籍企業、原理主義者集団などの非政府アクターによって引き起こされた不正義および暴力へのとりくみに関する政府および国連の永続的な失態が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を悪化させ、永続させてきたことに対し恐れを表明し、
15 政治権力の獲得および維持に関し、人種差別的または外国人排斥のイデオロギーを利用するある特定の政党と関連する集団の成功や明らかな人気の高まりに対し恐れを表明し、
16 国家による人種主義は、政治的な動員または自らの権威および政治的権力の正当化のために、一般大衆のもつ国家主義的あるいは外国人排斥の感情を利用する政治的、知的エリートによりしばしば示されているが、そうした人種主義は、伝統的で露骨な方法ばかりでなく、政府官僚による人種主義の存在自体の否定という問題により悪質化した、新しく、より巧みで、構造的な形態をとっていることを認識し、
17 すべての宗教は、平和、寛容、非差別、他者に対する尊敬と受容を提唱する原則に基礎づけられており、さらに、宗教、信仰および良心の自由が、世界平和、社会正義および人民間の相互理解という目的の達成に貢献しているにもかかわらず、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を進める政治目標を煽るために宗教が悪用されている状況が存在することを認識し、
18 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が、大規模な人権侵害と嫌悪犯罪を生み出す基礎であり、紛争を引き起こすとともにそれを維持し、したがって発展を阻害するとともに平和および民主主義に対する脅威となっており、すべてのレベルにおける効果的な法的メカニズムを含むあらゆる適切な方法によって立ち向かわなければならないことを考慮し、
19 先住民族は、自己決定権、自らの歴史的・文化的アイデンティティに基づいた資源管理および領土支配の正統な行使権を含めた個人および集団の権利の双方の保有者であり、自らの祖先伝来の領土とアイデンティティを未来の世代に伝える権利および責任を有していることを確認し、
20 パレスチナ人が、自己決定権、国家を有する権利、独立と自由の権利および国連決議194に規定された帰還の権利を有することを確認し、
21 ハワイ人、クルド人、カシミール人、西スマトラ人、西パプア人、アチェ人、スリランカのタミル人、チベット人、ロマとトラベラー、プエルトリコやマルチニーク島・グアダルーペ島のような米州の非独立地域を含む、すべての人民の自己決定権もまた確認し、国連にこの権利を確認することを可能にする仕組みや手続きを生み出すこと、とりわけ西サハラに関する二〇〇一年六月二九日の国連安全保障理事会決議1359/2001を尊重するよう要請し、
22 スリランカにおける五〇年に及ぶ民族紛争が死亡、失踪、レイプ、拷問および破壊をもたらしたことを認め、また、タミル人マイノリティの自己決定権を確認し、
23 シーク、モハジール、シンディ、バローチなど、固有のアイデンティティをもつある文化的集団が、人種的、民族的、宗教的および文化的要因の複雑な相互作用という障壁に直面していることを認め、
24 グローバル化は、世界経済の植民地主義的・帝国主義的統合、ならびに、世界各国間、地域間の不平等な力関係の維持および深化に基づく歴史的に不均等なプロセスであり、地球規模の不平等、貧困および社会的排除の状況を悪化させるものであることを認識し、
25 現在の形態のグローバル化および国際金融・貿易機関の政策ならびに多国籍企業の活動が、すべての人民の経済的、社会的、文化的権利の完全な実現を妨げ、最も周縁化された集団の社会からの排除を維持、深化し、さらに、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の緊張と発現を高めていることを深く憂慮し、
26 グローバル化の文脈において、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容によりすでに周縁化されている男女、若者、子ども、障碍をもつ人びと、正規・非正規労働者が経験している差別的労働慣行により、これらの人びとがさらに搾取、貧困および社会的排除にさらされやすくなっていることを認識し、
27 奴隷制、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容のすべての犠牲者のあらゆる形態の賠償に対する権利を認め、
28 環境レイシズム(environmental
racism)が、天然資源の搾取と枯渇、および、意図するものであれしないものであれ、健康、生態系ならびに民族(nations)や共同体、集団、個人、とくに貧困層の生活を著しく害するあらゆる環境政策、慣行、行動もしくは行動を怠ることを指す、人種差別の一形態であることを認め、
29 武力紛争という状況は、しばしば人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容から生じること、また、そうした紛争が逆に人種主義および関連する形態の差別を永続化することを認め、さらに、戦争犯罪は国際刑事裁判所の設立いかんにかかわらず国内レベルで緊急に訴追されなければならないことを、強調する。
30 武力紛争は、性的奴隷制、レイプ、強制妊娠などに帰結する、軍事化ならびに女性、若者、子ども、とりわけ女児および障碍をもつ人びとに対する暴力の増大につながる環境を生じさせることを、懸念をもって留意する。現在大陸の四分の三が戦争状態もしくは何らかの形態の武力紛争状態にあるアフリカをはじめとする世界中で、武力紛争が拡散し、蔓延している結果、大量の人びとが住むところを追い立てられ、大規模な難民および避難民の流出を生み、何百万人もの子どもと若者の軍事化が進められており、これらの集団への効果的な保護および国際人道法の尊重が要請されている。
31 地球規模での軍事化と核開発の拡大をもたらし、とりわけ武器売買および貿易、武器・軍備産業の拡散、社会基盤整備への支出を犠牲にした地雷および小型武器を含む破壊兵器の製造に関わっている一部多国籍企業および政府の果たしている直接的役割を、そのすべてが戦争人道法を犯すものであり、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容とその結果の永続化につながるものとして弾劾し、
32 大量破壊兵器、小型武器、対人地雷などを含む武器の使用により多くの人びとが経験している苦しみを認識し、
33 プエルトリコ・ビエケスの人びとが米国海軍の行動による人権侵害を受けていることを認め、このような軍事行動の終結、占領した土地のプエルトリコの人びとへの返還および犠牲者に対する賠償の支払いを、われわれは要求する。
34 キューバ人民の主権の侵害として、米国のキューバ封鎖が、こうした人びとに対する重大な人権侵害を生んでいることを非難し、
35 「アンデス・イニシアチブ」、「北米自由貿易協定」、および、対麻薬戦争の遂行という名目で大規模な国内強制移住を推進し、先住民族、アフリカ系の子孫および貧しい農村共同体に対する収奪ならびに侵略を加速させ、その結果自己決定権を含む人権の否定、環境悪化および地域の軍事化の増大をもたらす「プラン・コロンビア」などのような複数の国際協定や国際協力戦略を弾劾し、
36 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が執拗に存在することは、差別の複合性にとりくむ、差別の交差性の視点からの分析の必要性を確認するものであることを認め、
37 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は、人権の完全な享受に対する深刻な障害を生み、階層、皮膚の色、性、ジェンダー、年齢、障碍の有無、性的指向、ジェンダー・アイデンティティ、言語、国籍、エスニシティ、文化、宗教またはカースト、門地(世系)、職業、社会・経済的地位または出身、HIV/AIDS感染状態を含む健康状態、もしくはその他の地位に基づく差別にすでに直面している共同体に対する差別をさらに悪化させるものであることに留意し、
38 同性愛嫌悪(homophobia)は、特有な形態の差別であり、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人びとを憎悪犯罪あるいは人種主義的動機に基づく暴力を含むあらゆる形態の暴力に対して、さらに一層弱い立場に置く複合差別の一形態であることを認識し、
39 女性に対する複合差別は、女性がすべての生活領域において、その人権と基本的自由を完全に享受する潜在的可能性(potential)を制限し、また、家父長制的社会構造が女性、とくに障碍をもつ女性に対するあらゆる形態の差別を強化し、さらに、人種主義が女性のその他の形態の家父長制的従属を生むことを確認し、
40 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は、すべての人が可能な限り高いレベルの身体的・精神的健康基準を享受する権利に悪影響を及ぼすことを深く懸念し、
41 HIV/AIDSに感染あるいは感染しているとみなされている人びとが、受けることが可能な治療へのアクセスを否定する「世界貿易機関(WTO)」の規制などによって悪質化する深刻な形態の差別および搾取に苦しんでいることを認識し、
42 世界会議の準備過程およびフォローアップにおいて、また、世界会議のユース・サミットで提案された「行動計画」の採択にあたって、若者が演じた重要な役割を認識し、若者が、自らの自己決定権の否定につながり、したがってその完全で積極的な政治的、経済的、社会的参加を制限されるという人権の完全な実現を制限する複合差別の影響を受けていることを認知する。
43 人道に対する罪としての、奴隷貿易、奴隷制および植民地主義が、アパルトヘイトあるいは他の人種分離政策によって強化されたこと、また、これらの人道に対する罪を認め、賠償することを拒否しあるいは失敗したことが、人種主義、人種差別、黒人に対する敵意、外国人排斥および関連のある不寛容の強化において決定的な役割を果たしてきたことを認識し、その結果、アフリカ人およびその子孫は、今日自らがアフリカやアフリカ人が離散した国々で直面している今日の排除あるいは周縁化に顕著に見られ、また、これに対する重い負担をかつて払い、今なお払い続けている、根深い人種差別主義的で、偏見に満ちた慣行の第一の犠牲者である。
44 アジア諸国のエスニックおよび宗教的マイノリティを含む、アジア人およびその子孫が、奴隷制、植民地主義、アパルトヘイト、強制的な年季奉公制度、抑留そして排他的な移民法の遺産から、固有な形態の人種主義と外国人排斥を経験してきたことおよび経験し続けていることを認識し、
45 とりわけユダヤ人に対する暴力と憎悪犯罪につながる反ユダヤ主義の増加、および、犯罪となる憎悪行為を引き起こした犯人の起訴に関する多くの国における政府の消極性を懸念し、
46 反アラブ人種主義は、暴力や憎悪犯罪をこれまで生み出してきた反ユダヤ主義およびイスラム排斥のもうひとつの形態であることを懸念し、
47 憎悪犯罪、民族浄化、ジェノサイド、および、植民地主義、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に立ち向かう共同体の構成員、また、社会変革や自己決定の実現を主張する人びとに対する戦争を含む、その他の人道に対する罪が広く普及する性質をもつことを非難し、
48 多数派主義であるいくつかの国民国家機構が、自己決定権を含むマイノリティ共同体の権利を否定していることを原因として、ナショナル、エスニック、宗教的および言語的マイノリティを含む、極めて多くのマイノリティ共同体の構成員が、集団的もしくは個人的に、市民権の否定、政治参加からの排除、資源および尊厳ある生活水準へのアクセスの否定、政治的抑圧ならびに集団虐殺の慣行を含む、すべての形態の人種主義と制度化差別にさらされていることを確認し、
49 チェチェン人が、依然として、人権と国際人道基準の大規模な侵害に苦しんでいることを認識し、チェチェンにおける軍事作戦がチェチェン人に対する広範囲な憎悪キャンペーンを伴い、その結果、とくにコーカサス地方出身者が旅行や自らの地域外に居住する場合、彼ら/彼女らに対する大量迫害や差別が存在することを、われわれは強調する。
50 世界中のさまざまな国々に離散した領土を持たない民族であるロマ人が、文化的なアイデンティティの権利を否定され、自らの社会的起源およびアイデンティティに基づいて不利な立場に置かれ、差別や迫害を受け、汚名を着せられ、さらに、暴行を受けていることを認め、
51 トラベラーは、世界中で、ロマ人に匹敵するレベルの人種主義および抑圧を受け、とくに、自らの社会的、文化的、政治的および経済的権利を否定されていることを認識し、
52 カースト制度が、南アジアのダリット、日本の被差別部落民、ナイジェリアのオスおよびオル人、セネガルのグリオット人、その他のあからさまな人権および人間としての尊厳を侵害されている共同体、とくに、残忍な暴力にさらされやすいこれらの共同体の女性や子どもに関して、職業および門地(世系)に基づくこうした共同体に対する差別や隔離を可能にしていることを認識し、
53 障碍をもつ人びとがとくに直面している複合差別の交差性に効果的にとりくむ政策およびプログラムの欠如を非難し、
54 正規および非正規移住者、移住労働者とその家族の構成員、難民、難民申請者、無国籍者および国内避難民に対する人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は、特性において構造的かつ組織的であり、差別的な立法行為に反映されており、言語および慣習、宗教、文化、出自、国際的な権力関係における位置の違いに基づき、特定の集団に対する巧妙なものから公然としたものまでを含む敵対行為および暴力に明らかであることを、深い懸念をもって留意し、
55 外国人排斥は、外国人である、あるいは、そう思われるという理由、もしくは、民族的・宗教的・言語的あるいは文化的背景が違う人びとであるという理由ですでに差別されている個々人を、抑圧、拒絶、排除、非難する先入観および習慣、態度、行動を表現する特有な形の差別と不寛容であることを認識し、
56 政府が、移住者、移住労働者とその家族の構成員、難民、難民申請者、人身売買の犠牲者、無国籍者および国内避難民に対する増加しつつある[外国人]排斥行動にとくに直面している自らの国境内部に居住するすべての人びとの権利保障に失敗したことを深く懸念し、さらに、抑圧的で制限的な移民政策、これらの集団の犯罪者としての摘発、犯罪者呼ばわり、摘発の対象化、見せしめ行為をとくに懸念し、
57 難民、難民申請者、無国籍者および国内避難民の数が増加していること、そのなかでも、経済プロセスおよび開発プロジェクトによって追い立てられた人びとのほとんどが女性や子どもであり、その権利が、関連する国際的、地域的およびサブ・リージョナルな法的文書および国内法によって十分かつ適切には保障されていないこと、その結果として、彼ら/彼女らが、受け入れ地域や受け入れ国において、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に対してより弱い立場に置かれることを懸念をもって留意し、
58 奴隷制の現代的形態としての人身売買は、性的特性に対する男性優位主義の概念を基にしており、また、主に貧しく周縁化された共同体の女性や子どもに影響を与え、かつ、モーリタニア・スーダン・カメルーンおよびニジェールを含む世界中の複数の国にまたがって、あるいは個々の国内に生じる経済的不平等によって悪化することを認識し、
59 難民申請者や難民の投獄および法的権利とサービスの停止に対するのと同様に、女性、子ども、若者、障碍をもつ人びと、アフリカ人の子孫、先住民族、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー、貧困者、紛争状況あるいは紛争国に居住する人びと、刑事司法制度によって差別されている人びとを含む人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者の懸念とニーズに特別な配慮を行う必要を認識し、
60 奴隷制、集団虐殺、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者は、政府機関、企業組織およびその被雇用者に対して、効果的な民事上の救済を受け、刑事罰を求める権利をもつことを認識し、また、これらの犠牲者が、人種およびカースト、国籍、民族的背景、宗教的信念あるいは他の差異により、不釣り合いに標的にされ、起訴され、判決を下されてきたことを、われわれは認識する。
61 世界会議のスローガン「団結して人種主義と闘う:平等、正義そして尊厳」に鼓舞されながら、また、世界会議が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘う慣行の改善、行動指向の措置や戦略への国連の義務を支持することに希望を託し、
62 世界会議が、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者の癒し、和解、解放にとって重要な機会となること、および、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容から自由な世界の創造のために専心している市民社会により激励されることを確信し、
NGOフォーラム宣言
アフリカ人とその子孫
63 アフリカ人とその子孫は、そのすべてが人道に対する罪である奴隷貿易、奴隷制、征服、植民地化、アパルトヘイトによる共通の歴史、および、反黒人主義(anti-Black
racism)の共通の経験を共有している。アフリカ人の子孫は世界中に居住しているが、多くの場合、その人びとは改名させられ、抑圧され、周縁化されてきたことを、われわれは認識している。いかなる大陸においても、アフリカ人とその子孫は、人種主義、差別、人種優位主義の教義や慣行、憎悪による暴力、および、関連のある不寛容に苦しめられ続けている。アフリカ人とその子孫をひとつの世界共同体としてまとめあげているものは、まさに、複雑で交錯した歴史的かつ継続的な共通の根源、経験またそれらを克服するための共通の闘いである。
64 大西洋越え奴隷貿易とアフリカ人とその子孫の奴隷制は、人道に対する罪、また、人類の歴史における類例のない悲劇であったし、かつ、その根源と基礎が経済的・組織的・制度的であり、さらに規模において超国家的であったことを、われわれは確認する。
65 サハラ地域およびインド洋越え奴隷貿易と奴隷制の負の影響を、われわれはさらに認識する。
66 人道に対する罪を構成する大西洋越え奴隷貿易と奴隷制は、非人間的な移転と歴史的に最大規模の強制移住(一億人を超える)を強要し、何百万人ものアフリカ人を死に至らしめ、アフリカの諸文明を破壊し、アフリカ経済を衰退させ、今日まで続くアフリカの低開発と周縁化の基礎を築いたことを、われわれは認識する。アフリカがヨーロッパ列強によって解体、分割され、それによって、西洋の経済と産業の利益を目的にアフリカの天然資源を継続的に搾取するため、西洋の独占支配が築かれたことを、われわれは認める。
67 奴隷制を非難する国際合意にもかかわらず、今日までサハラ地域越え奴隷貿易の一部が衰えずに続いていること、および、アフリカ人とその子孫のこれらのあるいはその他の形態の非自発的な隷属がその大陸に対し実質的、継続的に経済的・政治的・文化的な被害をもたらしてきた一方、カメルーン・モーリタニア・ニジェール・スーダンでは強制労働や奴隷のためにアフリカ人の男女、子どもの人身売買が依然として継続していることを、われわれはまた認識する。この形態の搾取は、とりわけ、性的人身売買と性的搾取の今もなお犠牲者である女性のアフリカ人とその子孫を傷つけている。
68 大西洋越え奴隷貿易および奴隷制、植民地化を人道に対する罪として、われわれは非難する。西洋の経済制度は、アフリカ人とその子孫を犯罪的に搾取し、違法に輸送してきたアフリカの人びとを家畜として使用し、また、家畜のようにアフリカ人を飼育し続けた。奴隷制が終わった後のアフリカ人の子孫も、政治的・経済的・教育的・文化的および社会的権利に影響を与え、土地の略取や暴力を引き起こし、これらを正当化してきた、政府の公式で事実上の差別政策に耐え抜いてきた。アフリカ人の子孫は、自らの文化、アイデンティティ、言語の喪失に苦しめられ、また、否定的な固定観念、心理的な損傷、人種差別、経済的な不利益、これらの人びとの犯罪者扱いの継続的な犠牲者となってきた。こうした状況は、その身体および家庭的役割、生殖能力が抑圧の道具として使われ、経済的な富を生み出すために搾取され、また、その非人道的環境のもとでの強制労働および具体的で否定的な固定観念の使用すべてが社会、経済、文化および政治体制の底辺における女性のアフリカ人とその子孫の従属的な位置をこれまで維持し、また、維持するために使われ続けている、女性のアフリカ人とその子孫にとりわけ影響を与えてきた。
69 アフリカの発展は、人道に対する罪である奴隷貿易および奴隷制、植民地化さらにその他の形態の搾取によって作り出された地球的規模の権力の不均衡によって大きく阻害されてきたこと、そして、それは、アフリカの人的、物的資源の収奪、対外債務返済による資金の流出などを含む新植民地主義の経済政策や慣行によって維持されており、また、とりわけ拡大されていることを、われわれは認識する。これらのいまわしい罪の遺産は、アフリカで今日見られる戦争、難民の発生、その不安定な社会、経済状況に明らかにされている。
奴隷貿易と奴隷制
70 大西洋越え、サハラ地域越えおよびインド洋越え奴隷貿易と奴隷制は、人道に対する罪を構成し、経済的搾取、人種的優越主義および人種的憎悪に基づいており、アフリカ人とその子孫、先住民族およびその他の多くの人びとの存在を、人間以下もしくは家畜として分類すること、思いのままのレイプ、強制労働、焼印を押すこと、むち打ち、殺戮、手足の切断、現在に至るまで続いている構造的抑圧の原因となっている言語、文化、心理的および精神的幸福の破壊などによって、支配してきたことを認識すること。
賠償
71 奴隷保有国家、植民者、占領国は、自らが奴隷化し、植民地化し、また、その土地を占領されたこうした人びとの犠牲の上に、不正に経済的な豊かさを享受してきた。これらの国家は、自らの政治的、経済的および社会的支配をアフリカおよびアフリカ人、離散諸国におけるアフリカ人の搾取に大きく負っているので、これらの犠牲者に正当かつ公正な賠償を提供する義務を認めるべきである。
72 大西洋越え奴隷貿易、奴隷制、植民地主義は、その耐え難い野蛮さ、その規模の大きさ、期間の長さ、残忍な仕打ちを受け殺された人びとの数のゆえに、また、犠牲者の人間性の本質を否定したがゆえに、人道に対する罪であり、それゆえ、補償計画は、経済、教育、保健、土地所有および占有を含む関連するすべての領域、ならびに、アフリカ人とその子孫の人びとを残忍に扱った人種主義的偏見をもつ司法行政制度を念頭に置いた十分包括的なものでなければならない。
73 サハラ地域越えおよびインド洋越え奴隷貿易と奴隷制は、また、共同体を残忍に扱い、人びとからその尊厳を奪ったこと、ならびに、その理由のゆえにこれらの共同体が正義と救済を受けなければならないということで、人道に対する罪であったと認知され、認められなければならない。
74 奴隷貿易、奴隷制、植民地主義、外国による占領、アパルトヘイト、人種差別から、すべての公的生活において、人種主義と差別の犠牲者の完全かつ平等な参加に対する障壁となり続ける構造的人種主義の現代的諸形態まで断ち切れない鎖が存在している。
75 先住民族の奴隷化、その土地の収用、その資源の搾取は、認知され、かつ、回復されなければならず、人権の重大侵害の犠牲者に対する賠償についての歴史的先例が、先住民族に適用されるべきである。
76 世界各地に存在する宣戦布告のある、また、宣戦布告なしの戦争の犠牲者は、その人種、民族性、および、人種、民族性、ジェンダーと障碍の交差性のゆえに、人権を侵害されてきたので、賠償の必要が存在している。
反ユダヤ主義
77 反ユダヤ主義は、世界の多くの地域に依然として存在し、かつ、増加傾向にある、最も古く、最も悪質で広く行われている人種主義のひとつである。第二次世界大戦前および大戦中における他のマイノリティと同様、ホロコーストによってユダヤ人の人間性の剥奪、迫害および集団虐殺が行われたことを認める。ホロコーストの否認、修正、矮小化、軽視を支持する者たちの継続的活動、および、人種主義的レトリックまた暴力への喚起のインターネット上の流布に深い危機感をもつ。ユダヤ人は、依然として世界の多くの国々で、飽くなき偏見に苦しめられており、また、根深い反ユダヤ主義の犠牲者であることを、苦痛をもって注目する。世界的規模でのユダヤ人への嫌がらせや暴行の増加と同じく多くのユダヤ人墓地、シナゴーグ、ユダヤ人の共有の建物や他の所有物への最近の冒涜により苦しんでいる。これらの現象に対処し、それに対する関心を高めるために、今日、世界各地に広がる反ユダヤ主義の問題にとりくむさらに効果的な措置の必要性を確信する。
78 反ユダヤ主義は、依然として広がりつつある根深い形態の宗教差別であり、ユダヤ人はますます人種差別の対象とされているマイノリティである。ユダヤ人住民とその機関は、世界中の国々で脅迫と暴力のターゲットとされ続けており、また、あからさまな反ユダヤ主義的嫌がらせおよび破壊行為が増加していることを認識する。過激なグループは、警戒すべき速度で増殖しており、反ユダヤ主義的あるいは人種主義的な見方および憎悪宣伝を、ますますインターネット上で配信していることを警戒する。[イスラエル]選挙での極右政党の勝利と、連立政権内での活発な活動により、[無関係なユダヤ人が]トラブルに巻き込まれている。世界の多くの国々で、ユダヤ人は、怯えながら生活し、過激なグループにしばしば威嚇され、また、雇用、教育、メディア、社会福祉で差別されていることを、深く懸念する。
アラブと中東
79 セム系民族のひとつとしてアラブ人もまた、反アラブ差別およびイスラム教徒であるアラブ人にイスラム排斥といった形で現れる、別の形態の反ユダヤ主義に苦しんできた。
アジア人およびその子孫
80 根強い人種主義、外国人排斥に直面し、政治的、経済的、社会的機会へのアクセスを欠いているアジア人およびその子孫は、市民権と自由を否定され、また、とくに暴力的憎悪犯罪、人種的偏見、差別的雇用、不公正な移民政策と慣習の犠牲者となっている。人種、民族、宗教、文化的要因が複雑にからみあって構成された独特のアイデンティティをもつシーク教徒などの社会では、彼ら/彼女らが伝統的な人種や民族の概念に当てはまらないという事実によって制度的差別に直面する場合がある。
81 アジア人およびその子孫が、その居住する国々に対して行った貢献にもかかわらず、また、これらの国々での彼ら/彼女らの長い居住の歴史にもかかわらず、学校教科書やメディアが紹介する歴史において、彼ら/彼女らの役割は引き続き事実を歪曲されたり、触れないままにされており、かつ、同化できない外国人、危険人物、スパイあるいはテロリストであると見られていることを、われわれは懸念をもって留意する。
82 世界各地に離散したアジア人の子孫は、社会的、経済的問題および国際紛争のスケープゴートとして利用され、しばしば犯罪者扱いされ、また、公然かつ制度的に差別的である法と慣行にさらされていることを、われわれは懸念する。
83 女性のアジア人およびその子孫は、とくに、グローバリゼーションおよび性差別主義や人種主義、貧困の交差性の負の効果の多くに苦しめられていることを、われわれは懸念をもって留意する。たとえば、アジア人女性は、伝統的で歴史的な拒絶の態度ばかりでなく、メディアにおいても、従順でエキゾチックな性的対象としてはっきりと描写され、その結果、売春婦として、通信販売で買う花嫁、家政婦、低賃金労働者あるいは搾取工場の労働者、そして、債務に縛られた無給労働者として、売春目的の人身売買の対象という弱い立場に置かれている。
カースト制度および職業と門地(世系)に基づく差別
84 カースト差別や不可触制を含む、職業および門地(世系)に基づく差別は歴史的に確立された、宗教や文化により正当化されている、誤ったイデオロギー的構成物であり、世代を超えて引き継がれる性質のものであり、アジア・太平洋、アフリカ地域において三億人以上の人びとが宗教の所属に関係なく、個人的、社会的、構造的レベルでその被害を被っている。
85 カースト制度に根付いている不可触制の慣習は、南アジアに存在する二億六千万人ものダリットに「汚れ、不浄」という烙印を焼き付け、礼拝所へ入ることや宗教的祭事への参加を拒否され、また便所掃除や、動物の死体の処理・皮はぎ、墓穴掘り・掃除を含む品位を汚すとされる単純労働の職業に限定され、さらにダリットの女性や少女は寺院での売春(Devadasi)という伝統的な制度を通して売春行為を強制される。
86 差別、排除、制限をもたらすカーストの慣習に基づく「隠された人種隔離政策」構造はダリットの経済的、社会的、政治的、文化的、宗教的権利の享有を否定し、ダリットをあらゆる形態の暴力にさらし、居住地や共同墓地、(「二カップ制」に見られる)喫茶店における隔離、共同の飲み水・レストラン・礼拝所へのアクセスの拒否、結婚の制限やその他の陰湿な取り扱いに現れる。これらはすべて、平等な人間としてのダリットの発展を妨げる。
87 何世紀にもわたるダリットに対するカースト差別と不可触制は双方相まって体系的な世代を超えたかつ文化的ダリットサイド(ダリッド虐殺)に相当する。それは、彼ら/彼女らとその集団のアイデンティティや尊厳および自尊心を、文化的な方法と慣行によって何世代にもわたり大規模に破壊するものである。
88 ダリットやその集団が自らの権利を主張するいかなる行動やその兆候でさえも、家屋・財産・作物の焼き討ちや破壊、社会的ボイコット、ダリット女性に対するレイプや集団レイプ、上位カーストの個人や集団、警察や官僚による殺人などの過激な暴力的手段で応酬される。このような場合に国家はしばしば犯人らを罪に問わず、黙認している。
89 日本の部落民に対する職業と門地(世系)に基づく差別は四〇〇年以上にわたり続いており、今なお三〇〇万人の人びとが結婚や就職や教育の分野で差別を受けている。またとくにインターネット上での差別発言や差別扇動などの新しい形態の差別も生まれてきている。
90 法体系とその実施機関が彼ら/彼女らを保護しえず、それゆえ差別の永久的継続に加担していること、また国家自身もしばしば脱法行為を行うことが、カースト差別と不可触制を含めた職業と門地(世系)に基づく差別の被害者をより弱い立場に置いている。
刑事司法および裁判制度
91 各国政府が、人種差別撤廃条約に従い、人種主義に関する国際文書を国内法・条例・行政規則に統合すること、さらに、政策・手続き・慣行および公的・私的な刑事司法施設の文化の中に存在する国家および地方レベルにおける制度化された人種主義の存在を確認し、これを撤廃することを通し、人種、宗教、国籍、言語、カースト、民族、少数者や難民としての地位に基づいて差別する目的あるいは効果を有する法律、政策、慣行を廃止し、ならびに、修正する義務があることを、われわれは認識する。
92 人種差別撤廃委員会(CERD)が、「欧州人権憲章」第三条の目的の範囲内における「欧州人権裁判所」の解釈に従い、人種差別を「人の品位を損なう待遇」のひとつと解釈する別個の「一般的勧告(General
Recommendation)」の公布を考慮すべきであるとする、CERDが公布した拘束力を有する「一般的勧告」の価値と重要性を、われわれは認識する。
93 刑事司法制度によって影響を受けている女性、若者、アフリカ人の子孫の人びと、先住民族、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、障碍をもつ人びと、貧困者、紛争国あるいは紛争状況に居住する人びとの関心やニーズ、ならびに、難民申請者と難民に対する拘禁および法的権利と法的サービスの停止に、特別な配慮が必要であることを、われわれは認識する。
94 自らの人種、国籍、民族的背景、宗教的信念あるいはその他の違いのために、さまざまに異なる影響を受け、[刑事犯として]標的にされ、起訴され、刑罰を科せられる割合が不釣り合いに高い人種主義およびその他の形態の差別の犠牲者に対し、政府機関や公務員に対する賠償を含む、有効な救済措置をとる義務を、われわれは認識する。
植民地主義と外国による占領
95 植民地主義は、国家のもつ国民主権の最も重大な侵害のひとつであり、国際法違反であると断言し、ならびに、ほとんどすべての植民地領土において、重大な人道に対する罪が植民地宗主国によって犯された。
96 外国による占領は、占領された人びとが収奪、強制移住、および自らの自己決定権の否定を含む人権と自由の広範で体系的かつ大規模な侵害にさらされ、占領された領土の女性がレイプ、性的奴隷制、強制妊娠および他の形態の女性に対する暴力にさらされる環境を生み出している。
97 領土の統一の否定を伴う異民族支配と従属を押し付ける外国による占領は、(一九六〇年国連総会の「植民地独立付与宣言」の原則に従えば)植民地主義に等しく、占領下において人民の自己決定、独立および自由の基本的諸権利を否定することを認めること。それは、さらに、占領された人びとが人権と自由の広範で体系的かつ大規模な侵害にさらされる環境を生み出している。われわれは、パレスチナ、西スマトラのアチェ、ブーゲンビル、ナガランド、アッサム、メガラヤ、マニプール、トリプラ、北キプロスおよびクルド人民を含むその他の国家、さらに、インド北東部、スリランカ北東部、チベット、カシミール、ブータン、ミンダナオにおける先住民、加えて、プエルトリコのようなカリブの非独立国家の人びとに対し、自己決定を求める闘争に連帯を表明し、また、世界の他の地域で外国による占領のもとに生活している他の人びとの状況を認める。
98 パレスチナの人びとは、自らの自己決定に関する基本的な人権を侵害する植民地主義的、差別的な軍事占領に現在耐え抜いている人びとであり、その方法には、イスラエル市民の占領領土への不法な移住、不法なイスラエルの半永久的な社会基盤の整備、また、イスラエル版のアパルトヘイトと他の人道に対する罪に等しい他の人種主義的な方法が含まれることを、さらに認めること。パレスチナの人びとは、自ら自己決定に関する基本的な人権が達成され、そのアパルトヘイトを含むイスラエルの人種主義体制が終焉するまで、国際法のもとで、国際法に規定されたあるゆる手段によって、そのような占領に抵抗する明確な権利を有していることをそれゆえに認める。
99 一九四九年の第四ジュネーブ条約の重大な違反(すなわち戦争犯罪)、ジェノサイドの行為および民族浄化の慣行を含むイスラエルによる現在進行中の体系的人権侵害の基本的な「原因」のひとつは、イスラエル版のアパルトヘイトである人種主義体制である。このイスラエルの人種主義体制の一側面は、パレスチナ難民に対し国際法によって保障されている生家に帰還する権利の行使を拒否し続けてきたことである。帰還の権利に関していえば、パレスチナ難民は、また、国際法のもとで、自らの財産の返還および完全な補償を受ける明確な権利をもっている。さらに、国際法は、帰還しないことを選択したこれらのパレスチナ難民が、彼ら/彼女らの失ったものすべてに対し、完全な補償を受ける権利があることを規定している。イスラエルがパレスチナ難民に帰還の権利および他の重大な人権を与えることを拒否し、人道法に違反していることは、この地域全体を不安定にし、世界平和と安全保障に大きな影響を与えてきた。
100 トルコ、イラク、イランおよびシリアを含むいくつかの国々に四散し、自己決定に関する正統な国民としての権利の行使を不当にも不可能にされている三〇〇〇万人のクルド人の状況に、われわれは恐れを表明する。クルド人に対するジェノサイド政策や民族浄化の慣行を、われわれは遺憾に思う。土地の没収、国外追放と住民移転、文化の破壊、市民的ならびに文化的・政治的な権利の否定などクルド人に対するあらゆる形態の差別を、われわれは強く非難する。
101 われわれは、自国の五〇年間の被占領下で苦しみ、中国による占領のもとで構造化された形態の人種差別に苦しみ続けている六〇〇万人に及ぶチベットの人びとの状況を認め、チベット高原の壊れやすい生態系に回復不可能なダメージを与えているチベットの豊富な鉱物資源に対する乱開発、調査および精錬を続けている中国政府の行為を非難する。
102 チベットへの何百万もの中国人入植者の人口移動という政府政策の実施、および、チベット人に対する差別の強化に貢献するチベット女性への強制的な産児制限慣行の実施を、われわれは深い懸念をもって留意する。
103 学校制度および他の国家機関を通した、中国政府の単一文化的、覇権主義的慣行は、強制統合・同化を引き起こし、チベット人民からその人権を剥奪してきた。
障碍をもつ人びと
104 障碍をもつ人びとは、人種、民族的起源、ジェンダー、年齢およびその他の理由に基づいた複合的もしくは交差的な差別によって、弱い立場に置かれあるいは影響されており、また、政府や社会による無視の被害者でもある。
105 増加しつつある多くの障碍をもつ人びとは、とくに紛争状況にある場合および宗教的迫害あるいはその他の形態の不寛容の被害者となった場合には、同時に人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者でもある。
106 障碍をもつ人びとは、とりわけ、保健、教育、雇用、スポーツ、宿泊へのアクセス、ならびに、公共交通機関や公共の建物へのアクセス、さらに、手話やその他の形態のコミュニケーションが利用できない場合には言語へのアクセス、加えて、とくにリプロダクティブ・ライツに関しては保健教育へのアクセスにおいて、深刻な差別を経験している。
107 資源の配分、とりわけ基本的な必需品および補助装具、その他の基本技術またコミュニケーション装置を配分する場合に、障碍をもつことを考慮から除外し無視することは、障碍をもつ人びとに対するもうひとつの重大な形態の差別である。
教育
108 教育は、偏見と闘いこれを防止し、また個人の人権、とりわけ先住民族、ダリットおよびマイノリティそして社会的弱者集団などの人権を保護するために、さらに、多くの締約国がいまだに人種差別撤廃条約の第七条を実施していないことを想起すると、決定的に重要である。
109 教育が、人権と自由の理解を図る基本的機能を果たしていることに留意しながら、いくつかの教育システムが人種主義者、性差別論者、カースト差別論者、白人至上主義者などを増長させる手段として使われ、そうしたなかで、アフリカ人、先住民族、アジア人、ダリット、および、それらの子孫、また、他のマイノリティ、周縁化された共同体の構成員などの過去や現況に関する事実の削除を通して、軽蔑的なイメージを伝える教科書、文書、その他の教材が使用されていることを、われわれは遺憾に思う。
110 学校やその他の学習施設が未来の世代の形成に決定的な役割を担っていることを考慮し、われわれは、挑発的な人種主義者や性差別論者の表現あるいは軽蔑的なイメージ作りを含む人種主義と闘うための学校やその他の学習施設における現在のとりくみが嘆かわしいほど不十分であることを、われわれは認める。
111 差別的な内容を含むことなく、平等や尊厳、人権、基本的自由という原則を教える学校カリキュラムのもつ価値を認識し、ならびに、科学や技術に基づいたアプローチとその土地に固有の知識や哲学に基づいたアプローチとの間でバランスのとれた総合的なアプローチを採用しながら、国際的基準に合致した学校カリキュラムが欠落していることを、われわれはまた懸念をもって留意する。
112 アフリカ人、先住民族、アジア人、および、その子孫、他のマイノリティならびに周縁化された共同体の構成員、とりわけ、不利で弱い立場に置かれた女性や少女たちが、高等教育機関で学ぼうとした場合、これらの人びとが直面する歴史的、財政的および他の制度的な障害を、われわれは認識する。
エスニックおよびナショナル・マイノリティと集団
113 マイノリティとみなされることを根拠としたものを含む、多くのナショナル、エスニック、宗教的、文化的、言語的集団の構成員は、集団的にあるいは個人的に、市民権の否定、政治的参加、国家の社会的・経済的資源からの排除、ならびに、ジェノサイド的慣行を含むすべての形態の人種主義にさらされている。国内パスポートおよび居住許可証の制度は、多くの地域で、とりわけ移行期の国家において、差別およびエスニック・マイノリティと集団の排除につながる政策を体現するものであることを、われわれは認める。国民国家あるいはエスニック国家の構造を強化する方法としては、多数決原理がこうした排除における主要な要因となる。
114 人間の尊厳と自由の原則に基づく権利の享受は、とりわけ植民地化と土地剥奪の過程を通じ、自らの故国(homeland)においてナショナル・マイノリティとなった人びとにとっては、歴史的な挑戦であり続けた。これらの過程は、マイノリティと集団としての主権および自己決定の権利の否定をもたらし、女性が、男性と同じく、その国籍をその子どもに伝える権利に制限を設けている。
115 マイノリティと集団が、とくに、自らの歴史、民族の記憶、歴史的な土地請求、言語の権利、文化的権利、宗教的権利ならびに政治的権力を共有する権利の承認を含む自らの自己決定の権利を確認する権利を有することを、われわれは主張する。
116 暫定的措置の使用を通じたアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)は、歴史的な不正義を回復する方法であり、しばしばマイノリティ共同体の運動を前進させるために使われてきた。しかしながら残念なことに、アファーマティブ・アクションは、マレーシアやスリランカのようなところでは、多数者の民族的国家主義(ethno-nationalism)を促進するために国家によって使用されることもある。
環境レイシズム
117 環境レイシズムは人権侵害であり、人種、階層、皮膚の色、ジェンダー、カースト、民族あるいは国民的出自に基づいた、環境、健康、生物多様性、地域経済、生活の質および共同体、労働者、集団、個人の安全を、意図の有無にかかわらず、不釣り合いに標的とし、損なう、政府および民間セクターの政策、慣行、行動あるいは無行為によって引き起こされる差別の一形態である。
118 あらゆる形態の権力の乱用、貪欲、意思決定からの環境レイシズムの被害者の排除、不平等な執行、存在しないか効果のない環境法と条例、メディアの情報操作、人の健康を害する環境を永続化し隠蔽する言語の壁、人びとの強制移住、天然資源の枯渇、および、生物多様性の低下を、われわれは非難する。それらすべては、先住民族、アフリカ人とその子孫、アジア人とその子孫、中東の人民、太平洋諸島民、ラテン系の人びと、カリブ海地域の人民、エスニックおよびナショナル・マイノリティと集団および持続不可能な開発や軍事化の慣行で最も弱い立場に置かれた他の社会集団、とくに子ども、女性、高齢者、避難民、免疫が抑制された人びと、ならびに、低所得者と無収入者を標的にした環境レイシズムの現れである。
ジェンダー
119 交差性(intersectional)というアプローチは、男性であれ、女性であれ、すべての人が複合的アイデンティティの枠組みで生きていることを認める。この枠組みには人種、階層、民族性、宗教、性的指向、ジェンダー・アイデンティティ、年齢、障碍、市民権、国籍、地政的文脈、HIV/AIDS感染の有無を含む健康状態やその他の地位にあるなどの要因が関係するが、これらはすべて、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を受けるうえでの決定要素である。交差性というアプローチは、複合的アイデンティティの結果、差別がいくつも交差するそのあり様に焦点をあてている。
グローバル化
120 構造調整政策、民営化、貿易自由化、不平等な貿易条件を含むグローバル化は、新しく生み出されたものであり、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者であるすべての個人、共同体、とりわけ女性の排除に関してすでに存在する現行の状況を悪化させている。
121 強い権力をもつ西洋諸国や多国籍企業の手に権力を集中させ、また、すべての国や地域における社会生活のすべての面に人種主義的かつ不公正に強い影響を与えているグローバル化の過程を、われわれは非難する。それは、国家内および国家間における経済的不平等を拡大し、さらに多くの民族を貧困化し、周縁化しながら、労働力送り出し国における安価で非正規の労働力に対する需要へとこれらの人びとを追い込んでいる。構造調整政策のようなグローバル化の手段は、貧困、飢餓、保健・教育制度の崩壊をもたらしている。グローバル化は、経済および社会の解体、失業、周縁化という状況へと導いている。それは、とりわけ、貧困の女性化(feminisation)と人種化(racialisation)の双方を意味している。この文脈で、補償措置が提供されなければならない。
122 グローバル化に伴う社会的排除の過程は、時に組織犯罪と民族紛争の増加を生み出しながら、地域共同体あるいは国の解体をもたらす分極化(polarisation)の状態を生じさせる。
123 グローバル化は、植民地支配および帝国主義支配の継続である。それは、本質的に人種主義的、反民主主義的であり、また、市場、貿易、多国籍企業、情報とコミュニケーション技術を通して不公平に世界を統合する法律と政策のネットワークを創り出している。
124 富とグローバル化の権力は、地球的規模の資本家階級に集中しており、また、多くの形態の暴力、国や都市の軍事化や核武装化に導きながら、環境レイシズムを含む人種主義およびカースト主義に本質的に関連している。国連自体が、グローバル化の過程を支配しているものと同じ権力によって形成されている。
125 グローバル化過程の一部である、新しい商品、情報とコミュニケーション技術は、資本や商品のための自由市場を創出する一方で労働運動を制限しながら、「持てる者」と「持たざる者」の間の格差を増大させている。
憎悪犯罪
126 周縁化されたあるいはマイノリティ共同体の構成員は、礼拝所や宗教的シンボルの焼き討ち、性暴力、礼拝所や墓地その他の聖地の冒涜を含む憎悪犯罪の標的とされる。こうした共同体のリーダーへの暴力は、とくに憂慮すべきものである。
127 憎悪犯罪は、個人や共同体に烙印を押し、人びとから個人の安全を奪い、恐怖を煽り、生活様式を束縛し、社会のあらゆる面への参加を制限し、精神的かつ身体的に傷を負わせ、正義と自己決定への要求を抑圧し沈黙させ、平和と民主主義を切り崩し、人種主義、人種差別、外国人排斥およびその他の関連のある不寛容を強化しながら、個人をそのアイデンティティを理由に標的にし、生活や共同体を大規模に破壊する。女性は、とくに性暴力などいくつかの形態の憎悪犯罪においてとりわけ弱い立場に置かれている。
128 周縁化されたあるいはマイノリティ共同体の多くの人民や構成員は、クルド人、チェチェン人、チベット人、アチェ人および西パプア人、ならびに先住民族がそうであるように、自らの自己決定の権利を行使しようとすれば、憎悪犯罪もしくは民族浄化、あるいはその双方にさらされる。
129 憎悪犯罪および民族浄化、ジェノサイドには、暴力、殺人、レイプおよびその他性暴力、人種主義宣伝、暴力の扇動、人種主義的暴動、虐殺、社会変革や自己決定を主張する共同体の構成員の失踪などが含まれ、また、それらは、組織化された人種的憎悪集団、軍隊、警察、宗教団体、政府、個人により永続化される。
130 イデオロギーに基づくジェノサイドが、一九六五年〜一九六六年にインドネシアの人びとに対して行われ、これにより、共産主義者と疑われた一〇〇万人以上の人びとが死亡し、失踪し、拷問を受けた。この人道に対する罪の実行犯および首謀者はこれまで誰も裁かれていない。その結果、インドネシアでは、左翼的イデオロギーを表明する人びとを排斥し抑圧する風潮が今日まで続いている。
健康とHIV/AIDS
131 不利な立場に置かれている人種的、民族的、文化的に弱い立場の集団、先住民族、移住者、カーストに基づく差別を受けている人びと、難民申請者、難民、国内避難民、とくに女性、若者、子ども、障碍をもつ人びとは、複合的な形態の差別に直面しており、結果として、健康状態が損なわれ、手頃な料金の良質なヘルスケアへのアクセスが限られ、保健サービスの質は低い。とりわけ、このことがこれらの集団の女性間に存在する高い妊産婦死亡率の一因となっている。
132 国際的な人種主義によって悪化し、貧困と女性差別、貧弱な保健サービスによって強化されるAIDSという世界的な流行病に積極的に対応することに政府、NGOおよび民間部門が失敗したことを、われわれは非難する。
133 人種に関連したジェンダー、性的指向、ジェンダー・アイデンティティおよび障碍の有無は、しばしば、性的およびリプロダクティブ保健サービスへのアクセスを含む、良質で、総合的、適切で文化的なヘルスケアへのアクセスを拒否する根拠である。
134 不利な立場に置かれた共同体を標的にすることに関し、たばこ、アルコール、麻薬、銃産業の非良心的な慣行、とりわけ途上国における喫煙の促進や奨励を、われわれは非難する。
135 政府、NGO、民間部門および国際社会は、ヘルスケアの提供者あるいは従事者が文化的に適切なケアを供給できるよう訓練されていること、ならびに、アフリカ人およびその子孫の共同体、先住民族の共同体、その他の弱い立場に置かれた集団の構成員がヘルスケアの提供者として十分に務められることを確保すべきである。文化的に適切なケアを保証するために、政府は、伝統的な治療を行う者と協力し、伝統的な保健慣行を許可し、促進しなければならない。
136 政府および国際社会は、ヘルスケアシステムに適切な資金を供給し、持続可能で効果的に管理を行うこと、ならびに、ヘルスケアのための財源は、国内政府からのみならず、正当性をもたない債務の帳消しおよび軍事費の削減を含め国際社会から拠出されることを保証すべきである。
137 身体的および精神的な健康状態の不均衡に関する日常的で体系的な調査の欠如、ならびに、弱い立場に置かれた集団のヘルスケアおよび健康状態に関する人種、ジェンダーと社会的・経済的要因また良質なヘルスケアへのアクセスに関する不適切なデータ収集が、人種主義、社会的排除およびその他の形態の健康に関する差別の経験にとりくむ際の困難をより難しいものとしている。
138 特定の国際製薬会社の姿勢および慣行ならびに国際社会に責任を認められる無関心さが、この大量虐殺を招くウィルスの一層の流行を引き起こしており、とりわけアフリカ大陸および他の途上地域の国々では、貧困および不平等な状態が、その悪化の原因となっていることを遺憾に思う。
139 女性は性暴力の蔓延の結果HIVに感染するリスクがより大きい。HIV/AIDSとの闘いに必要とされるものは、国家が女性および女児に対する法的および慣行上の差別を撤廃し、女性に対する暴力および差別行為を防止し、調査し、処罰することである。
先住民族
140 先住民族は、極地地域、アフリカ、ロシア、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアおよび太平洋その他を含む世界のあらゆる地域に生活しており、そのいたるところで重大な差別と周縁化に苦しんでいる。先住民族が劣っているとの信念が、自らに影響する問題に関する協議の欠如に加えて、多くの国家の法的、経済的および社会的組織の中に深く埋め込まれており、この結果、先住民族の領土と資源ならびに政治的、宗教的および社会的制度の剥奪あるいは破壊を生み出している。
141 先住民族は、その領土と資源の喪失、文化の破壊および人びとに向けられた暴力に苦しみ続けている。先住民族の女性と子どもは、とりわけ、複合的形態の差別を耐え抜いている。この収奪、暴力および差別は、「世界人権宣言」に違反した、その人びとの人権の紛れもない侵害を構成している。
142 先住民族は、国際法上の完全な意味における人民である。先住民族は、自己決定の権利をもち、これによりその経済的、社会的、政治的および文化的発展を自由に決定し、ならびに、その伝統的で先祖伝来の土地および領土のすべてに対して固有の所有権をもつ。先住民族の知識および文化は、その土地、水系、資源および領土に対するこれら人民のユニークな精神的および物理的な関係から切り離すことができない。先住民族の自己決定の否定あるいは制限は、人種主義的であり、先住民族の苦しみの根本原因となっている。過去および現代的な形態の植民地主義、侵略、アパルトヘイト、エスノサイドおよびジェノサイドにおける構造的人種主義は、先住民族の自己決定に関する基本的権利を否定してきたし、現在も否定し続けている。
143 先住民族に対する人種主義は、それを永続化しかつ悪化させる差別的な法と政策に現れる。これらの法および政策には以下のものが含まれる。すなわち、国際法のもとでの先住民族の自己決定権の否定、先住民族の土地および領土の軍事化、適正な法手続きあるいは十分な補償なしで先住民族の領土を収奪することを認める教義、先住民族の土地権の一方的な消滅、[国会が先住民族をコントロールするという]絶対的な権限という教義、国家の民事および刑事司法制度における先住民族差別、先住民族の司法制度の不承認、その文化的・精神的・身体的統合に影響を及ぼす問題に関する意思決定手続きにおける先住民族の対等な参加の欠如、先住民族のための法的資源をもたない国家と先住民族との間で結ばれた条約・協定・法律の不遵守、先住民族の囚人に対する宗教的自由の保護の否定、先住民族の過剰な拘禁、先住民族の言語を否定し、禁止しまたは破壊する政策、ならびに、先住民族がその土地の地下にある資源を所有していないとする前提。
144 先住民族に対する人種主義は、また、以下のような形態で現れる。すなわち、強制的かつ隠然とした移住、強制同化、先住民族の子どもの共同体からの強制隔離、先住民族の同意なくまたその共同体に利益を還元することのない先住民族の資源を搾取する経済政策、戦争時の武器として行われる先住民族の女性に対する性的暴力、先住民族の女性と女児に対する性と生殖に関わる情報の閉鎖と誤情報の伝達および危険な避妊薬の押し付けと強制不妊、遺伝子資源を含む先住民族の知的および文化的財産権の剥奪、ならびに、その同意なしに先住民族および個人のイメージの使用。
145 先住民族の精神的な儀礼に対する宗教的不寛容およびその聖地と聖体を冒涜する行為は、侵略と植民地主義の開始以降、先住民族を従属させる基本的な手段であり続けており、これを終わらせるため国家が行動を起こさなければならない根強い悪弊である。
146 人種差別の歴史的な形態のひとつである環境レイシズムは、以下のような持続不可能な施策の実施により先住民族の土地、水系および環境の荒廃をもたらしてきたし、かつ現在もこれを続けている。すなわち、鉱山開発、生物資源の海賊行為(biopiracy)、森林破壊、汚染廃棄物の投棄、石油・ガスの掘削、ならびに、先住民族の儀礼、精神的な信念、伝統的な医薬品と生活様式、先住民族の土地の生物多様性、先住民族の経済活動および生存の手段および健康への権利を尊重しないその他土地利用慣行。
労働
147 多くの移民労働者、移住労働者、先住民族の労働者ならびに世襲の労働者の第二世代が経験している人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は、職場やこれらの人びとが生活している共同体で行われている複合的な形態の差別を通じて現れている。これらは、移住と労働に関する制限的で排他的な法と政策、労働組合権の否定、搾取的な労働条件、低賃金や賃金不払い、労働法による保護に対する職種に基づく否定や制限、保健や住居および社会保障といった公共サービスへのアクセスの欠如を含んでいる。皮膚の色、人種、国籍、ジェンダー、年齢、カースト、階層および民族に基づいた巧妙であからさまな敵対行為や暴力もこれに含まれる。労働法による完全な保護が、職業に基づく差別なくすべての労働者にもたらされなくてはならない。この差別は、実際には構造的なものであり、国際基準に違反する。在留資格をもたない移住労働者は、人種主義と外国人排斥という二重の危険にさらされている。こうした人びとの法的地位の欠如が、法や社会サービスへのアクセスを含む人権を否定するための弁解のひとつとしてあまりにも頻繁に利用されている。
148 グローバル化の負の効果は、労働者に対して具体的な影響を与える。グローバル化は、とりわけ性産業の労働者として売買されたり、あるいは、低賃金で搾取工場の労働者として雇用されている女性に否定的に作用する。
149 植民地主義、奴隷制およびその他の形態の隷属は、人種主義、人種差別および外国人排斥の主要な根源であり、また、奴隷制を非合法とする国際的合意にもかかわらず、奴隷制と強制労働のためにアフリカの子どもの人身売買が依然として続けられている。加えてアフリカ人とその子孫、アジア人とその子孫、そしてその他の周縁化された集団の奴隷化やその他の形態の隷属がこれらの人びとへの重大かつ永続的な経済的、政治的および文化的損害を引き起こしてきた。この形態の搾取は、いまだに性的人身売買および性的搾取、貧困および社会的排除の犠牲者である、とりわけ女性のアフリカ人とその子孫に被害を与えている。
150 世界貿易機関および国際金融機関、とりわけ国際通貨基金(IMF)と世界銀行の政策あるいはプログラムは、しばしば人種主義およびその他の差別的慣行を悪化させる。
151 労働者の民主的かつ代表的組織としての労働組合の貴重な役割、ならびに、労働市場と社会一般における人種主義および差別との闘いに関する労働組合の独自な機能を認め、人種主義に影響を受けている人びとが差別撤廃のための政策あるいはプログラムを発展させ、実施し、監視するにあたって中心的役割を担っていることを、われわれは認める。
メディアおよびコミュニケーション
152 人権と自由な民主主義の基本原則として、表現の自由と報道の自由に対する基本的権利があることを、われわれは確認する。しかしながら、人種に対する人びとの態度や信念の形成にメディアが重要な役割を果たしていること、ならびに、メディアの影響力がグローバル化およびメディア企業の所有の集中に伴って増大していることを、われわれは認める。
153 情報とコミュニケーション技術は、人種主義、人種差別、外国人排斥、カーストに基づく差別および関連のある不寛容と闘う積極的な手段として使うことができること、ならびに、寛容を促進し、知る機会、エンパワーメントの確保や情報へのアクセスを援助する方法を通じて、多様性の尊重を可能にすることを、われわれは信じる。
154 情報とコミュニケーション技術は、単に先進国がこれらの技術へよりアクセスしやすいというだけでなく、先進国が技術を作り出した側であることから発展途上国を消費者にするという意味で、地球的規模の不平等の一要因である。基礎技術発達のための訓練の機会と技術資源へのアクセスの双方においてより大きな平等と均衡をもたらす平等な発展を、われわれは求める。
移住者および移住労働者
155 地球的規模での経済の再構築は、資本の国際的な移動を推し進めていく一方で、労働の移動を制限し、管理しようとしており、そのために地域経済はますます不均衡化し、移住労働者の商品化・非正規化が進み、とくに、搾取されやすく、国際労働基準の根底を崩しかねない「不安定な」労働条件に労働者を追いやっている。
156 多くの国において移住を管理し、民族間の関係を規制することを目的とした公的プログラムが、新たな、かつ隠然とした制度的人種主義をもたらしていることに、われわれは懸念を表明する。在留資格の有無にかかわらず、移住者および移住労働者は、さまざまな点から自らが所属する社会ならびに居住・就労している社会の福祉や発展に貢献しており、さらに、これらの国々において永住権、市民権へのアクセス、および、出入国に関するすべての領域における独立した資格の認知を含め、とくに女性と子どもに対し、平等な権利と機会へのアクセスが認められなければならない。
157 移住者、移住労働者ならびにその家族の構成員は、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に対して弱い立場に置かれている。移住者と移住労働者の技能資格、技術、専門性が、正当に評価される必要があり、公的および民間部門における完全かつ公正な雇用へのアクセスが確保される必要がある。
158 障碍をもつ人びとも含む女性移住者および移住労働者は、女性労働を過小評価し、女性を家事労働やエンターテインメントといった雇用分野に制限しながら、性差別主義的および家父長制的イデオロギーが現在の国際労働分業を規定し、また、労働力の女性化を進めるありようのゆえに、とりわけあらゆる形態の暴力や虐待に対し弱い立場に置かれる。
159 移民および難民の女性と若者、女児、子どもが、家庭内労働、屋外労働、家事労働、搾取工場および性産業などの非正規な雇用分野の労働者の中で往々にして高い割合を占めていることを認めること。言語の障壁、市民権、人種差別およびエスニック・マイノリティに所属することなどが、こういった分野で働く女性、女児、子どもが弱い立場に置かれる一因となっている。政府は、その人権を優先してこれらの女性、女児、子どもを保護するための立法措置をとるべきであり、ならびに、共同体組織・民族団体・労働組合と共働して移住労働者および難民が搾取されないこと、また、自らの人権をどう守るかを知らせることを確保するため啓発プログラムを策定すべきである。政府は、さらに、女性が多数を占める雇用分野において、労働権の保護が完全に保証されるよう労働法を改正すべきである。
パレスチナ人とパレスチナ
160 イスラエルによる「被占領パレスチナ領」(エルサレムを含むヨルダン川西岸およびガザ地区)の継続的な植民地主義的な軍事占領に恐れを表明し、われわれは、イスラエルによる以下の人種主義犯罪の組織的な実行を即刻に停止するよう宣言し、これを要求する。すなわち、戦争犯罪、(国際刑事裁判所規程の定義による)軍事攻撃による根絶を含むジェノサイドおよび民族浄化、土地を離れることが唯一のオプションとなるよう住民の生活を困難にするあらゆる制限や措置の押し付け、およびパレスチナ人に対する国家テロリズム。これらのすべての手段が、先住のパレスチナ住民を追い出しながら、多数派のユダヤ人による排他的なユダヤ民族国家の継続およびさらに土地を得るための国境の拡張を確保する目的をもつことを認識する。
161 領土の保全を否定するこの異民族による支配と従属は、パレスチナ人の自己決定、独立、自由に関する基本的権利を否定する植民地主義に等しいことを、われわれは宣言する。継続中の集団的処罰、土地収用、パレスチナ人の土地・家屋・財産・農地・農作物の破壊、また、不法なイスラエル人入植地の建設、違法に収用したパレスチナ人の土地へのイスラエル・ユダヤ人の大量移動、さらに、イスラエルによる迂回道路を含む耐久性が高いが違法な社会基盤の整備などを通したこの入植植民地の過程を非難する。
162 人道に対する罪としてのイスラエル版アパルトヘイトが分離、隔離、収奪、土地へのアクセスの制限、[パレスチナ]国家の資格剥奪、[パレスチナの]「バンツースタン化」および非人道的行為などによって特徴づけられてきたことから、イスラエルが人種主義的、アパルトヘイト国家であることを、われわれは宣言する。
163 イスラエル国家による[パレスチナ]民間人に対する戦争行為を通した新しいタイプのアパルトヘイト体制維持のために行われている以下の非人道的行為に恐れを表明する。すなわち、[民間人に対する]軍事攻撃、拷問、恣意的な逮捕と拘禁、移動に関する厳しい制限の押し付け(夜間外出禁止令、投獄、町や村の包囲)、ならびに、経済の締め付け、意図的な貧困化および食糧と水への権利・適切な生活水準への権利・居住権・教育権・労働権の否定を含む体系的で集団的な処罰。
164 われわれは、イスラエル版アパルトヘイトと民族浄化手段により標的とされた犠牲者がとりわけ子ども、女性そして難民であることを認識し、また、軍隊による射撃や空爆攻撃で殺害され、負傷した者が子どもと女性に偏っていることを非難する。国際法に保障されているように、難民および国内避難民の出身地への帰還の権利、財産の返還の権利、ならびに、損害、損失およびこれらの人びとに対して犯罪への補償の権利を認めること。
165 イスラエル国内でのパレスチナ人に対する以下の差別に、恐れを表明する。すなわち、ユダヤ民族の国家としてのイスラエル国家の民族性を強調する、帰還および市民権に関する差別法を含むさまざまな差別法の押し付け。ユダヤ人のイスラエル市民にのみ与えられる利益および特権。パレスチナ人の国民としての帰属意識あるいはパレスチナ人が多数派の民族集団[であるユダヤ民族]に帰属していないという理由による、パレスチナ人の市民的および政治的権利の制限の押し付け。イスラエル国内に住むパレスチナ人への歴史的差別を認めるアファーマティブ・アクションを含む、国家の資源への平等なアクセスおよび市民権の平等に関するパレスチナ人の権利の否定。
難民、難民申請者、無国籍者および国内避難民
166 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と難民、難民申請者、無国籍者および避難民を生み出す状況の創出の間には密接不可分な関連が存在する。
167 脱出や避難の状況下で、難民キャンプであるいは再定住の過程で、とくに統合(integration)の過程で、難民、難民申請者、無国籍者および避難民はあらゆる形態の暴力および虐待に対してとりわけ弱い立場に置かれる。
168 正統なブータン市民の土地を他の民族集団に再配分し、その人びとの平和的な帰還を恣意的に遅らせてきた「一国民一民族主義(One
Nation
OnePeople)」という人種主義政策によって自らの国から強制的に退去させられたブータン人の状況を、われわれはとりわけ懸念する。
169 女性は、世界の難民の八〇%を構成している。女性の難民、難民申請者、無国籍者および避難民は、ジェンダー、障碍の有無および他の形態の差別の交差性によって被害者となり、また、脱出や移動のあらゆる段階において、多くの困難に直面している。
170 法的地位および統合や再定住の状況に否定的に影響する、民族、国籍、性的指向およびジェンダー・アイデンティティを理由とした難民への人種差別が認識されることを、われわれは要求する。
171 難民申請者、在留許可をもつあるいはもたない難民、無国籍者の身体的および心理学的な状況が、とりわけ出身国における拷問や収容の被害者であるこれらの人びとが受け入れ国において収容されないことを確保するために、認識されるべきである。難民を援助し、支援する人道支援組織の恒常的で法律で定められた存在は、法律によって規定され、国家によって予算支援を受け、さらに、多元性をもって方向付けられるべきである。
宗教的不寛容
172 われわれは、国連の「宗教あるいは信条に基づくあらゆる形態の不寛容および差別撤廃に関する宣言」の二〇周年を祝うにあたって「世界の精神的および宗教的指導者のためのミレニアム平和サミット」を開催する国連事務総長のイニシアチブを歓迎し、すべての国家がその結果を完全に履行することを期待する。
173 われわれは、いくつかの宗教的共同体および機関が、植民化、アパルトヘイト、奴隷貿易および奴隷制の基盤の恒久化や強化に関する自らの歴史上の共犯者としての立場を認めたということを認識し、ならびに、人種主義と人種差別を反道義的かつ非人間的であると宣言、非難するために同様の行動をとるよう他のすべての関係する宗教的機関に要求する。
174 いかなる区別、排除、制限あるいは優先を伴わない、表現、思想、良心、宗教および信条の自由は、国家が、自己の宗教あるいは信条を信仰、実践する個人ならびに集団の権利を保護し、ならびに、市民的、政治的、経済的、社会的および文化的生活に効果的に参加するこうした人びとの権利を確保する基礎を形成すべきである。
ロマ民族
175 反ジプシー主義(Anti-Tziganism)は、烙印の押し付け、基本的人権の露骨な侵害、公共サービス・教育・雇用へのアクセスの否定、地方および中央の行政レベルでの決定過程への参加の否定、迫害、虐待、暴力、強制国外追放、民族浄化、絶滅およびエスノサイドに現れる、ロマに対する人種主義および人種差別の特有の形態である。
176 歴史からの教訓を得て、ロマの奴隷状態、エスノサイド/強制同化およびロマに対するジェノサイド、そしてホロコースト時におけるロマの殲滅を、人道に対する罪として、われわれは宣言する。
177 ロマ・アイデンティティの超国家的特性およびインドに由来するその共通のルーツを認め、国連、地域的な国家間機構および組織、国家ならびに全世界によって、領土を持たない国民として認められるロマの権利を、われわれは強く支持する。
178 ロマの子どもおよび若者の尊重心の発展を否定する公教育政策を遺憾に思い、ロマの文化的アイデンティティを無視ないしこれに烙印を押す単一文化的で専制的および硬直的な教育制度を、われわれは強く非難する。
179 われわれは、ロマとりわけロマの女性に対する、裁判、市民権、住宅、学校教育、ヘルスケア、情報公開を含む雇用および社会的サービスへの平等なアクセスが欠如していることを遺憾に思い、また、そのような慣行を助長ないし、それらと闘うための措置を回避しようとするそれらの法規定および公共政策を強く非難し、ならびに、この事実を制度化された人種主義と考える。
性的指向
180 人種、年齢、言語、民族集団、文化、宗教、障碍の有無あるいは他の地位による区別のない非差別と平等の原則を規定した拘束力のある国際的合意および条約があり、また、性的指向の自由が基本的人権として認識されてきているにもかかわらず、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人びとが市民的および政治的権利ならびに経済的、社会的、文化的権利を完全に享受するにあたって依然として深刻な障害が存在している。
181 レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人びとに対する憎悪犯罪同様、公的領域および私的生活における身体的、性的および心理学的暴力が起こる確率は、とりわけ他の形態の差別によって悪化するケースでは、高い。
182 世界の多くの地域において、性的指向およびジェンダー・アイデンティティに基づく差別と不寛容は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人びとの間で高い自殺率の原因となってきた。
183 人種、ジェンダー、民族、カーストおよび不可触制、年齢、性的指向、ジェンダー・アイデンティティ、障碍の有無、宗教、文化、社会的地位、国籍およびその他の形態の差別に基づく差別が理由で、汚染のない環境を提供する措置がとられていないあらゆる場合、こうした集団の構成員にとってはますます大きな健康問題がしばしば引き起こされてきた。
184 同性愛嫌悪および性差別主義を含む、人種主義、人種差別、外国人排斥、およびその他の不寛容は、HIV/AIDS感染あるいは感染しているとみなされた人びとならびに影響を受けている人びとにとって、教育や治療へのアクセスを妨げるうえで、重大な役割を果たしてきたことに、われわれは深い懸念をもって留意する。
185 不寛容と差別の影響を受けている、アフリカ人とその子孫、先住民族、ダリット、移住者およびその他の集団、とりわけ、こうした集団の女性、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人びとに対する固定観念や軽蔑的なイメージを、メディアが普及させてきたことを、われわれはまた深い懸念をもって留意する。
若者と子ども
186 子どもと若者、とりわけ先住民族、アフリカ人とその子孫、ロマの諸民族(Roma
Peoples)、ダリット、自らの国家の内部におけるマイノリティおよび抑圧された国籍、民族、カーストに属する若者は、差別され、意思決定過程から排除され、周縁化されており、結果として、政治的・経済的・文化的分野における完全かつ主体的な参加を制限されている。加えて、子どもと若者、とりわけ女児、若い女性および障碍をもつ女性は、教育、保健、民事および刑事司法、メディアおよび環境に関して差別されている。
187 先住民族、アフリカ人とその子孫、ロマ、ダリット、マイノリティと抑圧された国籍、民族、エスニシティ、カーストに属する人民のような、しかしそれらに限らないあらゆる子どもと若者を、無視あるいは烙印を押すような単一文化的で専制的また硬直的な教育制度を通じ、子どもと若者の自尊心の発達を否定している公的な教育政策を、われわれは強く非難する。
188 若者は、しばしば、人種、階層、性的指向に対する固定観念に基づき犯罪者として描かれ、また、この犯罪者扱いがその共同体のさらなる周縁化をもたらしている。
女児
189 女児は、家族、コミュニティや社会とともに成長することを制約する、数々の人種主義的および差別的行動と振る舞いに苦しめられる。これは女児の身体上、精神上そして生物学上のニーズと彼女の帰属意識に否定的な影響を与える。
190 女児はその家族の構成員の多くを破壊する戦争や殺戮に起因する差別と不寛容に苦しむ。加えて女児は、不利な経済的、社会的および文化的要因、とりわけ家族の中で男児が有利に扱われていることにより商業的に搾取される。
人身売買
191 人身売買は現代的形態の奴隷制として認識され、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の増大によって悪化している人種主義のひとつの形態である。人身売買の需要サイドはグローバルな市場とセクシュアリティの家父長制的概念によって生じる。人身売買は多くの場合、買春と結合して国境の内側で、また国境を越えて起こる。
192 女性と子どもは、複合的形態の差別をもたらす、ジェンダー、障碍、人種、その他の形態の差別の交差により、とりわけ人身売買にさらされやすい。
193 人身売買は常に単なる法施行の問題としてではなく、人身売買された人の権利を尊重する枠組みの中で扱われなければならない。
NGOフォーラム行動計画
前文
本行動計画は、以下の主導的な原則によって特徴づけられる。
194 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は、歴史的に不正な社会的、経済的、政治的秩序に基づいた差別の形態である。これらの現象は、深刻な心理的傷を引き起こし、根深い不公平と貧困を半永久的なものにしながら、現代社会の中で、変化し、再構築され、現れ続けている。それゆえ、本行動計画は、過去とその現在への大きな影響を認めながら、前向きであるばかりでなく、成功を収めるために地球共同体の構成員に協調と持続可能な努力を要請する。
195 人種主義、人種差別は、特定の集団の人びとが人権と基本的な自由を完全に享受することを歴史的にそして体系的に否定してきた人種的優越性というイデオロギーのもとに成り立っている。これらのイデオロギーがもたらしたものに苦しめられてきた人びとの尊厳の回復は、われわれの人間性の中核である。
196 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は、政府および他の政治的、経済的、社会的アクターの側に政治的意思が欠如していることによって激増し続ける。このことは、課題の重要さと、人種主義を根絶するにあたって待ち受けている困難を示唆している。
197 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容、とりわけ現代的形態の奴隷制の根絶は、抜本的な社会変革、ならびに、現状では経済的に豊かな国に支配され、人種主義的あるいは他の差別的慣行が横行し続ける枠組みを創出してきた地球的な制度の再編を、要求する。
198 この文脈において、国連は、第一優先事項として、国連憲章によって想定された平等と正義の普遍的な価値をより効果的に施行することができる再構築の過程に着手し、従事すべきであり、さらに、貧困と不平等の中核となる問題にとりくむ視点から、地球的構造の現在の不均衡を是正するために活動すべきである。
199 上記の観点から、世界会議へ向けてのNGOフォーラムは、人種主義および他のあらゆる形態の差別に抵抗し、今なお抵抗し続けている人びとの勇気を賞賛し、ならびに、歴史的偏見から生まれ世界のすべての国や地域に広がっている人種主義を認めることをもとに、賠償や他の救済措置を通して過去と現在の暴力の是正を目的としたすべての努力を援助することを支持する。
法的措置
われわれNGOフォーラムは、
200 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容は、民主主義社会と「法の支配」を脅かし、傷つける重大な人権侵害を構成していること、ならびに、制度的および構造的人種主義が、直接または間接的に法律、政府、機関、公共サービス部門および多国籍企業の政策や行為の中に現れることを認め、これらの暴力が、適切な法的措置、政策および慣行によってとりくまれなければならないことを宣言する。
201 世界銀行および国際通貨基金、世界貿易機関などの地球的な経済機構はG7の国々によって支配されていること、ならびに、こうした機構が途上国における経済的、社会的不公平を固定化していることを認め、国連に対し、先進国と途上国の間の平等と機会への等しいアクセスを確保するため、こうした機関の構造的不均衡と不平等を早急に見直し、とりくむことを、要請する。すべての国家、政府および国連は、これらの機構がすべての人権の基準と普遍的価値を満たすことを確保すべきである。
202 多国籍企業が、地球的環境において自らを規制する効果的な法律、政策および慣行がないまま活動していることを認める。多国籍企業は、しばしば、途上国において重大な人権侵害を犯しており、このことが経済的、政治的、社会的不平等を半永久化し、結果的にさらなる不安定を引き起こしている。われわれは、その任務範囲がすべての国における人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を永続化させる大規模な人権侵害やそうした慣行に対する多国籍企業の役割に関する調査および報告を行うことであるとする「特別報告者(Special
Rapporteur)」を任命することを、要請する。その報告は、多国籍企業の行為を地球的に管理する特別規約(a
Special Covenant)の制定に関する具体的な勧告を行うべきである。
203 安全保障理事会の構造が経済的、社会的不公平と人種主義を半永久化させていることを認め、国連に対し、何十年もの間人種主義の固定化をもたらした拒否権の不均衡ととりくむために安全保障理事会を再建することを要請する。
204 人種主義の永続化に大きな影響をもつ法の適用や解釈について裁判所の役割と説明責任(accountability)に関する、地球共同体において周縁化させられた集団や個人の懸念を認めること。われわれは、人権委員会に対し、「裁判官と法律家の独立に関する特別報告者」の任務範囲を、裁判所の説明責任の問題を取り扱い、それに関する勧告を行うよう拡大することを要請する。報告者の任務範囲には、また、制度内におけるとりわけ人権法および人道法と現代的形態の人種主義の領域についての裁判官の訓練に関する勧告が含まれるべきである。現代的形態の人種主義に関する特別報告者は、同様にその任務範囲を拡大されるべきである。
205 国連[人権]高等弁務官の[国際]人道法をよい方向に変えようとする努力は、この事務所に割り当てられている予算の不足によって大きく阻害されていることを認め、国連に対し、その事務所が効果的に機能することを確保する適切な経常予算を提供することを要請する。
206 グローバル化が途上国の搾取、また、経済的、政治的および社会的発展の十分な恩恵からの排除を強化していることを認め、政府に対し、途上国の債務を帳消しにすることを要請する。
207 国家が国際的および地域的文書の署名国であるにもかかわらず、なお、それらの文書に基づく自国の義務を履行しているとは言い難く、そのため免責の文化を永続させていることを、認識すること。すべての国家に対して、すべての国際的および地域的文書を留保なしに批准し、かつ実施することを、われわれはそれゆえに要請する。とりわけ、以下の文書である。・「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(ICERD)」・「市民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」・「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(ICESCR)」・「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)」およびその追加議定書・「あらゆる移住労働者およびその家族の権利の保護に関する条約(MWC)」・「国際刑事裁判所に関するローマ規程(ICC)」・「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」(拷問禁止条約)・「子どもの権利に関する条約(CRC)」および・「ウィーン宣言および行動計画」・「人および人民の権利に関するアフリカ憲章」・「子どもの福祉および権利に関するアフリカ憲章」・「アフリカにおける難民の特定の側面に関するアフリカ統一機構条約」・「難民の地位に関する条約」・「人権及び基本的自由の保護のためのヨーロッパ条約」(同条約「第一二議定書」を含む)・「地域的言語およびマイノリティ言語に関するヨーロッパ条約」・「種族的少数者に関するヨーロッパ枠組条約」・「ヨーロッパ社会憲章」および集団的苦情の提出を認める「同憲章追加議定書」・「米州人権条約」・「人の権利および義務に関する米州宣言」・「市民的および政治的権利に関する国際規約の第一選択議定書」ならびに「個人および集団の苦情の提出を認める女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書」・すべてのILO条約およびUNESCO文書・「国境を越える組織犯罪に関する国連条約」ならびに「人、とくに女性および子どもの売買の防止、鎮圧および処罰のための補足議定書」・「人身売買および売春からの搾取の禁止に関する一九四九年条約」・「子どもの性的搾取に向けた行動のためのストックホルム・アジェンダ」
以下の措置がとりくまれるべきである。
208 国家に対して、個人および集団による苦情制度を規定する、「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書草案」の採択を求める。
209 結社の自由、強制労働の撤廃、児童労働の廃止、および、雇用における差別の禁止などを含む労働者に対する一連の基本的権利の尊重および促進に関して政府の責任を定めた「労働の基本的原則および権利に関する一九九八年ILO宣言」、ならびに、「先住民族に関するILO第一六九号条約」および「移住労働者に関する第九七号および第一四三号条約」を認識し、
210 CERDが公布した拘束力のある一般的勧告の価値および重要性を認識し、国家に対して、次のことを要請する。
211 人種主義および人種差別の犠牲者に対して効果的な保護および救済措置を保証するICERD第六条を実施し、人種主義および人種差別の犠牲者に対する公正かつ適正な補償を受ける権利を受諾すること。
212 人種主義と闘う不可欠の手段としての教育に焦点を置いたICERD第七条を実施すること。
213 ICERDに対するすべての留保を撤回すること、さらに国連人種差別撤廃委員会(CERD)が委員会への個人からの苦情の提出を受け入れる権限を受諾する条約第一四条に基づく宣言を行うこと。
214 国家の監視に関するCERDの「最終所見(ConcludingObservations)」が合理的期間内に政府によって履行されなかった場合に、執行可能な制裁を認める、CERDの役割の強化に関して国連を支援すること。
215 CERDへの国家報告書が、採択された立法の影響および効果に関する人種別および性別ごとのデータを含めることを要請する。
216 人種主義、制度的その他の人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘うことを目的とした行動計画を含み、また、人権および平等に関する独立した専門的国内機関を通じて市民社会との協力関係を促進する、「すべての国家に対して、国家が人権の保護および促進を改善する措置を確定する国内行動計画を作成することの望ましさについて検討すること」を要請する、「ウィーン宣言および行動計画」第二部第七一条に従い、これを発展させる。
217 人権および平等に関する効果的な国内機関を創設する。これらの機関は、独立したものであるべきであり、かつ、反差別立法の実施を監視し、被害者とその家族に支援および法的援助を提供し、司法当局に対して協力を要請する権限を有し、ならびに、調査権、執行権および政策策定権を有すべきである。これらの機関は、その構成において、社会の多様性を最大限反映すべきである。当該機関は、十分な予算をもつべきであり、かつ、国家からの干渉なく、その独立性および公平性に必要なすべての保証をもって活動すべきである。
218 国際人道法上の義務を完全に履行し、武力紛争のすべての当事者を拘束する非差別規定を尊重し、ならびに、すべての武力紛争地域に国連の特別報告者が常に入国および立ち入ることが承諾されることを確保すること。
219 それだけに限られるものではないが、教育、住居、雇用、ヘルスケア、社会サービス、市民権へのアクセス、公の場所および他の一般公衆が利用しうる物品およびサービスへのアクセスを含む、あらゆる生活領域における差別を明示的に禁止する包括的立法を採択しかつ実施する。こうした立法は、周縁化された共同体および弱い立場にある集団が直面している、交差性の差別を考慮しつつ、ジェンダーの側面を十分に含めたものであるべきである。こうした立法の実施状況は、定期的に審査されるべきである。
220 あらゆる公的生活領域を含む、すべての国内政策および慣行に人種主義との闘いの問題をその中心課題として組み入れる。その組み入れには、平等証明(equality
proofing)、ガイドライン、ポジティブ・アクション(積極的差別是正措置)、情報提供、積極的監視および効果評価(impactassessment)の利用が含まれるべきである。人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を経験しているすべての集団は、こうした活動に参加するよう奨励されるべきである。
221 すべての分野においてそこに現れる構造的人種主義を識別し、これと闘うこと、また、政府機関および公共セクターにおける人種主義的および外国人排斥的態度と体系的に闘うこと、ならびに、市民権、国籍および出入国管理に関するそれを含む現行のすべての立法、行政手続きおよび規則を検証し、いかなる差別的規定も含まないことを、確保する。
222 市民社会は、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容と闘い、これを防止するためのすべての政策あるいはプログラムの策定、実施、監視および評価に関与するものとされるべきである。
223 国際人権基準に従い、自己の権利が侵害されたすべての集団および個人が、賠償にアクセスすることを確保する。
224 人種主義、差別、外国人排斥および関連のある不寛容に関する苦情を提出し、これらの事例を報告した個人あるいは組織の保護を確保する。
225 刑事司法制度の中に、募集、雇用、訓練、ポストの維持と昇進において人種主義、人種およびジェンダー差別、外国人排斥および関連のある不寛容によって影響を受けている者、とりわけ、これらの理由の交差性によって強い影響を受けている者を含ませるようにするアファーマティブ・アクション計画を、確立する。
226 国家に対して、公的な資金援助が非差別政策をもつ組織に対してのみ提供されることを確保する政策を採用することを求める。
227 国家に対して、基本的人権の享受における人種およびジェンダーによる不均衡に関する統一的措置およびこれに関する人種別およびジェンダー別のデータの収集の必要性、こうした統一的基準を設定する複雑性、こうした措置さらにデータ収集の発展においてNGOと共同作業を行う必要性を認識すること、ならびに、このデータの情報開示と公開を行うことを求める。
228 国家に対して、人種的不均衡に関する統一的措置および人種・ジェンダー別のデータ収集を発展させ、実施するための技術的および財政的支援の必要性を認めること、ならびに、こうした支援を提供する国際基金の創設を支持することを求める。
229 国連に対し、人種主義との闘いに関して国家、政府および市民社会によって行われた進歩を評価するために二〇〇五年にフォーローアップ会議を組織することを、さらに、すべての地域および国内行動計画の実施を国際レベルで監視するための機構を設置することを要求する。
アフリカ人とその子孫
230 国連人権促進保障小委員会(人権小委員会)に対し、世界中のアフリカ人とその子孫に関する作業部会を設置することを、われわれは要求する。
231 国連に対し、この世界会議から一年以内に、奴隷貿易、奴隷制、植民地主義によってアフリカ人とその子孫にもたらされた損害の程度を評価する国際法廷を設置することを、われわれは強く要求する。国連に対し、アフリカに本部を置き、離散した諸国におけるアフリカ人とその子孫のために、研究、実態調査および資源ネットワーキングのできる世界的機関を設置し、資源を提供することを、われわれは要求する。
232 すべての国家に対し、反黒人主義を、とりわけアフリカ人とその子孫に対して現れる固有な特殊性をもった人種主義の一形態として認めることを、われわれは要求する。
奴隷制と奴隷貿易
233 大西洋越え奴隷貿易、サハラ地域越えおよびインド洋越え奴隷貿易、奴隷制さらに植民地主義の犠牲者および加害者双方の歴史的経験を正確に伝える教育カリキュラムを、われわれは要求する。
234 それゆえ、人道に対する罪である大西洋越え奴隷貿易、サハラ地域越えおよびインド洋越え奴隷貿易、奴隷制、植民地主義から生じた被害の性質と程度を証拠書類を整えて立証する国際法廷を一年以内に設置することを、われわれは要求する。
235 何らかの形態の奴隷制に関与しているカメルーン、モーリタニア、ニジェールおよびスーダン政府に対し、その慣行を根絶するよう求める。とりわけ、伝統的な奴隷制を廃止する法律には、これらの暴力の犠牲者に対する賠償規定を含めるべきである。これらの犯罪の加害者には、刑事罰が科せられるべきである。国家は、政治的、社会的、経済的、文化的および市民的権利を含め、これらの犠牲者の人権を認識すべきである。
236 大西洋越え奴隷貿易、サハラ地域越えおよびインド洋越え奴隷貿易、奴隷制およびアフリカの植民地化に関与し、そこから利益を得た米国、カナダ、ヨーロッパ諸国、アラブ諸国は、世界会議から一年以内に、これらの人道に対する罪の犠牲者のために、国際的な補償機構(an
internationalcompensatory
mechanism)を設置することを、われわれは要求する。
賠償
国連および各国は、
237 普遍的に承認された人権規範と基準に従って、人種・皮膚の色・カースト・門地(世系)・エスニシティ・先住民族・国民的出身に基づいた人道に対する罪の犠牲者であるすべての民族・集団・その構成員に補償が提供されるよう保証すべきである。
238 大西洋越え奴隷貿易、奴隷制、植民地主義、外国による占領の実行者および受益者が、これらの政策や慣行が人道に対する罪であると認めるよう保証すべきである。
239 一部のエリートだけにではなく、被害を受けた大衆にも届くような、また被害を受けた人びとの特別の性格を考慮して、人道に対する罪と人権侵害の被害者のための賠償計画を策定すべきである。それには次のものが含まれる。
240 土地、先祖伝来の像・工芸品の無条件の返還。故郷から離れることを余儀なくされ、外国の土地に居住することを強いられた者に対する土地の提供。アフリカ諸国および米州の貧困諸国を含む、人道に対する罪の被害を受けた諸国の債務帳消し。
241 これらの犯罪によって作り出された経済格差を埋め、債務帳消し、生産的事業の創出およびそれへの参加の強化を含む計画を実施することで、アフリカ、アフリカ人、アフリカ系子孫を含む被害者の受けた損害に対する金銭的補償。あらゆるレベルの雇用機会への完全なアクセスと労働市場への参入。人権侵害と人道に対する罪の結果としての損失評価に基づいた金銭支払い。
242 すべての政治囚の釈放と、人権侵害および人道に対する罪によって惹起された被害を是正するために特別に考案された、精神衛生を含む保健サービス、教育サービス、社会サービスなどの提供を含む回復(restoration)のための措置。
243 満足(satisfaction)と再発防止(non-repetition)には、人道に対する罪であったと公式に認めること、教育資料やメディアにおけるアフリカ、アフリカ人、アフリカ系子孫の歴史の是正、人道に対する罪と人権侵害の被害者の搾取という経済的基礎や、実行者の不正な蓄財を認識することが含まれる。
244 賠償計画が実施スケジュールとともに策定され実施され、本行動計画の諸条項の実現を保証する責任をもった、独立の国際監視機関と地域監視機関を創設すべきである。
245 大西洋越え奴隷貿易、サハラ地域越えおよびインド洋越え奴隷貿易、奴隷制、植民地化という文化的、人口的(demographic)、経済的、政治的、社会的、道徳的犯罪についての賠償の原則を認め、アフリカ人とアフリカ系子孫の被害者が賠償の形式・方法を決定する権利があることを認めるよう、われわれはすべての国家に呼びかける。
246 盗まれた文化工芸品、金、お金、鉱物資源の返還および大陸の土地の返還を達成するための公式の法的措置をとるよう、われわれは関連するすべてのアフリカ諸国に呼びかけ、これらの措置を支持するよう国際社会に呼びかける。
反ユダヤ主義
247 市民社会のすべての構成員が明確にかつ公式に、あらゆる形態の反ユダヤ主義を非難することを確保すること。憎悪扇動家(hate
mongers)や憎悪表現、また反ユダヤ主義の行為を広め、扇動し、推進し、または正当化するような他の形態の表現行為を公務員が公的に否認する責任を認識すること。ユダヤ人への差別や犯罪行為およびユダヤ人への侮辱行為を行った個人および団体に対して措置をとることを保証する反差別法が存在し、適切に実施されることを確保すること。反ユダヤ主義的事件、ユダヤ人に対する敵対行為、およびユダヤ人社会に対する人種差別的イデオロギーや差別行為を促す、過激かつ暴力的な活動の増加などに対処し防止する具体的な行動を促進すること。ホロコースト記念の国民の日の推進を含む、文化的またはメディアが注目するイベントの組織あるいは教育を通じ、ホロコーストの記憶の保全を促進すること。
248 学生や教師のための反人種主義教育において、またとくに歴史や社会科学の書物といったあらゆる教材に反ユダヤ主義の項目を含めること。学校のカリキュラム、教科書およびメディアにおける反ユダヤ主義的な宣伝や言及をなくすための手段を講じること。非定型的教育やメディアを通じ、人びとの意識向上とユダヤ人への寛容を促進すること。ユダヤ人への憎しみから必然的に生まれる諸悪について世界の人びとを教育する際に、ユダヤ人の若者に積極的な役割を果たす機会を与えること。人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を促すインターネットサイトの提供に対して、自主的なインターネット行動綱領およびその他の自主的な手段の導入の促進。国連人権教育一〇年の枠組みにおいて、責任あるインターネット使用を推進するための月間を毎年設立することを国連に対し奨励すること。
アジア人およびその子孫
249 民族・人種、宗教、民族(national)、カーストなどの諸集団間の武力闘争を含む、アジア地域における内戦や国際紛争状態において、国際人権組織は、レイプや子ども虐待、民族浄化、裁判なしの拘留、拘留中の死亡、失踪の事例を調査し記録する権利を与えられるべきである。処罰されることなく国際人権法の義務に従わない国民国家に対し国際社会が制裁を加えることが奨励されるべきであり、裁判所は凶悪犯罪の犯罪者の訴追手続きを遂行すべきである。
250 アジア地域の民族的および宗教的マイノリティを含むアジア人およびその子孫の住民に関する作業部会を設置するよう、われわれは国連人権小委員会に求める。さらに、人種、エスニシティ、カースト、言語、宗教、市民権または移住の地位、ジェンダー、性的指向、ジェンダー・アイデンティティ、障碍、その他の要因に基づくアジア人およびその子孫に対する差別を特定し、調査し、とりくむために、十分な資源を備え、NGOが参加することのできる委員会を創設することをすべての国家に求める。
251 アジア人およびその子孫を警察の職権乱用および憎悪犯罪から保護するプログラムと政策を策定するよう、われわれは国家に要請する。また、公平な移民政策および雇用、住宅、資金への公平なアクセスを通して、アジア人およびその子孫の社会への包摂と平等を確保することを求める。さらに、とくにアジア人およびその子孫の女性がそのような政策と事業を通じて搾取から保護され、その仕事を認められ、価値が評価されることを求める。
252 国家、メディア、学術機関に対し、教科書、講座、ならびに娯楽・ニュースメディア両面での適切で多様な描写を促進することにより、また適切な認可・規制機関を通したメディアへの公正なアクセスを確保することによって、アジア人およびその子孫についての人種主義や外国人排斥、ステレオタイプにとりくむよう、われわれは要求する。
刑事司法および裁判制度について
253 国際公法および国際刑事裁判所規程に照らし、政治、人種、民族、エスニシティ、カースト、門地(世系)と職業、文化、ジェンダー、障碍その他の理由により特定の集団を迫害することは人道に対する罪を構成することを認識し、不処罰と闘うことの重要性に鑑みて、いまだに国際刑事裁判所規程に署名、批准していない場合には署名、批准すること。同時に、国際法上の義務に従い、国内レベルにおいて戦争犯罪の捜査および訴追を速やかに行うことをわれわれはすべての国家と政府に対し求める。
254 世界中で死刑制度が人種的、ナショナル、エスニック・マイノリティおよび先住民族に対して偏って運用されていることにとくに注目したうえで、死刑制度を廃止すること。
255 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容にさらされている人びとが、逮捕・勾留の理由、刑事手続きおよび容疑について説明を受けること、通訳人を無料で刑事手続きのすべての段階において付せられること、外国人については当該国の外交代表者との連絡などを含む効果的な刑事弁護を受けられることを保証すること。
256 内部的および外部的な独立機関による苦情処理制度、監察機構、内部調査制度の確立および違反行為を懲戒ないしは刑事的処罰の対象とすることによって、刑事司法システムの内部において、とくに執行機関、司法官憲、矯正担当官を対象に、また公的分野において、不処罰の根絶を保証すること。
257 裁判官を任命するに際し、従来は人種、ジェンダー、エスニシティまたは皮膚の色のために除外されてきた人びと、とくにこれらの根拠が複数交差するために任命の対象から外されてきた人びとをも人選の対象として考慮することを保証するように、われわれは各国に対し求める。裁判官の選任手続きに際しては、裁判官として任命される人が政治的、行政的、経済的あるいは社会的勢力から独立性を有するかという点をも考慮すべきである。
258 裁判官が独立の地位で偏見をもつことなく職務を行うことを保証し、そしてあらゆる個人と集団に対し、とくに、政治的、社会的あるいは経済的な権力と無縁であり、人種主義、ジェンダー、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容のために差別的な取り扱いを受けている人びとに対しても、法を平等、公正かつ正義にかなう形で適用することができるように、司法府の機能および裁判手続きを定める法や手続きを改正し、あるいは導入することをわれわれは各国に対し求める。
259 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の犠牲者についての人種別プロファイリングを防止するため、データ収集を含めた効果的な措置が確立されることを保証すること。その措置の中には、法執行機関、検察当局、司法官憲がその職務を行うに際して、人種、エスニシティ、その他の集団的アイデンティティに対する偏見に依拠することを明確に禁止すること、とくに監獄をはじめとする拘禁施設においてその意図および行為の影響において差別的な取り扱いをしないことを保証することが含まれる。
260 刑事司法手続きにおいて未成年者を成年者と同様に扱うと、とくに判決段階において、周縁化された集団に属する人びとがとくに多く影響を受けるため、各国が刑事司法手続きにおいて未成年者を成年者と同様に扱うことを防止する法律を制定することを保証すること。
261 法執行官による必要以上の実力行使を禁止する政策および慣行を策定し、人種的あるいはその他の差別意識に起因する過剰な実力行使についてより厳しい制裁を科し、法執行官に殺傷力のない、必要最小限度の実力行使および実力行使に代わる方法について特殊な訓練を受けることを要求すること。
262 民営の監獄および代用監獄を含むあらゆる拘禁施設について、定期的かつ厳正な監視、調査、監督がなされること、被拘禁者の労働力を搾取することを直ちに中止すべく具体的措置を講ずること、被拘禁者が教育プログラムおよび設備、ならびに迅速かつ適切な心身の病いの予防、診断、治療措置への完全なアクセスを確保すること、犯罪者の釈放後の社会復帰をとくに目的とするプログラムを保証すること。
263 すべての国家に、公務員、刑事司法関係者、法執行機関が差別的な行動をとらないようにすること、これらを対象にした反人種主義的、反外国人排斥、およびジェンダーに配慮した実務運用に関する特別の教育プログラムを設けることを要求する。かかる公務員や機関は、差別的な発言や人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を助長する振る舞いを否定することを公的に表明することを要求されるべきである。
264 国家が、拷問禁止条約第一条「拷問」の定義には第四の行為(「あらゆる差別的な取り扱い」)も含まれる旨を関係当局に徹底する教育措置を講ずることを義務づけることにより、特定の集団や個人に対する拷問、虐待その他の暴力を防止し、同条約の第一〇条に従うよう確保すること。
265 難民申請者が不法入国あるいは不法滞在を理由として刑事的その他の制裁を受けないこと、難民申請者の拘禁は最後の手段としてのみ用いられるべきこと(但し、保護者のいない未成年者はいかなる場合においても拘束されるべきではない)、定期的に司法審査を受けられるようにすること、拘禁について最長期間を国法で定め、不服申し立ての権利が認められること、拘禁の状況について独立の機関による定期的かつ厳正な調査がなされることを保証すること。仮に拘禁される場合には、難民申請者は入国管理当局管轄の施設に、その地位および国際的な基準に適合する相当な条件下で収容されるべきであり、刑事被告人あるいは有罪判決を受けた者とともに収容されるべきではない。
266 法律専門家による適切かつ効果的な弁護、迅速な司法審査を受ける難民および難民申請者の権利について特別の関心が払われるべきこと、また、正規または非正規移住者、難民申請者、難民を含む当該国の国籍を有しない者などのグループに対し、拷問、虐待、その他の人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に基づくあらゆる形態の暴力が振るわれた場合において、その権利救済のために必要となる情報と法的な支援が与えられることを保証すること。
職業と門地(世系)に基づく差別を受けているダリットおよびその他のグループ
267 職業と門地(世系)に基づく差別(カースト差別やダリットに対する不可触制、部落出身者への差別、その他の影響を受けているコミュニティを含む)を撤廃するための法律が存在しない国においては、そのような差別を認識し、かつ撤廃するための適切な法律を制定すること。そのような差別を禁止する法律がすでに存在する国においては、その法律の確実な実行を担保するための時限的プログラムを含み、さらに、たとえ違反者が国や国の機関であっても機能する、透明性のある効果的な監視機構の創設のために迅速な手段を講じること。
268 カースト差別やダリットに対する不可触制を含む職業と門地(世系)に基づく差別が人道に対する罪であることを宣言し、こうしたグループ、とくにその中の女性と子どもの生存と安全についての権利を保障するために、また暴力、残虐行為、差別扇動を犯罪とするために、そしてあらゆるレベルで犯罪者を効果的かつ迅速に起訴するために法律を制定し実行すること。
269 伝統的慣習であるデバダシ(Devadasi)制度を廃止するために、またダリット女性の回復を図るために、迅速で効果的な法的および計画的な方策を実行すること。耕作可能な土地、適正な住居、収益のある仕事、教育をダリット女性に与えることにより、彼女たちの生活の質の向上を図ること。
270 日本政府による時限的特別法の制定にもかかわらず、部落出身者が直面し続けている差別の性質と程度を確かめるため、部落出身者の実態調査を行うこと。そのような差別を撤廃するために必要なすべての法的、行政的、その他の方策をとること。
271 大量の、しかし認知されず黙殺されてきた労働力によって国家建設過程に貢献してきたこれらのグループが、法律により労働力の搾取から確実に保護されるようにすること。生活最低賃金の保障、児童労働・債務労働・廃棄物採取の禁止を定めた法律の施行がそれにあたること。また、これらのグループによる土地へのアクセスや土地の管理を可能にする土地改革に関連した法律を施行すること。グループ内の女性が自分の名前で、公式な土地所有登録を行えるよう確保すること。
272 宗教的帰属とは無関係に、とくにこうしたグループ内の女性が、科学研究機関、行政職を含む政府の高位のポスト、法曹界、法執行機関、多国籍企業を含む民間企業へのアクセスを獲得できるように、透明性のあるアファーマティブ・アクション政策とシステムを導入し、それを強化すること。
273 生活の権利、土地所有権、教育の権利、住居・飲料水・衛生・健康・雇用機会への権利の享有を保証するために十分な財源を配分すること。利用可能な財源の十分かつ適正な活用を確実にするために効果的な監視機構を設立すること。
274 職業と門地(世系)に基づく差別を受けているグループに対する、またそのグループ内における肯定的な態度変容を促進するために、NGOや他の市民運動団体の積極的な支持のもと、大規模な啓発と教育的とりくみを行う。それに必要な予算は国家が確保すること。
275 原状回復、金銭的補償、回復と再発防止を目的とした法律および適切な機構を通じて、数世紀にわたりこれらのグループに対して行われてきた誤りに対する賠償措置を導入すること。
276 国連は、国連人権条約の監視機構や国連人権小委員会によって採択された関連するすべての勧告や決議が、政府により確実に履行されるようにすること。国連は、世界の異なる地域に存在する、カースト差別や不可触制を含む職業と門地(世系)に基づく差別について研究することを目的とした特別報告者を直ちに任命すること。
277 NGOは、関連する政府が議会と国連人種差別撤廃委員会に対して、国内人権機構の年次報告書の提出ならびに公開の審議を憲法で義務づけることによって、カースト差別と不可触制を含む職業と門地(世系)に基づく差別の撤廃を目的とした政策とプログラムの実行に責任をもたせるためにロビー活動を行うこと。
障碍をもつ人びと
278 補助装置や補助技術、教育、公式に認知されていない技能の認知、差別なくまた正当な報酬を伴う仕事保障などを含む最適なリハビリテーションプログラムの具体的策定を、われわれは各国に求める。
279 障碍をもつ人びとについての意識喚起と、障碍をもつ人びとが国家の資源を正当に利用し正当に分かち合う権利を促進する広範な戦略を通じて、障碍に烙印を押すことに対してとりくむよう、われわれは各国に求める。
280 国やコミュニティにおける意思決定過程にすべてのレベルで障碍をもつ人びとの代表と参加を確保するために、適切な規則を策定するよう、われわれは各国に要請する。
281 われわれは各国に、障碍に基づく差別の撤廃をめざした戦略を促進し履行するため、人種と障碍の交差性について検討するよう要請する。障碍をもつ人びとの完全な参加のもとに、障碍に配慮する反人種主義政策を立案し、履行し、監視すること。
282 人類の歴史の中での、障碍をもつ人びとへの差別と烙印を押すことの状況を認知し是正することを、われわれは国連と各加盟国に求める。
283 障碍の種類、皮膚の色、人種、ジェンダー、年齢、ナショナルまたはエスニック的出身、宗教、言語、文化、カースト、社会経済的地位もしくはその他の地位、および財産に基づく区別なく、人権を完全に享受できることをめざした立法、プログラムおよびサービスを履行するよう、われわれは国連と各加盟国に促す。
284 世界中にいる障碍をもつ人びとの状況を監視するための、かつ、この問題に関して情報を交換するための、障碍に関する地域的および国際的なネットワークを設立するために必要な条件を整えること。
285 障碍をもつ人びとが反人種主義・差別撤廃世界会議とNGOフォーラムなどのような催しのあらゆる側面に参加するにあたり、発言者、報告者、リソース・パーソンの役割や文化的催しに関する側面を含めて、平等な参加の機会を与えられることを国内および国際的レベルで確保するよう、われわれは各国に要請する。
286 さらに、このような催しを国内および国際的なレベルで、障碍者が完全に参加できる場所で開催するよう、われわれは各国に要請する。
287 障碍をもつ人びとのその団体への物理的アクセスと事業面におけるアクセスについての既存のプログラムを今後一年以内に包括的に分析し、障壁を撤廃するための適切な変更を行うよう、われわれはNGOに要請する。
教育
弊害を正す手段としての教育は、包括的な戦略として幅広い視点から検証されなければならない。・定型的教育・非定型的教育・成人教育・啓発キャンペーン・情報普及(情報へのアクセス)・公務員の変革のための教育・メディアと情報技術(IT)
定型的教育および成人教育を含む非定型的教育
288 「人権教育のための国連一〇年(一九九五―二〇〇四)」を実施し、人的および財政的な資源を増やして、それをさらに一〇年継続させることを支援すること。
289 高等教育を含むすべてのレベルにおいて、いかなる理由による差別もなく、法的地位にかかわらず、すべての人に平等な教育アクセスを確保し、教育における人種的隔離を助長する、もしくはそれにつながる政策や慣行を廃止すること。
290 すべての生徒・児童が彼ら/彼女らの権利と義務について知り、理解することを目的として、初等および中等学校のための国のカリキュラムの一側面として、人権教育および人権の価値を含めること。初等および中等学校のための国のカリキュラムの中に、自国の憲法、世界人権宣言、子どもの権利条約、その他の国際人権条約のもとで保障されている彼ら/彼女らの権利および義務について、学習者が確実に自覚することを目的として、普遍的な価値を強調した人権教育を含めること。
291 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を助長したり、もしくは否定的なステレオタイプを強める可能性のあるあらゆる要素を解消することを目的として、教育カリキュラムを見直すこと。計画立案や評価を行うために、教育の質や達成度について、データを系統的に収集する努力もまた必要である。さらに、科学や技術に基づいたアプローチと、地域やグループに根ざした固有の知識や哲学に基づいたアプローチとの間のバランスがとれた総合的なアプローチを奨励する。
292 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容を強固にしてきた植民地主義、ジェノサイド、奴隷制、アパルトヘイト、帝国主義と家父長制イデオロギー、そしてカーストに基づく慣行に反対してきた人びとの闘いの正確な歴史を授業計画に組み入れることを確実にすること。さらに、たとえばアフリカ人やアフリカ系の人びと、先住民族、移住者、その他のエスニック的、人種的、文化的、宗教的、および言語的集団などの異なる文化と集団が国のさまざまなアイデンティティを作り上げるなかで果たしてきた活力ある貢献を教育カリキュラムにおいて強調することを確実にすること。
293 母語による学習や教授の追求を可能にする教育システムを検討し、発展させ、教育アクセスが言語的能力や基準に基づいて社会的弱者集団に対して否定されないことを確実にすること。さらに、補習指導、就学前教育、本や学用品のための給付金、職業教育や高等教育のための奨学金、就職のための指導や援助などの措置を通じて、周縁化された集団への積極的な教育支援を提供すること。
294 教育政策が、文化的、人種的、性的な多様性を含むこと、また、民族(peoples)、共同体、および国家の発展における女性の歴史的な貢献を掘り起こすことを追求すること。
295 とくに高等教育へのアクセスのない地域においては、公平で持続可能な発展と人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の根絶のために、すべての民族(peoples)と文化に対して、教育の中心施設において、平等な条件のもとでの技術へのアクセスを与えること。
296 マイノリティ集団の構成員が教員や訓練者、介護人として就職したり昇進したりすることを促進し、教育職へのアクセスの実際上の平等を保証するための方策をとること。さらに、生徒・児童、親そして教員が人権についての情報と訓練を与えられ、学校における人種差別事件に対して利用できる救済策を十分知ったうえで対処するように訓練されることを確実にすること。
297 企業および多国籍企業に対し、不利な立場にある集団のスキルの開発とともに、文化的多様性、異文化間コミュニケーション、非差別という価値に基づく教育プログラムを通して、職場において理解と受容を促進するよう奨励すること。
298 マイノリティの言語における機能的非識字の問題に注意を喚起し、社会全般での成人教育を推進すること。
299 教育の質と達成度を人種別に分析し、計画立案と評価のためにデータを系統的に収集する努力が払われなければならない。
300 ダカール宣言およびジョムティエン宣言に対する締約国の約束に従い行動をとること。
市民への啓発および情報へのアクセス
締約国および政府は、
301 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の危険性を自国の社会に警告するために公的な情報を提供し、同じ目的でのNGOのとりくみを支援することに傾倒すべきである。
302 すべての形態の宗教的不寛容を含めて、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の被害者の権利と救済策についての情報源への自由なアクセスの提供を確立または促進すべきである。
303 人種主義および関連のある不寛容と闘ううえでの情報のネットワークを、地方、国内、地域レベルで組織および支援し、情報の発信や対象グループの間でのネットワークの確立におけるNGOの重大な役割を認識しながら、人種主義および関連のある不寛容と闘ううえでのNGOの重要な役割を促進すべきである。
304 以下の活動を担う独立した機関を設立し、資源をあてがうべきである。・人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の歴史的原因や新たな原因、その影響、適切な是正策について研究する。・人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容につながる、またはそれらを扇動するすべての思想、政策、慣行と闘うことに焦点をあてる。・人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容について社会のすべてのレベルで知らせ、啓発キャンペーンを実施し、推進する。・市民社会組織やNGOの人種主義、人種差別および関連のある不寛容の根絶に向けたとりくみを統合し、それらに対して協力し、奨励し、支持する。
公務員への研修と教育
締約国および政府は、
305 司法組織、法執行機関などの国家機関、立法府議員を含む公務員、ならびに移住者やその他の社会的弱者集団に関わる協議会などの市民団体に対して、人種差別撤廃条約の条項に関して、普及・啓発するための全国的なキャンペーンを実施すべきである。
306 警察および入管職員に、国際人権基準の適用について研修を行い、そのような研修プログラムの好結果での修了を昇進のひとつの基準にすべきである。
307 性差別的偏見、障碍者差別のステレオタイプ、および複合差別を含む人種主義と不寛容の危険性についての研修プログラムを実施し、とくに警察や軍隊、司法部、その他の法執行機関の職員、教員とその他の教育者、そして保健や社会福祉の領域で働く職員など、公的生活のすべての領域で働く職員による文化的多様性の尊重を推進すべきである。
308 刑事司法制度に関わる職員、とくに警察やその他の法執行官が、ターゲット・グループやマイノリティと相互交流できる具体的な方策を策定すべきである。
309 政府および国家は、奴隷制に根ざしたものではないものを含めて、すべての現代的形態の人種主義の根源と発現に注意を喚起する調査研究を促進し、人権と多文化主義を優先する原則に基づいて、公務員と一般市民の双方への教育プログラムを導入すべきである。
環境レイシズム
310 持続可能な発展を促進するために、政府は以下のことを行わなければならない。環境レイシズムに影響を受ける人びとの生活の質を評価するために経済、保健、社会指標を策定し、改善し、適用すること。環境を汚染せず、財政負担が可能で、かつ持続可能な生産様式および汚染防止様式への公正な移行を実施すること。環境汚染による健康被害を低減し除去することを可能にし、また汚染地域の完全な回復を可能にするような情報と技術を開発し、適用し、すべての国家に移転すること。有害物質により被害を受けた人びとへの医療サービスを確保すること。環境悪化を招き、健康被害を生む有害物質および汚染技術の国境を越えた(とくに高度産業国から発展途上国への)および国内での移転・廃棄を禁止する法律を策定すること。国連ならびに国際的・地域的金融機関および援助国に対し、その貸付・無償援助政策の運用を改革し、すべての国家が本行動計画が求める法、政策、運用を策定、改善および実施することができるような資源を提供すること。
311 政府はすべての人の汚染されていない空気、土地、水、食料、安全かつ適正な住宅への基本的権利を保障する国際規約、条約、宣言、国内法、および政策を策定し、履行し、実行しなければならない。これらの法律文書および政策は以下のことを保証するものでなければならない。都市および農村社会、労働者、とくに農業従事者を環境上の危険から保護すること。この環境上の危険は、歴史的に、人種、階層、皮膚の色、ジェンダー、カースト、エスニシティ、および/または、国民的出身などに基づいた差別にさらされた人びとにことに影響を与えてきた。すべての人が環境および健康問題についての意思決定に、文化的・言語的に適切な啓発・教育を含む有効な方法で参加する権利を保障すること。法的・行政的手続きへの公平なアクセスと環境レイシズムの救済策を保障すること。国家および企業に人権保護の国際・国内法に従って行動させるような法的拘束力のある文書および機構を確立すること。
312 政府は、すべての政府の政策と実行において、「環境と開発に関するリオ宣言」に謳われている予防的アプローチならびに汚染者負担原則を厳守することを保証しなければならない。健康、環境、経済状況を改善するために、環境レイシズムの被害者およびその他の非国家行為主体の関与のもと、持続可能な発展のプログラムを策定し、実施すること。軍事行動、政府の行動および産業活動によって引き起こされた環境レイシズムから人びとを保護するプログラムを設けること。これは、健康被害の脅威からの保護、軍、政府および産業によって引き起こされた環境悪化の救済、および完全に有効な有害廃棄物の備蓄を含むものでなければならない。経済開発政策を改革し、保健、社会、文化、そして宗教的/精神的価値を優先する仕組みをもつものにすること。
313 NGOフォーラムは、環境レイシズムの根絶と持続可能な発展のためのパートナーとして、NGOに以下のことを求める。地域社会およびその環境へ影響する公的および私的意思決定への参加を国内および国際レベルで促進すること。それぞれが住む地域社会における環境レイシズムの影響を検討すること。労働者と地域社会に対する環境レイシズムの影響を特定し、公表すること。環境レイシズムの影響を市民社会で教育すること。天然資源を保護し、地域社会に影響する汚染を除去し、汚染された環境を回復するための公的および民間部門の政策および法を提言すること。環境レイシズムの犠牲者が司法へのアクセスを得、また公正な補償を得るために、法的助言支援を行うこと。公平かつ持続可能な発展を可能にするために、相互連帯行動に参加し、産業、政府、政府間機関がその義務を履行しているかどうかを監視すること。NGOフォーラムは、政府、政府間機関、国連機関および他の金融機関に対し、NGOが本行動計画を実施するために必要な財政的・専門的支援をNGOに提供することを求める。
エスニックおよびナショナル・マイノリティ
314 エスニックおよびナショナル集団の構成員にすべての基本的人権、とりわけすべての公の場における完全に平等な市民権を十分に認めるよう、われわれは国家に求める。国家はエスニックおよびナショナル・マイノリティに対する差別を促進し、そのアイデンティティ、文化、宗教、言語を享有するのを妨げる、もしくはマイノリティ共同体の構成員を無国籍にするような法律を取り消すべきである。
315 われわれは政府および国際組織が、アファーマティブ・アクション・プログラムを含む、差別を是正するための国家的な公的・社会的政策を実施することにより、広範に存在する差別とエスニックおよびナショナル集団への迫害を根絶するための緊急の行動をとることを勧告する。とりわけ国家はエスニックおよびナショナル集団が意思決定および実施に参加するのを可能にする統治・運営制度を設置すべきである。紛争後の移行期にある国家はできる限り、エスニシティより政党に基づいた権力分配(パワーシェアリング)のシステムを採用すべきである。
316 国家の領域内のすべての人に対する文化的権利を確保し、文化的多元性を保護・促進するために、憲法による保護を含む立法を行うことをわれわれは国家に求める。文化的・言語的に適当な文化横断的な教育に関する規定およびカリキュラムを策定することをわれわれは政府に勧告する。こうした規定およびカリキュラムはすべての集団、個人がその多文化社会を理解し、公的な場において共通の価値を共有することを確保するものであるべきである。そしてこれは民主主義的な参加を通して発展していくものである。国家はマイノリティの文化や言語を促進する組織を支援・促進し、異なる共同体間の文化的交流・理解を促進すべきである。
317 一定のエスニックおよびナショナル集団が地理的に集中して存在している場合、国家はこの集団がそう望む場合・時には、自主的な統治を可能にする領域的自治を確立すべきである。他のマイノリティ、とりわけこうした領域内のより小さい集団の権利もまた保護されるべきであり、個人の権利は常に尊重されなければならない。
318 国家はすべての人に人間の安全を与える義務があり、その治安および軍事機構をマイノリティ共同体を操作したり、その間に分裂を作り上げたりするために使用することをやめなければならない。国家はその軍事予算を削減し、これらの資源を全国的な多文化教育およびメディアプログラムの確立、ならびにマイノリティの権利の促進・保護に向けるための措置を速やかにとらなければならない。
319 国内人権機構が開発プロジェクトおよびプログラムが国際人権基準に合致することを確保しつつ、エスニックおよびナショナル集団に与える影響を独立してかつ効果的に監視することを確保するよう、われわれは国家に求める。こうした機構は影響を受ける社会および市民社会が監視プロセスに十分に参加できるよう確保すべきである。政府は、エスニックおよびナショナル集団のための伝統的土地および領土権に関する国際基準に合致した土地の保有および使用に関する政策と規律を採択すべきである。牧畜・遊牧民および森林・樹林地帯の人びとの土地の権利は法律において認められ明記されなければならない。
320 エスニックおよびナショナル集団が自らに影響する国家戦略、開発計画・プログラムの作成、実施、評価に参加する権利を保障することを、われわれは政府および多国間・二国間開発機関に勧告する。この参加はプロジェクト・サイクルのすべての段階を通じて包括的かつ透明でなければならない。参加の性質は、エスニックおよびナショナル集団がそう望むのであれば、その伝統的意思決定過程と両立するものであるべきである。同様の考慮が、とりわけエスニックおよびナショナル集団内の女性、高齢者、障碍者、子どもおよびHIV感染者・AIDS患者に対して、その人たち自身の権利に対する認識や発展の必要性を表明することができるように、払われるべきである。
321 「国民的または種族的、宗教的および言語的少数者に属する者の権利に関する国連宣言」に基づき、これらの人びとに関する拘束力ある国際条約を作り上げることをわれわれは要求する。
322 広範な人権侵害の事例、とりわけエスニックまたはナショナル集団の構成員の生命と安全の権利に関するものに介入することをその権限とする国際的な司法機構の創設をわれわれは要求する。
323 もし現在それが存在していない場合には、エスニックまたはナショナル集団の保護のための地域システムの設立をわれわれは要求する。
324 われわれは国家に、マイノリティ・オンブズパーソンのような、エスニックおよびナショナル集団の公正な取り扱い、およびこうした集団の政治的、経済的、社会的、文化的生活、およびいかなる公的生活への参加の促進をも保証するための制度を設立することを要求する。
325 イスラエルのパレスチナ市民は自由権規約二七条に基づく明確に区別しうるナショナル・マイノリティ集団として認識されるべきである。われわれはイスラエルに関して出された社会権規約委員会、自由権規約委員会、人権委員会のような国連人権条約もしくは国連憲章に基づく機関の勧告および最終所見の履行を要求する。これらはパレスチナ市民の土地、不在地主所有権、追い立てられた村落、認められていない村落に関する集団的権利を強調するものである。
326 われわれはクルド人に対する系統的・制度的な差別的政策に対して深い懸念を表明する。われわれはクルド人に対して行われるジェノサイド、民族浄化、文化および言語の権利の否定、大量失踪、村落や町の破壊といった犯罪を非難する。クルド人の自由、尊厳、自決のための権利を保障するために、われわれは国際社会および関係国に、こうした政策をやめ、正義を実行し、被害者のための賠償について決定をなし、効果的な監視機構を作り上げることを要求する。クルド人の国家への権利が認められることを要求する。
327 われわれは東トルキスタンのウイグル人に関し懸念を表明し、国連がウイグル人政治囚および宗教囚の大量処刑、拷問、失踪に関する深刻な申し立てを調査する作業部会を設立することを勧告する。
ジェンダー
328 武力紛争下のすべての当事者にローマ規程に定められた規則を遵守するよう要請する。また国家ならびに国際社会は、とりわけ武力紛争下におけるあらゆる形態の人種差別ならびに女性の人権侵害と闘うべきである。
329 国家に対して、紛争下におけるレイプまたはその他のジェンダーに基づく犯罪に関する公平かつ独立した捜査ならびに訴追を行うよう求める。
330 レイプは戦争犯罪であることを明らかにし、記録すること。早期警報システムの手段として、調査ならびに情報収集を行うこと。
331 教育カリキュラムならびに軍隊(警察)への研修に、人権研修、平和の文化およびジェンダーに敏感な研修を盛り込むこと。
332 教材からステレオタイプや歴史的偏見を取り除き、ナショナルおよびエスニック・マイノリティ、人間の移住、植民地主義および女性の人権の歴史についての教育を強化すること。障碍者に対する差別を撤廃するために、障碍をもつ女性の問題が公教育の中に盛り込まれるべきである。
333 女性に法的扶助および人権に関する教育を提供するプログラムを促進すること。
334 国家は、ジェンダーに基づく暴力や女性の移住者および移住労働者への人権侵害を含め、正規および非正規移住者および移住労働者に対する人権侵害を予防し、やめること。
335 国家、多国籍企業、国際金融機関および企業に対し、女性と少女が雇用へのアクセスにおいて、そのジェンダーゆえの他とは異なった経験をもっていることを認識し、人種差別的な政策や慣行を予防し撤廃するよう求める。障碍を抱える女性が、適切な医療サービスを受け、リプロダクティブ・ヘルスに関わるサービスを受ける際に尊厳をもって扱われるよう求める。
336 伝統的、社会的および文化的信条を部分的に解釈したり、宗教的および伝統的信条を悪用することは、人種主義、人種差別および関連のある不寛容の原因である。
337 国家は、女性と少女の健康に関わる権利を促進および保護し、とりわけ障碍をもつ女性に対し、十分な母性およびリプロダクティブ・ヘルスのサービスへのアクセスを提供すること。
グローバル化
338 若年労働者、とくに、先住民族やマイノリティ出身や移住者グループからの若年労働者の搾取が多国籍企業によって悪化していることを認識することを、われわれは国家に対し要請する。国家にこれらの慣行を規制し、それによってその市民を保護するようにわれわれは要請する。
339 われわれは、若者による貢献の価値を認識するための、そしてその安全と生計を保証するための行動規範の作成と履行を強く主張する。
340 われわれは、グローバル化がもたらしている差別的影響に対する共同体の不安の表現に対し、多くの国家が懲罰的対応をとっていることについて懸念を表明するとともに、国家がそれに代わって民主主義と反人種主義を標榜する世界を支持することを求める。これらの問題に関しての意思決定過程が、国家が代表する共同体を考慮し、共同体に対し説明責任をもつものとなるよう確保することをわれわれは国家に対し求める。
341 先住民族の地域の伝統医薬、生物多様性、文化を含む知的所有権が公に認知されることを保証するために適切なすべての措置をとるようにわれわれは国家に対し求める。とくに、これらの知識の適用やこれらの権利の侵害が私的団体の経済的利益につながっている場合に、先住民族の知的所有権を実施し、保障することを要求する。
342 人種主義の側面が、グローバル化を通じた資源の不平等分配に内在していることを認識することをわれわれは国家に対し求める。グローバル化の人種主義的側面は、国際的、国内的、地域的なレベルに存在し、それらの各々のレベルにおいて組織立った予防的戦略を必要とする。
343 マイノリティ共同体の具体的な構造的発展と、教育、訓練、健康管理、住宅といったニーズのための適切な援助ができるように、南の国々への経済援助の手段を強化するよう、われわれは北の政府に対し要求する。
344 「企業の社会的責任」を高めるために国家や国際的機関において訓練を受けた人びとの存在を要請する「人道主義ビジネス」を支援すべきである。
憎悪犯罪
345 われわれは国家に対し、憎悪犯罪を犯した者は適切な場合、その国籍にかかわらず、訴追させるよう引き渡すことを求める。
346 こうした凶悪な憎悪犯罪の被害者に対する国際的な保護を進める政策を策定し実施すること。性暴力を含む憎悪犯罪に対する人権法や国連条約の実施を確保する効果的な手段を講じ、監督すること。人種主義的憎悪表現や人種主義グループ(hate
group)を非合法化する政策や措置を進めること。
347 ここで取り上げられている民族浄化、民族紛争、思想的・文化的ダリット根絶(Daliticide)、憎悪犯罪などの問題を調査する委員会および報告者制度を設置し、世界各地に事務所を配置するなど、国連内において新しい課題を認識するよう奨励すること。
348 憎悪犯罪や民族浄化、ジェノサイドを犯し続ける反抗的な国家に対処する(禁輸措置や経済制裁など)より強力な手段を検討すること。またあらゆる抑圧状況の中で運営されている宗教組織に関わる人びとへの保護を進めること。
349 人種主義、人種差別、憎悪犯罪、体系的民族浄化、ジェノサイドに関わるプロパガンダやメディアの偏向に対処するための機構を設置し、十分な資金を提供するよう国連に奨励する。また国際社会において被抑圧者の解放とこれら凶悪犯罪への理解を進められるように、差別、憎悪犯罪、民族浄化、ジェノサイドに関する教育と訓練を政府と国連が行い、ジュネーブ・ニューヨーク以外の地域に事務所を設置するよう求める。国連に対し、この目的のため監視・宣伝を行うよう求める。
350 NGOは、国連に対し真剣に憎悪犯罪に対応するよう強く求めるとともに、憎悪犯罪や暴力と闘い、犯人を処罰する国内法制度を求めて声をあげるべきである。
351 すべての政党は特定の集団を排除しない政策を進め、人種・民族・宗教・言語・カーストに関する否定的なイメージの利用を禁じなければならない。
352 教育が特定の集団を排除せず、差別や憎悪犯罪の永続化を防止できるよう、教育を監視することは重要である。また特定の人種およびエスニック・マイノリティ、先住民族、カースト、とくに女性、子ども、障碍者、宗教的マイノリティ、社会変革や自己決定を要求している共同体、その他憎悪犯罪の対象となっているグループがメディアにより非難、一般化、レッテル張り、ステレオタイプ化、偏向の対象とされていないかどうかメディアを監視することも重要である。
353 NGOは、自分たちが属する社会の構成員への憎悪犯罪と闘うため、その社会で差別を被っている人びとと連合しなければならない。すでにそのような連合を創っている他国のNGOから、支援や知識ならびに助言を得ることは重要である。
健康・HIV/AIDS
354 先進工業国の政府は、最先端の医療・健康関連の技術および知識が途上国にも入手可能になるよう確保し、すべての人ができる限り高水準の身体的、精神的健康を得る権利を享有できるような施策を実施すべきである。すべての政府は、国内の保健制度における差別を撤廃するための効果的な機構、およびその効果的な監視方法を確立し、供給すべきである。
355 政府は、貧血症、糖尿病、高血圧症および他の慢性的疾患など、社会的弱者集団にとくに多く見られる病気および健康状態に関して予防・治療策を策定し、促進すべきである。これらの対策は、民間部門(とくに医療技術および製薬産業)とともに策定すべきであり、途上国における病気と疾患に特別な注意を払い、国内の保健制度における人種主義ならびにその他の差別を撤廃すべきである。〔国際製薬産業の人種主義に関する判決/一文〕
356 政府、NGO、民間部門およびWHO(世界保健機関)を含む国際社会は、健康状態および保健事業に関する人種、ジェンダー、社会経済階層別のデータを定期的かつ体系的に収集すべきである。収集データは人口調査や基本統計に限るべきではなく、とくにサービスの供給、診断・治療、利用できる施設、利用できるサービス提供者、および他の関連する保健活動とサービスの入手可能性と質に関するデータを含めるべきである。人種差別のもたらす影響およびデータ、結果、結論の公表に関して特別の注意を払うべきである。
357 HIV/AIDS、結核、マラリアおよび他の感染症と闘うために、予防、治療および地域社会支援活動を支援する包括的な計画を策定し実施するために、世界の最富裕国の政府は「国連グローバル健康基金」に少なくとも年間一〇〇億ドルの貢献をすべきである。
358 HIV/AIDSに効果的に対処するため、政府は、予防、治療、ケア、地域社会支援および保健社会基盤の各要素が相互に強化し合うような包括的かつ多部門にわたる計画を実施すべきである。これには市民に自発的HIV感染テストを奨励することを含め、文化に配慮した教育事業ならびに女性のHIV感染率を低減させるための特別の計画を含むべきである。また、これらについては途上国と社会的弱者集団に特別の注意を払うべきである。
359 政府は、レイプおよびあらゆる形態の女性に対する性暴力を撲滅するための努力に注意を注がなければならない。HIV/AIDSの闘いになかでも必要なのは、国家が女性および少女に対する法的および事実上の差別を撤廃し、女性に対する暴力および差別行為を防止し、調査し、処罰することである。さらに、女性の権利団体、人権団体、他の関連する市民社会の構成員との協調のもと、国家は女性のHIV/AIDSに対する意識を向上させるための計画を立案し、資金を供給し、実施すべきである。
360 若者が彼ら/彼女ら自身の健康、とくに性および生殖の健康についてのすべての意思決定に参加できるよう確保すること。また周縁化された集団の若者に無料の保健サービスを供給することを確保すること。
361 政府は、すべての人が無料でアクセスできるような、包括的なHIV/AIDS母子感染対策計画を提供すべきである。そのような計画には、インフォームド・コンセント、検査前および検査後のカウンセリング、治療の選択肢、代替人工乳、および支援グループへのアクセスを含むべきである。
362 政府は、調査研究へ参加する社会的に弱い立場にある集団の保護を保証するための仕組みを設けるべきである。それらの仕組みには、無料のインフォームド・コンセントだけでなく、搾取から弱い立場にある集団を保護する他の形態も盛り込むべきである。
先住民族
363 差別防止・少数者保護小委員会の決議1994/45によって承認された先住民族の権利に関する国連宣言草案の採択を強く勧告する。米州機構(OAS)の先住民族の権利に関する米州宣言草案は、先住民族の完全で対等な参加のもとで作業を進め、採択されるべきであり、国連宣言に含まれるものより少ない権利を取り扱ってはならない。国家は、先住民族の集団的権利を承認しなければならない。
364 先住民族の権利を保障する国際条約や協定を国家が批准するよう勧告し、これまで人種差別撤廃条約、ジェノサイド条約、ILO第一六九号条約を未批准の国家がこれを行うよう強く勧告する。ILO第一六九号条約を批准している国家は、先住民族と協議のうえ、同条約の現在の欠陥を克服するために条約の改定を求めるべきである。
365 先住民族の自己決定権(民族自決権)に関するいかなる留保条件も人種主義であり、国際法の基本原則に違反している。公式の世界会議政府宣言で提案された脚注段落(現在の段落27)は、先住民族に対する人種主義のひとつの現れであり、全体として削除されるべきである。
366 国家は、先住民族に対するあからさまでかつ固有の人種主義を特定し、根絶するために、自らの憲法、法律、法制度、政策を検討することを勧告する。
367 国家は、地表下の資源権を含め、先住民族の土地権および資源権を否定あるいは制限する法律や政策を撤廃し、自らの土地および資源の正当な所有者および管理者として先住民族を積極的に認識するよう勧告する。国家は、先住民族の水系、土地、領土、天然資源の荒廃と汚染、さらに、これらの水系、土地、領土、天然資源へのアクセスの剥奪や否定を終結させるため、即時に効果的な措置をとらなければならない。
368 国家は、権利や条約の不履行に対して適切な救済手段を提供するよう強く要求する。こうした不履行に対する救済手段は、関係先住民族の完全で対等な参加と合意のうえで決定される。こうした手段では解決が見込まれない紛争や係争は、適切な権限を有する国際機関に付託されるべきである。
369 すべての国家は、即時に先住民族の政治犯を解放することを強く要求する。国家は、また、先住民族の司法制度を承認し、国家の刑事、民事に関する司法制度における差別を終結させなければならない。
370 国家に対し、伝統医薬の発展のための機関を承認し、尊重し、確保すること、さらに、アクセス可能で効果的な多文化間保健制度を確保することを要請する。
371 国家に対し、すべての先住民族の文化に対する、反人種主義の意識、受容、寛容、多様性および尊重の価値を促進するため、反人種主義の教育およびメディア・キャンペーンに財政的資源を提供するよう求める。とくに、国家は、先住民族の歴史および文化に関する正確な理解を促進するために十分な努力を行うべきである。国家は、すべてのレベルにおいて、多文化間教育への完全なアクセスを確保しなければならない。
372 国家に対し、先住民族とくに先住民族女性のイメージへの侮辱を犯罪とするよう求める。国家は、先住民族にメディアへのアクセスを保証し、また、先住民族メディアの発展を支援すべきである。
373 国家に対し、先住民族の言語を承認し、こうした言語の生存、促進および継続を確実なものとするため、資源を提供し、プログラムを確立するよう求める。国家は、先住民族との合意に基づき、先住民族の自らの文化と言語を擁護する権利を促進する言語および教育政策を立案し、実施すべきである。
374 国家は、先住民族の水系、土地、領土、天然資源の荒廃と汚染、さらに、これらの水系、土地、領土、天然資源へのアクセスの剥奪や否定を終結させるため、即時に効果的な措置をとるよう強く要求する。環境レイシズムは、明確に、先住民族の伝統的な生活手段、文化的および霊的(spiritual)な慣行、および聖地や史跡に影響を及ぼしている。
375 先住民族の政府および国家は、先住民族の女性とともに、かつ、彼女たちの完全で対等な参加のもとで、以下の目的のために、彼女たちの市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利を促進するためのプログラムを発展させるよう勧告する。ジェンダーと人種に基づく不利益を終結させる。教育、雇用、保健および障碍、伝統的知識、司法、環境、生物多様性を含む生活のすべての側面において彼女たちに影響している緊急な問題にとりくむ。強制不妊政策および公的、私的領域における暴力を終結させる。
376 国家に対し、先住民族の土地と領土の軍事化および先住民族の強制移住を終結させることを要請する。先住民族の土地と領土の軍事化の憂慮すべき深刻な状況およびその結果としての市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利の大規模な侵害は終結させねばならない。国家は、軍事使用を通してすでに汚染された土地を回復する義務を負う。
377 先住民族に影響を及ぼす国家によってとられたすべての措置において、先住民族の完全で効果的な参加がなければならない。対等な立場での協議は、国家によって、影響を受ける先住民族に対して行われなければならず、こうした措置は自由で十分な情報に基づいた合意なくして実施されてはならない。
378 先住民族は、自由に自らのアイデンティティを表明し、必然的に自らの人権と基本的自由の尊重を伴う、自らの固有の権利をあらゆる形態の差別から自由に行使する。これらの権利への認識を普遍的なものにするための努力は、国連と米州機構の作業過程において、以下の権利を含む先住民族の権利に関する宣言の作成として進行中である。集団として固有の名称で自らを呼ぶ権利。国家の政治的、経済的、社会的および文化的発展に自由にかつ対等な立場で参加する権利。自らの固有の組織形態、生活様式、文化および伝統を維持する権利。自らの固有の言語および名前を維持し、使用する権利。自らが生活する地域において、自らの固有な法体系および経済機構を維持する権利。自らの教育、保健制度およびプログラムの発展に参加する権利。狩猟・採集・漁労権を含めて、自らの土地および天然資源を管理し、発展させる権利。自らの独自な司法管理制度を認めながら、対等な立場で司法制度にアクセスする権利。
379 先住民族に関する国連主催の世界会議の開催を要求する。
380 国連は、先住民族と連携して、世界の先住民族の国際一〇年の総括的な検証作業を完了するよう勧告する。
381 国家および金融・開発機関に対し、自らの政策および慣行がどのように先住民族に影響を与えているかを検証することによってグローバル化の負の効果を緩和し、自らの政策および慣行が人権基準に従い、以下の方法によって人種主義の根絶に貢献することを確実にするよう求める。十分な情報に基づく合意および先住民族の自治(self-government)の原則に従い、開発プロジェクトへの先住民族の参加を認める。国際的な金融機関を民主化する。多国籍企業に対して強制可能な行動規範を作成する。自らの物質的、精神的、文化的保全に影響を及ぼすあらゆる問題に関して先住民族と協議を行う。
382 国連は、フォーラムへの委員の指名における先住民族の作業過程を尊重し、先住民族に関する常設フォーラムを効果的に施行するよう勧告する。これは、以下のような方法で行われるべきである。
383 国連は、フォーラムがその任務を遂行できるよう十分な追加資金を提供すべきである。
384 経済社会理事会議長は、先住民族の参加を含めて、自律的な[常設フォーラムの]事務局を設置すべきである。
385 国連は、先住民族に関する特別報告者に完全な財政支援や資源を提供すべきである。
労働
386 人種主義にはすべてのレベルでの組織的対応を要する。こうした対応は、人種主義から影響を受けている人びとが中心的役割を担うことや影響を測定し監視する必要があることを認識しつつ展開されなくてはならない。こうした対応は、既存の国際規範、とりわけ、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、移住労働者権利保護条約、国際労働機関の第一一一号条約やその他の中核的労働基準、第一六九号条約(先住民および種族民条約)、第一四三号条約(移住労働者条約)、および基本的原則と権利についての宣言を批准し履行することを含む。
387 人種主義およびジェンダー差別と闘うための法的措置は、公正な賃金や、すべての労働者が労働法による保護に頼ることができることの保障を含んだ、雇用への権利に対して特別な考慮を払うことも含まなくてはならない。人種差別に関わる裁判において人種差別の挙証責任は、人種主義を理由に告訴される者が負うべきである。
388 とくに雇用の分野や、住居や教育、衛生などを含む社会的必須事業や社会サービスの分野において、より効果的な政策形成や戦略策定のためのデータ収集の改善を行うこと。こうした情報およびその結果としての政策の発展は地域的および国際的なレベルで体系的に共有されるべきである。
389 定型的であれ非定型的であれ、教育は職場や社会全体において人種主義を撤廃するために求められる戦略の礎のひとつである。教育戦略は、政府やNGOによる詳細かつ測定可能な計画を含まなければならない。
390 政府は、反人種主義教育を学校でのカリキュラムの中核に位置するものとして統合することを保証するため、財政資源を優先的に割り当てなければならない。これには、教員がその居住しているコミュニティの構成をより反映できることを保証するために並行してとられるべき措置も含むべきである。政府は、進捗を確認するための監視手続きを含む、包括的かつ測定可能な反人種主義行動計画を立てるよう学校に要求すべきである。
391 政府は、反人種主義教育のためのプログラムと発案を支援するため、NGOに対して財政資源を優先的に割り当てなければならない。こうしたプログラムは職場での教育プログラムを含めるべきである。
392 ダーバン行動計画とそのフォローアップの過程の中心部分は、変化の過程を監視する包括的な過程でなくてはならない。労働組合およびその他のNGOは、この過程の一部として統合されなくてはならない。したがって、政府はNGO、とくに人種主義から影響を受けている人びとの関与を保証するための機構を設置し、またこの機構は定期的活動報告を行うものでなければならない。
393 NGOは、世界会議のフォローアップが政府との討論を通じて設けられる仕組みによって調整かつ実施されることを保証するための機構を設けなくてはならない。
394 政府は、世界会議のフォローアップ過程においてNGOを支援するために資源を優先的に割り当てなければならない。その資源の配分にあたっては、人種主義から直接影響を受けている人びとを関与させるという必要性を優先しなくてはならない。
正規・非正規の移住者、移住労働者、難民、難民申請者、無国籍者、避難民およびその家族
395 現代の移住形態の複雑さを評価するために、対象ごとに分析可能な(disaggregated)統計を効果的に保存し、利用すること。
396 公務員、とくに警察、その他の法執行官、入管職員および空港や航空会社の職員などの入管関係者による、移民国家出身者、難民申請者、そして正規の在留資格をもたない人に対する差別的な扱いを撤廃すること。また、拷問、ひどい扱い、または人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に基づくいかなる暴力が生じた時にも、必要な情報や法的援助をこれらの集団の人びとに提供することを保証すること。
397 税関や入管職員も含め、移民や難民申請者などとの職務上の接触がある主要な専門官に対し、ジェンダーに敏感な人権教育および反人種主義に関する教育プログラムを行うこと。
398 難民、難民申請者、正規・非正規の移住労働者および移住者に対し、さまざまな権利や責任、救済手段などに関する教育や問題対処能力向上のための活動を行うこと。
399 在留資格の正規化の審査期間中の難民、難民申請者そして移住労働者の専門、資格、役職や学位を認めること。
400 外国で訓練や教育を受けた移住者、移住労働者、難民、難民申請者、無国籍者および国内避難民がもつ技術を活用し、向上させることができるように、正当に評価し、認めること。
正規・非正規の移住者、移住労働者およびその家族
401 正規・非正規の移住者、移住労働者およびその家族の移動や集会の自由、社会サービス、医療、教育、すべてのレベルにおける選挙権の付与も含めた政治参加の享受などの経済的、社会的、文化的、市民的ならびに政治的権利を保障すること。また、こうした観点から遅滞なく立法措置をとり、施策を実施していくこと。
402 非正規の移住者に対する正規化、合法化措置を検討し、促進していくこと。また、当面の間、生存権、拷問を受けない権利、裁判を受ける権利、身体の安全に関する権利、その他の教育、居住、医療(障碍を抱えている人に対する適切な配慮もあわせ)、最低賃金の保障、雇用、文化へのアクセス、恣意的な収容や略式退去強制の恐怖のない環境などの基本的権利を含め、非正規の移住者の人権や自由を傷つけることがないように尊重すること。
403 正規・非正規の移住者および移住労働者の組織化、組合作りを行っている当事者グループやNGO、とくに女性のグループに対し、そうしたグループ内の人権侵害をより効果的に訴えることができるように養成していくために、積極的に後援し、支援していくこと。
404 とくに性暴力やドメスティックバイオレンスなどの暴力や他の形態の虐待の被害を受けやすい女性の移住者の平等な権利を保護すること。また、人権侵害からの救済措置への無料かつ完全なアクセスを保証し、移民、移住に関わるすべての分野において、女性たちに独立した資格を認めること。
405 移住者や難民の子ども、とくに養育放棄されてしまった子どもたちが極めて人権侵害を受けやすいことを認め、両親から別離したもしくは責任のある大人が同伴していない子どもに適正な監護者を任命すること。さらに、受け入れ国において、移住労働者の子どもの市民権を認めること。
406 家族関係のもち方は多様であることを認め、家族の結合を目的とした入国を認め、促進させること。また、入国後は、社会的、経済的、文化的、市民的、政治的権利の完全な享有を含め、安定かつ独立した居住資格の付与を家族の構成員に対し保証すること。
407 外国人家事労働者に対し、あらゆる形態の差別、暴力、身体的、性的虐待からの保護、労働組合、職業・技能協会に関する諸権利などの人権を保障するため、ジェンダーに敏感な措置や施策をとり、発展させていくこと。これらの権利の救済手段に対する権利も含め、公正な報酬を受ける権利を保障し、実行すること。
送り出し国および受け入れ国の政府がその責任を果たし、同時に民間のブローカーやシンジケートなどの非国家の代理業者の活動を監視することができるような政策をとること。
難民、難民申請者、無国籍者、避難民
408 世界人権宣言に謳われているように、すべての人がもつ、迫害からの庇護を他国に求め、享有する権利を基準としつつ、またそれを遵守する難民および難民申請者のための対策を、とくに女性、子ども、障碍をもつ人びとならびに高齢者に注意を払いながら策定すること。また、難民および難民申請者に関する国内法ならびに政策が、難民の地位に関する一九五一年条約および一九六七年選択議定書の、その意図と目的、とくに非差別に関する条約第三条のそれに鑑みた完全かつ特定集団を排除しない実施に基づくこと、さらに「ノン・ルフールマン」の原則ならびに関連する地域的人権保護条約の完全尊重に基づくことを確保すること。
409 国内避難民に関する国連ガイドラインを実施し、各国政府が国際政府間機関および非政府機関と協力して国内避難民に関する適切な統計を提供するよう確保すること。
410 一九五一年条約および一九六七年議定書の精神に反するような、また次に掲げるような、難民が保護を求めることを妨げうる既存の国内法や政策を見直し、またそうした施策を導入することを控えること。すなわち、ビザ発給規定、条約の限定的解釈、難民の出身国および空港における審査官の配置、難民申請者の収容、航空会社による制裁、再入国許可および非自発的な送還措置、ならびに「安全な第三国」[への移送]という慣行。
411 立法および政策がUNHCR(国連難民高等弁務官)の法的解釈、政策指示(directives)、ガイドラインおよび勧告を十分に考慮に入れまたそれを遵守するものであることを確保し、UNHCRを一九五一年条約の正しい適用を確保する機関であることを認めること。
412 人種主義、人種差別およびエスニシティを動機とした迫害がとくに女性をターゲットとすることを認め、これを難民認定の根拠として認めること。また、女性が男性と同等にその子どもに自分の国籍を受け継がせる権利への制限を撤廃すること。
413 難民、難民申請者および国内避難民の経済的、社会的、文化的、市民的および政治的権利を尊重し、実施すること。
414 無国籍者の発生を抑え、関連する差別をなくすために、難民、難民申請者および国内避難民の子どもが出生後すぐに登録されるよう確保すること。
415 世界のあらゆる地域における難民の受け入れおよび支援提供において、負担の分担、資源の提供、ならびに責任の共有における体系だった構造的不均衡を正すための措置を即時とること。
416 世界のさまざまな地域の、また異なる難民集団への人道支援への対応の不均衡を支える隠然、公然の差別政策を終結させること。その際、難民キャンプ、シェルター、またはその他の居住施設の難民の特別なニーズに十分に配慮すること。一方、難民の出身国への統合または自発的再定住を可能にし、また難民認定を待つ間、他の国にいる家族と再会できるよう確保すること。
パレスチナ人およびパレスチナ
417 南アフリカ・アパルトヘイト体制に対して用いられたすべての手段を含むあらゆる手段を通じ、被占領パレスチナ領において、国際人道法、とりわけ一九四九年のジュネーブ条約第四規約の即座の施行を求める。あらゆる状況においてジュネーブ条約の遵守を確保するために、締約国の義務の完全実施のため、その即時招集を求める。またパレスチナ市民のための独立した、実効性をもつ国際保護軍の即座の展開、不法なユダヤ・イスラエル人入植地の即座の撤去、および植民地主義的軍事占領の完全な撤退を求める。
418 国連に対し、被占領パレスチナ領について出された、以下を含むさまざまな国連決議の実施の保証を要求する。すなわち、イスラエルの植民地主義的軍事的占領の(ガザ地区、およびエルサレムを含むヨルダン川西岸からの)撤退、パレスチナ難民の帰還権、難民帰還権および国連決議194によってパレスチナ難民の帰還が実行されるようになるまでの、国連難民高等弁務官事務所によるパレスチナ難民の保護。また、シオニズムの実践を人種主義的実践とした国連決議3379の再採択を求める。シオニズムの実践は、パレスチナ人の民族的アイデンティティを抹殺するため、ならびに、他の人びとを排除するユダヤ人国家としてのイスラエル国家の排他的本質を維持するために、被占領パレスチナ領(ガザ地区、エルサレムを含む西岸)における入植地の植民地主義的拡張を含む、他のもともと住んでいた人びとを追い出すためのあらゆる措置を通じて、また帰還と市民権に関する差別的法の適用を通じて、ある集団が他の集団を人種主義的に支配することを広めるものである。さらに、イスラエルにおける制度的人種主義およびイスラエル・アパルトヘイト体制の一部分である帰還法と市民権法を含む、あらゆる差別諸法の廃止を求める。
419 戦争犯罪、虐殺行為、民族浄化などの罪を犯した者、およびイスラエルおよび被占領パレスチナ領で行われ続けている人道に対する犯罪に値するイスラエル・アパルトヘイトの犯罪を調査し、法の裁きを受けさせるために戦争犯罪法廷の設立を求める。
420 学校や大学での教育教材、フィルム、出版物を含む情報を幅広く普及するために、国際市民社会ネットワークとともに活動している関連国連機関を通じ、人種主義的アパルトヘイト体制としてのイスラエルの好戦的な占領および組織的な人権侵害の根本原因についてさらなる意識喚起を求める。
421 イスラエルのアパルトヘイトおよびその他の人種主義的犯罪を監視・報告し、それらと闘う手段の実施を勧告するため、イスラエル・アパルトヘイト体制によってなされているアパルトヘイトおよびその他の人道に対する人種主義的犯罪についての国連特別委員会の設立を求める。
422 すべてのパレスチナ人は暴力的でテロリストであり人権保護に値しないとして、パレスチナ人を悪魔に仕立て上げ、非人間的に扱うことを含め、人種主義的なメディアによる情報歪曲、ステレオタイプ化、プロパガンダに対処するためのプログラムと制度の設立を求める。先住民族としてのパレスチナ人の地位、パレスチナ人に対する人権侵害の歴史、そして継続して行われている和平プロセスに関する事実と性格の歪曲などの、誤解を与える情報の訂正を求める。
423 国際市民社会、国連諸機関、実業界の世界的連帯キャンペーンネットワークを通じて、そして国家間、とくにEUとアメリカ合州国の沈黙の共謀を終わらせるため、南アフリカ・アパルトヘイトに対し行われたような国際的反イスラエル・アパルトヘイト運動の開始を求める。
424 南アフリカの場合と同様に、アパルトヘイト国家としてのイスラエルを完全に全面的に孤立させる政策の行使を国際社会に求める。これはすなわち、強制的、包括的制裁および禁輸、イスラエルと他のすべての国家の間のあらゆる関係(外交、経済、社会、援助、軍事協力、軍事訓練)の全面停止を意味する。南アフリカ政府に対し、過去に、アパルトヘイト体制との「建設的関与」という逆行的政策に対抗するにあたって自らがなした歴史的成功を念頭に置き、イスラエル孤立化政策のリードをとることを求める。
425 イスラエル・アパルトヘイト国家、そして民族浄化や虐殺行為といった人道に対する人種主義的犯罪の実行を支持し、援助し、支える国家を非難する。
チベット
チベットの状況に対する相互に受け入れ可能な最終的解決を見いだすために、中国政府が亡命中の一四世ダライラマ法王率いるチベット政府と交渉を開始するように中国政府に圧力をかけるよう、われわれはすべての国家に対し要請する。
また、チベット人の自己決定権を確認した一九五九年、一九六一年および一九六五年に採択されたチベットに関する国連総会決議の履行、およびチベットの外国による占領を解決するための機構創設をすべての国家に要求する。
中国政府がこの五〇年間にわたるチベット人の宗教的聖地、宗教、文化および環境の破壊に対する補償を始めるよう促すことをわれわれはすべての国家と政府に対し要請する。この補償過程には、材木、野生生物製品、鉱物資源およびチベットの工芸品など、チベットの天然資源の損失に対する補償が含まれるべきである。
宗教組織に対する厳しい制限および組織的な攻撃による宗教的自由の制限は、チベット人に対する「宗教浄化」という結果をもたらしている。
宗教的不寛容
426 国連の「宗教あるいは信条に基づくあらゆる形態の不寛容及び差別撤廃に関する宣言」の二〇周年を祝うにあたって「世界の精神的及び宗教的指導者のためのミレニアム平和サミット」を開催する国連事務総長のイニシアチブをわれわれは歓迎し、その結果をすべての国家が完全に履行することを期待する。
427 宗教的不寛容は、体系的差別ならびに人種主義をしばしば悪化させてきた。その結果、人種主義的暴力を生み、ジェンダー、ジェンダー・アイデンティティ、性的指向、階層および経済的地位、HIV/AIDSならびに健康関連の問題や能力(だけに限定されるものではないが)に基づく、複数の要因が交差する抑圧のシステムに帰結することになった。
428 すべての国家は、いかなる区別、排除あるいは制限、あるいは優先を伴わない、表現、思想、良心、宗教および信条の自由への権利を担保すべきであり、国家は、自己の宗教あるいは信条を信仰および実践するという個人ならびに団体の権利を保護し、その市民的、政治的、経済的、社会的および文化的生活に効果的に参加する彼ら/彼女らの権利を確保する義務がある。
429 すべての国家は、宗教あるいは信条の自由に関する国連人権文書の条件を満たす立法、政策および措置を採択し、それらの履行を確保し、宗教的マイノリティに対して差別的な国内立法を再検討する効果的な仕組みを採用するよう奨励される。
430 すべての国家は、この分野における権能のある国連機関と全面的に協力し、とくに宗教的不寛容に関する国連特別報告者を制約なく受け入れ、同報告者に全面的支援、マイノリティの宗教的共同体および個人へのアクセスを含む協力を提供することを奨励される。
431 国連人権委員会は、宗教的不寛容に関する特別報告者と協力して人権高等弁務官事務所内に宗教的不寛容に関する監視ユニットを設置することを要求されるものとし、そのようなユニットは十分に人員および予算が配分されるものとする。
432 すべての国家は、少数派の宗教的共同体および個人を周縁化することにつながりかねないゆえ、宗教的機関ならびに社会的および経済的生活の他の分野の政治化に対して効果的措置をとるべきであり、とくに女性の基本的人権が宗教あるいは信条の実践によって否定されないこと、あるいはいかなる形態でも制限されないことを確保すべきである。
433 すべての国家は、人種に関係する場合を含み、宗教的マイノリティのさらなる周縁化と歪曲へとつながる、メディア、教育カリキュラムおよび教科書における宗教的マイノリティの体系的ステレオタイプ化による宗教に基づく不寛容および差別を犯すことを慎むよう要請される。
434 宗教的共同体と指導者は、精神的および倫理的洞察において、また和解、癒し、および解放をもたらし、推進し、また歴史上および現在の不平等と差別を取り上げる教育への積極的関与において肯定的な役割を果たすことが求められる。
ロマの人びと
435 ロマの人びとの集団的権利を保護し保障するために、たとえばロマの権利に関する国際憲章のようなロマの権利に関して法的拘束力をもつ文書を起草し、加盟国に採択するように提案するようわれわれは国連に求める。
436 選挙によって選ばれたロマの代表に世界の他の国々と対等な立場で国連での議席を認めることによって、関連する国際および政府間組織に十分なロマの代表者を規定するよう、われわれは国連に求める。
437 選挙によって選ばれたロマの代表に国連での議席を認めることによって、関連する国際的、地域的および政府間組織に十分なロマの代表者を規定するよう、われわれは国連およびその他の地域的組織に勧告する。
438 ロマに対する人種差別を禁止する国内的な立法を、再検討、採択、強化、および施行すること、ならびに、これらのコミュニティのメンバーを保護するとともにそのような慣行を予防し処罰するために、雇用、教育、住宅、社会保障、そして保健サービスにおけるロマのためのアファーマティブ・アクション政策を採択し実行するように、われわれは政府に要請する。さらに、政府が人権に関する義務を果たすことを確保するために、地域ネットワークを備えた、適切な監視団体が設立されなければならない。
439 二国間および多国間条約の主要なトピックのひとつとして、ロマに対する人種差別との闘いという課題を含めるようわれわれは国家に対し勧告する。
440 選挙で選ばれたロマの代表の機関として常設のロマ・フォーラムをその管理下に設置することをわれわれは国連、欧州審議会、米州機構に対し求める。同フォーラムは、世界のロマの状況およびロマ問題にとりくむ国際基準の実施に関して、監視し報告を行うものとする。
441 われわれは、人種差別撤廃委員会の一般的勧告???「ロマに対する差別」を歓迎し、政府にこの勧告を実行するように求める。
442 制度上の発展と中央および地方行政への正式な参加を保証し、ロマの自由な移動の権利を保障し、ロマの文化的アイデンティティの保護と発展を支援し、移動生活様式を保っているロマのために、あらゆる必要な設備を備えた十分なキャンプ場を提供することを、われわれは政府に求める。
443 アイデンティティを肯定するような教育機関を設立し、主流派の学校においてロマの歴史、教授言語としてのロマ語、および民族性を肯定する教育プログラムを促進することによって、ロマの子どもたちおよび若者の肯定的な自尊心、内在化した烙印の分解、そしてロマのアイデンティティ認識の十全な発展のために、具体的対策をとり、支援するよう、われわれは政府に求める。
444 われわれは、以下の手段により良質な教育を受ける平等な権利をロマの子どもたちに与えるよう政府に要求する。学校教育システムの人種隔離の廃止。ロマの親たちが教育過程および学校における決定に参加することができるようにすること。ロマの教師および調停者を養成し雇用すること。非定型的教育および遠隔教育、野営地におけるインターネット授業を含む、より繊細で、包括的、かつ柔軟な教育システムおよび学校カリキュラムの開発。
445 教科書および学校カリキュラムにロマの歴史を組み込むために、十分な資金援助の用意を含む異文化間教育への全面的な援助をするよう、われわれは政府に求める。
446 歴史から教訓を得、ロマの奴隷状態および第二次世界大戦中のロマに対するドイツのホロコーストを認め公然と非難するよう、われわれは強く政府に求める。また、これら人道に対する罪に責任を負う国家にも、十分に責任をとり、そのような政策や慣行の犠牲となったロマ社会や個人への公式な謝罪と即時の十分かつ公平な賠償と補償を与えるように要請する。
447 民族浄化および戦争地帯である旧ユーゴスラビアへのロマの国外追放というドイツの政策を直ちにやめさせるために、その影響力を行使するようわれわれは国連に求める。
448 ロマに対するジェノサイドおよび民族浄化が行われている国々において、関係する勢力がそれをやめるように即時要請することを、われわれは国家および政府間組織に求める。一九九九年の初めに、ロマは、アルバニア系の人びとによって、コソボから民族的に浄化された。コソボは、ホロコースト以来、ロマにとっては最悪の大惨事である。
トラベラー
国家および政府はトラベラーを標的とする広範な差別や迫害を根絶するために、特別な注意を払い、公の当局とトラベラーの代表者間のパートナーシップのもと、さまざまな機構やプロセスを設置することなどを通じて、即時かつ具体的な対策をとるべきである。
性的指向
449 既存の人権諸条約を改正し、自己決定による性的指向およびジェンダー・アイデンティティの尊重、保護、促進、実現を明示的に組み込むこと。市民的および政治的権利、経済的、社会的および文化的権利のいずれの権利に関しても、すべての政府が負うべき四つの核となる義務をすべて実施するための措置を速やかにとること。これらの権利を尊重すること、すなわち、国家が直接に人権侵害を行わないこと。これらの権利を保護すること、すなわち他の締約国によって人権が侵害されないよう国家が保証すること。寛容ならびに権利に関する意識を促進すること。これらの権利を実現すること、すなわちすべての人がこれらの権利を自由に、完全にかつ平等に享有できるような条件と資源をもてるよう確保すること。
450 普遍的に認識されている人権規範に従って国際賠償条約を発展させること。それによって、人権侵害、とくに差別の犠牲となったすべてのグループおよび個人が、人種、ジェンダー、性的指向、ジェンダー・アイデンティティ、年齢、宗教、文化、言語、障碍、経済的地位、政治的意見または民族的出身にかかわらず、賠償への権利をもてるようにすること。
451 各国の憲法の条文に、非差別の保証と、人種、年齢、ジェンダー、性、ジェンダー・アイデンティティ、性、エスニックまたは社会的出身、性的指向、障碍、宗教、良心、信条、文化、言語および出生にかかわりなく、すべての人による、個人としての、また集団としてのあらゆる権利の享有を定めること。
452 反差別政策は、次にあげる意思決定のすべての段階において盛り込まれ、不公平な差別と闘うことを主流とする原則に基づいて行われるべきである。・ガイドライン・対象となる集団の参加・積極的差別是正措置・実施メカニズム・監視および影響の評価・政策の見直し・測定可能な目標・資源の分配・透明性のある説明責任メカニズム
453 ジェンダー、性的指向および文化の多様性に敏感な教育プログラムを含む、HIV/AIDSの予防に関するプログラムを普及させ、強化すること。
454 文化的、人種的および性的多様性を含み、また、諸民族、諸共同体、諸国家の発展における女性の歴史的貢献を取り戻すことのできる教育政策を追求すること。
455 ILO第一一一号条約を改正し、性的指向を差別からの保護理由として盛り込むこと。
456 性的指向ならびにジェンダー・アイデンティティに基づく差別に関する国連主催の世界会議を開くこと。
457 性的指向ならびにジェンダー・アイデンティティに基づくあらゆる形態の差別を撤廃するための宣言を起草すること。
458 同意に基づく同性間関係を有罪とする法律を撤回すること。
459 影響を受けているすべての人びとおよび集団の参加と代表によって創設し、運用すること。
460 すべての締約国は、ジェンダー、ジェンダー・アイデンティティまたは性的指向に基づいて迫害されている難民および難民申請者を認め、保護するための入管法や政策を発展させること。
人身売買
461 セックスツーリズムの成長に対し自らの責任を問い、人身売買や性的搾取を防止するための措置をとり、効果的な法的救済を促進し確保することをわれわれは政府に求める。
462 人身売買が及ぼす長期的な精神的な傷を認識し、被害者に対するカウンセリング、教育、保健、自発的な本国への帰還/在留資格と生計維持を含む支援をするために財源をあてることをわれわれは政府に求める。
463 人身売買された人が複合差別を経験することを認識し、そうした人びと、とりわけ周縁化された集団の女性と子どもが、保護という点において異なる扱いを受けていることを取り上げるよう、われわれはすべての国と政府に求める。
464 われわれはすべての国家と政府に対し、人身売買に関するあらゆる国際・地域条約を批准・実施するよう求め、国内法を制定・実施し、被害者の同意があったかどうかに関わりなく、買春者を含む人身売買や売春から利益を得ているすべての関係者を特定し、起訴することを求める。
465 人身売買における軍隊、とりわけ米軍基地と国連平和維持軍の責任を認識するようわれわれはすべての国と政府に求める。
466 斡旋業者のような非国家機関の活動を制限し監視する政策を確立することをわれわれはすべての国に求める。
467 人身売買を禁止するために必要な政策と立法を実施すること。これらの政策は、・地域政策として発展させるべきである。・施行のための適切な資源配分を行うべきである。・性的搾取・債務奴隷と搾取的労働条件のもとにある女性と子どもにとくに注意を払うべきである。・人身売買の犠牲者を援助すべきである。・人身売買のシンジケートに対して厳しい懲罰措置を講じるべきである。・国連国際犯罪防止条約の人身売買に関する議定書および(子どもの性的搾取を扱う)ストックホルム行動のためのアジェンダを批准すべきである。
若者、子どもと女児
468 学校カリキュラムの中に差別の交差的分析を含む反人種主義的内容を必須のものとして導入し、教師が反人種主義と自己および相互尊敬をすべての人種・エスニック集団の中で促進するよう、われわれはすべての国と政府に求める。さらに、文化の多様性の受容と人権の尊重を促進しながら、一般の意識向上を促進するために、子どもや若者、その保護者や家族と協議し、現在行われている教員研修に彼ら/彼女らを参画させ、その人種平等の側面に影響を与えるようにすること。
469 子どもや若者に影響を与える事柄に関し、積極的に対象ごとに分析可能な(disaggregated)、ジェンダー別の詳細な統計的データを集めることによって、国レベルでの人種・カースト差別が子どもと若者に影響を与える問題に関する報告を改善させるよう、われわれはすべての国と政府に求める。国家はまたその過程における子どもと若者の関与を支援すべきである。加えて、国家は国内・国際人権機構とNGOに対し同様の行動をとるよう奨励し、そうした情報を人種差別撤廃委員会ならびに他の関係する条約機関への報告に含める(および子どもと若者により重点を置く)べきである。
われわれはすべての国に対し、一八歳未満の子どもの軍隊への入隊を禁じた子どもの権利条約追加議定書を批准し、すべての国および国連がその実施を確保することを求める。
470 政府に、子どもや若者が、市民権を失うことなく、また社会的強制や刑罰、軍の強制を受けることなく、どんな種類の軍事分野にも自主的に参加する権利として、良心的兵役拒否者になることを認めるよう求める。
471 国連青年ユニットなどの現在の機構を活用し、すべての子どもや若者の才能を奨励し、開発し、保持するような、効果的な新しいネットワークまた既存のネットワークを創出すること。国家は、若者が世界会議の五年間にわたる再検討の策定と実施に参加するにあたって多大な支援を得られるよう、また、国際・国内の両方のレベルで、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容の撤廃に寄与するよう奨励し、資源を提供し、支援すべきである。その際、子どもと若者の体験の価値を強調し、すべての子どもと若者が国際的な連帯の絆を強めるため世界中の仲間とともに活動する交流プログラムを奨励すべきである。
472 国家、政府およびさまざまな共同体・集団に対し、二〇〇〇年一〇月にアジスアベバで開催されたアフリカにおける人種・エスニック紛争予防に関する専門家の地域セミナーの勧告を実施することを求める。とりわけ女児が家族の中で生き、健康に成長し、保健サービスへのアクセスをもち、良質な教育を与えられ、共同体の中で積極的役割を担う権利の実施に特別の注意を払うことを求める。
473 すべての国家と政府に対し、学校カリキュラムにおいて、女児の特殊性に関する論及を含むジェンダー的アプローチを開発することを求める。
訳注*訳文中の[ ]内の文章は、原文にはなく、訳者が補ったものである。
(1)ジェノサイド(genocide) ナチスによるユダヤ人虐殺・迫害から生まれた概念で、特定の集団に対する意図的な殺害や迫害。ジェノサイド条約によると、ジェノサイド(「集団殺害」)とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもって行われる集団構成員の殺害、重大な肉体的又は精神的な危害、全部又は一部に肉体の破壊をもたらすために意図された生活条件を集団に対して故意に課すること、集団内における出生を妨げることを意図する措置を課すること、集団の児童を他の集団に強制的に移すこと、である。 条約によれば、国家はこれを防止し、処罰する義務がある。近年国連により特別に設置されたユーゴスラビア、ルワンダの国際刑事裁判所にこの犯罪が起訴され、有罪判決も出始めている。また現在設立されつつある常設の国際刑事裁判所でもこの犯罪を裁くことができることになっている。(前田朗、大谷美紀子、小野山亮)
(2)反ユダヤ主義(anti-Semitism) 反ユダヤ主義を“anti-Semitism”(「反セム族主義」)と呼ぶことがあるが、アラブ人もセム族であるため、別の形態の反ユダヤ主義(anti-Semitism)に苦しんできた。「反ユダヤ主義(anti-Semitism)」という語は、文字どおりには、反(anti)セム族(Semitic)という意味である。セム族とは、言語上の分類で、アッカド語、カナン語、フェニキア語、ヘブライ語、アラム語、アラビア語、エチオピア語などを話す人々を含む。そのため、この段落は、ユダヤ人以外のセム族に対する差別を扱っている。これはアラブ人差別、さらに、アラブ人がイスラム教徒である場合にはイスラム排斥といった形で現れる。(窪誠)
(3)「ナショナル・マイノリティ」「エスニック・マイノリティ」(“national
minority”“ethnic
minority”) どちらも一国内、もしくはある領域内における一定の少数者集団を表す言葉。どちらの用語も、翻訳のみならず、原語においても、統一的解釈がいまだ定まっていない。国際連盟のもとでは、“national
minority”という語の“national”は、「国家(nation)」を示唆するおそれがあるので、それを回避するため、“racial(人種的),
religious(宗教的)or
linguistic(言語的)minority”に取って代わられた。国際連合のもとでは、ユネスコにおいて、「人種(race)」という概念が生物学的に存在するのかという批判が起こったため、“racial”の語は、“ethnic”に取って代わられた。このように、“national”“ethnic”という語の解釈は歴史的にも多様なので、「ナショナル・マイノリティ」「エスニック・マイノリティ」とそのままにしている。(窪誠)
(4)人種別プロファイリング(racial
profiling) 警察が捜査対象を選ぶときに、人種、エスニシティ、出身国などを基にすることを指す。たとえば、スピード違反などの検挙の際にどの車を止めるか、麻薬捜査などにおいて街頭で職務質問する際にだれを止めるか、といったときに、容姿に基づく人種、民族性などを判断基準にすること。警察に限らず、主に行政・司法の分野で同様の人種別データ収集が行われる場合などもこう呼ばれる。特定の「人種」がターゲットにされるときに、その集団への偏見が大きく作用している。(藤岡美恵子)
翻訳=ダーバン2001監訳=上村英明、藤岡美恵子翻訳者(50音順)石川えり、池田佳代、伊藤衆子、伊藤美詠子、上野さとし、上村英明、大河原康隆、大仲千華、小澤あづみ、小野山亮、川本和弘、喜久里康子、熊本理抄、小西裕美子、佐久本香子、鈴木健、苑原俊明、田辺勝彦、谷口真由美、坂東希、藤井一成、藤岡美恵子、藤沢朋実、藤本伸樹、前田朗、松山哲博、村上正直、山口貴士
・この文書の著作権はダーバン2001およびその実行委員が所有する。・この文書の自由な複写・配布・利用を許可する。またそれらにより対価を得ることも許可する。・この文書の修正を許可する。修正されたものは、原本と異なるということを示さなければならない。・この文書を再利用するときは、この著作権に関する文章を削除・改変してはならない。
雑誌『部落解放』2002年5月増刊号(502号)「反人種主義・差別撤廃世界会議と日本」 (解放出版社発行、A5判・416頁・定価1,000円+税)所収。書店および解放出版社にてお買い求め下さい。解放出版社:〒556-0028 大阪市浪速区久保吉1-6-12 電話06-6561-5273
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