NGOや国家人権委員会・機関、国連システム(人種差別撤廃委員会、国連特別報告者、人権理事会など)と協力して、自治体政策の影響を評価するために人種主義と差別に関するデータの収集、達成可能な目標の構築、共通指標の設定などに着手しさらに発展させるとともに、地域の視点から国内および国際的な報告システムに寄与するために、「情報拠点」としての役割を果たします。
行動例:
a)研究者・研究機関、市民組織およびその他関連機関がすでに提供している人種主義および差別に関するデ-タの分析と評価を、自治体が管轄するすべての分野において、システム化する。
b)収集したデータと情報を定期的に分析し、地域レベルで調査を実施し、自治体当局に対する具体的な勧告を作成できるよう、研究機関や地域社会のネットワーク(例、都市貧困層、組合、他)とパートナーシップを結び、それぞれの領域における人種主義と差別に関するデータと情報を収集する。
c)人種主義と差別の動向や自治体の政策の影響を評価するために、達成可能な目標を定め、共通の指標を使用する。
d)現行の政策や慣行における弱点を積極的に特定するため、研究者と政策決定者の継続的な対話の場として研究協議会を設置する。
自治体の政策決定者および住民に対して、人種主義と差別の存在に関する意識啓発を行います。
行動例:
a)国家人権委員会と緊密に協力しながら、社会的弱者集団の状況を分析的に把握できるようにする。
b)市内にある様々な協議機関(例、市議会、青年会議所、高齢者協議会、人種主義や差別問題に関する様々な委員会、そして民族マイノリティ、女性、不利益な立場にある人々をはじめとする諸団体の適切な代表者)の課題に人種主義と差別を盛り込む。
c)自治体職員、警察官、軍隊、議員、裁判官、さらには必要に応じて、市民団体、首長や村議会を対象にした啓発や意識向上のプログラムを開催する。
d)人種主義や差別の撤廃に貢献するメディアや、学校新聞などのメディアを通した意識向上活動に賞を授与する。
e)市の住民や政策決定者の意識化と動員を促すために様々な趣向をこらして行事を開催する。(例、3月21日の国際人種差別撤廃デーに)
f)小学校から高校まで、児童や青少年の意識を向上させるために、人種主義と差別に関する課題をカリキュラムに統合するよう学校に奨励する。
多様でインクルーシブな社会における調和的な関係に向けた展望や関心を共に語り合う人びとや組織のネットワークを発展、かつ/あるいは強化します。
行動例:
a)差別の状況を定期的に評価し、差別的な政策、規制、条例そして予算を見直すために、集団および個人(例、青年、NGO、コミュニティリーダー、警察、司法関係者、他)との協議メカニズムを自治体内に設ける。
b)人種主義的行為や憎悪犯罪あるいは憎悪発言を特定して管轄当局に通報するために、国家人権委員会や市民団体と協力して、モニター活動と迅速な対応ができるネットワークあるいはシステムを設置する。
c)自治体の政策決定のプロセスに地域社会が確実に関れるよう、地域レベルの協議会を定期的に開催する。
d)人権委員会や人種関係委員など、既存のメカニズムと協力して、相違を解決したり、差別事件に対処する仕組みを作る。
人種主義と差別の被害者およびそれらのターゲットとなる集団を認定し、支援するとともに、人種主義と差別に対して自らを守るための能力強化に寄与します。
行動例:
a)人種主義および差別の被害者やその標的にされる集団が、それらに対抗する取り組み(相談やモニター活動等)、救済および予防措置を求めて自ら組織できるよう支援する。
b)地域住民による差別の訴えに対応できる正式な機関(オンブズマン、反差別ユニット等)を市当局の中に設置する。
c)文化的に多様な集団のアクセス、平等および参加に関して市当局に助言できる立場にあり、地域社会内の関係と発展に特化した委員会を設置する。
d)人種主義や差別の被害者に対し、法的支援と精神的支援を提供しているコミュニティ組織や地元の組織を支援する。
とりわけ行政サービスの利用者と提供者とのあいで、参加型手法による相談を通じて、住民の権利と義務、保護や法的選択肢、人種主義的・差別的行為に対する処罰などに関して、住民によりよい情報を確実に届けます。
行動例:
a)住民としての権利、多民族・多文化社会の義務、市当局の差別撤廃の取り組みに関する情報、さらには人種主義的あるいは差別的行為や言動に対する罰則に関する情報を載せたパンフレット、公報、視聴覚資料等を作成し、幅広く配布する。
b)人種主義や差別の言動の被害者や目撃書が当局や支援グループに連絡をとれるよう、書式や連絡方法を公的場所に置く。
c)平和、安全、共生に関するテーマについて議論する機会を提供するために、既存の機関、機構さらには市民組織と協力して、定期的に、公開市民討論会を開催する。
d)地元のラジオや新聞と協力して、援助を必要としている人に役立つ情報を提供する。
e)人種主義や差別に関する情報を提供したり、それらをなくす取り組みにNGOが従事
できるよう支援する。
f)国連人権高等弁務官事務所、ユネスコ、および国内の関係機関と協力して、国語に翻訳された主要な国際人権文書を集めて、印刷物にしたり、インターネットで見れるようにする。
g)外国籍の住民からなる諮問委員会を作り、それら住民の関心ある問題を議論できるようにする。
h)自治体が提供する社会福祉サービスに関して、地元の雇用者および被雇用者に情報を提供する連続講座を開催する。
i)住民の意識高揚と社会参加を促す多様なプログラムで、象徴的な国の祝日や国際デー(例、3月21日の国際人種差別撤廃デー)を記念する。
j)相互尊重や平等のメッセージを一般の人々に届ける催しを、地元の音楽・舞踊グループなどと協力して行う。
都市は、機会均等を保障する雇用者であるとともにサービス提供者であることを約束するとともに、この目的を達成するために計画、モニター、トレーニング、および開発において文化的に多様なコミュニティの人びとのニーズを考慮することに務めます。
行動例:
a) 正確なデータベースに基づく適切な政策や実践の進捗状況を報せるために、定期的な多様性監査を実施する。
b) 新しい取り組みを始めれば、その影響やニーズを評価する調査を行う(反差別チェックリスト)。これを定期的に行えるよう、簡単な手順を考え出す。
c)自治体職員の学習と養成のニーズを明らかにして、次ぎのような目的をもった研修の機会を入門編と上級編に分けて提供する:民族的、文化的多様性を処理できる能力の強化;異文化間のコミュニケーションの促進;反差別の姿勢で業務を遂行する力を養う;そして、文化的に敏感で適切な行政サービスを提供し、人種主義的で差別的な行為に対して明確な手順で対応できるよう、必要な能力を身につける。
d)人種主義や差別を受けている集団から採用される自治体職員の人数、とりわけ、管理職レベルの人数を増やすために、是正措置を実施する。
e)自治体職員として雇用することを目標に、対象集団の青少年向けの奨学金プログラムや研修プログラムを設置する。
必要であれば、市当局の権限を積極的に行使して機会均等な雇用や労働市場における多様性の支援を促進するとともにモニターします。
行動例:
a)自治体が地元業者と結ぶ契約に反差別の条項を含める。
b)商工会議所や小売店協会などの関連機関と連携して、人種主義との取り組みを誓い、差別被害の苦情を処理するメカニズムの実施に積極的な地元企業、商店、専門業者の認定を発行する。
c)雇用、住居、サービス提供におけるインフォーマル・セクターを理解して受け入れ、その保護、規制、さらに適切ならば再建の機構、計画あるいは事業を作り、インフォーマル・セクターを調査している研究機関と協力する。
d)小規模貸付、助成金、研修およびモニター活動を促進するために、企業とパートナーシップを組んで、対象の集団内における実現可能な経済活動を支援する既存の仕組みと協力する。
e)国連のグローバルコンパクトやCSR(企業の社会的責任)の運動に参加している企業等とパートナーシップを組み、市が進める反人種主義政策を支援し、経済的戦略と経済的資産としての多様性を推進する。
f)職能団体や労働組合と協力して、従業員が文化的に配慮した適切なサービスを提供できるようになる学習や人材育成プログラムを推進する。
g)許認可業務(例、アルコール販売など)は平等で差別のない営業方法をとることを条件に認めるようにするとともに、遊興施設が差別のない業務を行なっているかどうかを点検する調査を実施する。
あらゆる形態の教育にアクセスするうえでの差別に対抗するとともに、教育へのアクセスの享有を強化します。また、相互の尊重、寛容、理解、異文化間対話などの教育を提供することを推進します。
行動例:
a)社会的弱者集団の子どものために学校に補助金を出したり、特定のケースについて教育省に提言したりして、アファーマティヴ・アクションを通した教育の機会均等の保障を図る。
b)尊重、相互寛容、人権といった普遍的価値に加え、適切な国民的価値を教える教材(物語、神話等)を集めて配布する。
c)教育のアクセスにおける人種主義や学校における人種主義をなくすため、市当局が運営する教育・研修機関並びに市内にある私立学校に向けて、反差別憲章や制度的な義務を制定する。
d)自治体の図書館や博物館を人権や文化的多様性などに関する問題の資料室に位置づける。
e)青少年、学校、地域社会の間で、異文化間対話と相互尊重を高める取り組みを推進する。例えば、地元の学校に対して「平等な学校」賞を設置したり、最も優れた学校での取り組みに対して「市長賞」を授与する。
f)相互寛容、人間の尊厳、平和的共存、異文化間対話に関する教材(教科書、指導書、視聴覚・マルチメディア教材、キット)の作成を支援し、生徒、教員あるいはトレーナーが多民族、多文化、異文化交流の環境で活動したり、そのような多様性の圧力や機会を上手く利用する力を強化に努めるとともに、それらを使って学校管理者や教員の研修を行なう。
態度、信仰、慣習、価値、共有するアイデンティティ、儀式、習慣などの傾向をはじめとする多様なコミュニティの文化を尊重します。文化プログラムにおいて、集団的記憶に関して、また市当局の公共空間において、住民の多様な文化的表現や遺産などを公正に代表し、促進していくことを保障します。また、国際人権基準にしたがって、コミュニティでの生活において異文化対話を促進します。
行動例:
a)文化的に多様なコミュニティ出身のプロと協力して、それらコミュニティの経験や願望を表現できる視聴覚資材(特別作品、ドキュメンタリー、テレビ番組など)の制作を奨励する。また、このような資材を地域、国内、海外に広く配布する。
b)市の住民の多様性を表わす文化的な事業や会合(イベント、文化センター、学校等)が定期的に開かれるよう支援し、それらを市の公式の計画にとりいれていく。
c)差別されている集団が果たした貢献を認め、それらを市の歴史やアイデンティティにとりいれるために、それら集団に関係する場所に名前をつけたり、関係する出来事を記念する行事を行なう。
d)宗教指導者と政治指導者の間の対話を進める一連の集まりを開催し、様々な民族グループを一堂に集め、文化的多様性と宗教的寛容を促進する。
e)特に若者を対象にした異文化間の対話プログラムを主催する。
人種主義者による扇動および関連する暴力に対処し、和解に導くようなメカニズムを支援し、確立します。
行動例:
a)状況を分析し、コミュニティにアドバイスをし、対応する前に適切な調査を行なう専門家(被差別集団の出身者を含む研究者や実践家)のリストを作る。
b)人種犯罪や集団間の対立の初期段階において対応を調整する責任を帯びた、有識の職員からなる諸省庁間のグループを設ける。
c)関係する局や機関(学校、青少年施設、市民団体等)から選出された人々に、人種犯罪や紛争処理のトレーニングを提供する。
d)ケーススタディや支援団体のリストを掲載したマニュアルを作成して配布する。
e)人種主義や差別の被害者、あるいは差別を告発した人々に、法的、心理的サポートを提供している地元のコミュニティや団体を支援する。
f)必要な場合に仲裁に入れるよう、法律家(例、弁護士会)、国家人権委員会、人種関係委員会などと協力する。
1.少数者など社会的弱者を排除せず、あらゆる人びとの平等な参加を保障する社会を意味する。
(仮訳・ヒューライツ大阪、部落解放・人権研究所)
Ten-Point Commitment for an Inclusive Society in Asia and the Pacific (英語はUNESCO)