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FOCUS March 2015 Volume 79

FOCUS Vol. 79 日本語要約

特集:死刑

中央アジアの死刑

刑罰改革インターナショナル(Penal Reform International)

 中央アジアではトルクメニスタン、キリギス、ウズベキスタンがそれぞれ順に1999年、2007年そして2008年に死刑を廃止した。カザフスタンとタジキスタンでは2004年にモラトリアム(執行停止)を宣言した。カザフスタンでは2014年に刑事法の改正が行われたが、死刑制度は残されたままである。タジキスタンでも現在刑法改革の作業が始まっており、2013年の世論調査で67パーセントが死刑廃止を支持していることから、制度廃止に期待が集まる。

 そのため中央アジアにおいて今最も厳しい刑は無期刑である。これは時には仮釈放なしの終身刑になる場合もある。地域では、無期刑の適用の増加、不均衡な刑の長さ、そして極度に懲罰的な刑の性質が、さまざまな問題を引き起こしている。刑が確定するまでの手続きは旧ソ連時代の制度を引き継いだままであり、検事が強大な権限をもっている。調査官による裁判前・中・後の虐待や拷問の申し立ても深刻な問題であり、拷問で引き出した自白に頼る裁判が続いている。

 無期刑囚に対する過酷な収監の条件やリハビリテーションプログラムの不在は懲罰的な性質に拍車をかけている。公平な裁判の確保のため、地域の政府および市民社会組織は刑法や刑務所改革に積極的に関わっているが、無期刑囚にはその効果がなかなか届いていない。

 

台湾 死刑執行は政府失策の隠れみの

林欣怡(死刑廃止のための台湾連合代表)

 2014年3月17日、台湾と中国との「海峡両岸サービス貿易協定」の批准承認を強行に通過させようとした与党国民党の動きに反対して多数の学生や市民が立法院を占拠した。23日間続いた一連の抗議活動はひまわり運動と呼ばれた。その直後の4月27日には、台北市駅前に5万人の市民が集まり、原発によるエネルギー政策に反対の声をあげた。次の日、デモ隊は放水銃により解散させられ、数人の負傷者が出た。しかし、その一方で、4月29日、羅瑩雪法務部長は5人の死刑囚の刑の執行に署名した。

 台湾では2000年、総統選挙で55年続いた国民党から民進党に政権が移譲した。陳水扁総統は死刑制度の段階的廃止を宣言した。2006年からは事実上の死刑モラトリウムが始まった。2008年の総統選挙で政権は馬英九の国民党に移った。2009年、国連に加盟していない台湾は、自由権規約と社会権規約の国内実施のための法律を通過させ、両規約を「批准」した。国内の人権活動家や死刑廃止論者は「批准」を歓迎し、台湾はアジアにおける次の死刑廃止国になると期待した。

 しかし、2010年4月30日、4年続いたモラトリウムを破り、法務部長は4人の死刑囚の執行に署名をした。それに続き、2012年には5人、2013年には6人、2014年には6人の死刑囚が処刑された。国際人権規約の批准で執行数が減少するどころか、執行が再開され、毎年その数を増やしている。

 2010年以降の死刑執行は大事件や政策の失敗などで政権支持率が落ちたときに行われてきた。死刑執行のニュースに注意を向けさせ、政権への不満や不信を緩和させようとする政府の意図に人びとは気づき始め、国家による暴力が国民生活をさまざまな形で脅かしていると感じている。

 (注:本誌No.112・2013年11月発行号の「台湾の国際人権規約『批准』と規約『審査』-国際人権規約をめぐる近年の動向-」(武田美紀子)参照。台湾は国連に批准書を送付するも、「中華人民共和国が唯一の合法代表である」との理由で、国連から受け取りは拒否されている。)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/sectiion3/2013/11/post-227.html

 

マレーシアの元政府高官などがイスラム法に関する公開討論を求める

 マレーシアの元政府高官など25人が、公的な宗教機関がイスラム法の法域を超えて権限を行使していることに懸念を表明する書簡を2014年12月9日にDaily Star紙(マレーシア)に寄稿し、公開討論を求めている。書簡には、さまざまな領域におけるファトワ(イスラム教の勧告)の発布は憲法違反であり、民主的なイスラム教の合議のプロセスを侵していること、教唆扇動禁止法が反対意見をもつ人びとを黙らせていることなど、現状への懸念を示している。また穏健なイスラム教徒であるこの25人は、控訴院がトランスジェンダーの女性が性同一性に基づいた服装をする権利を認めたことに対して、法務担当相が「イスラムに対する攻撃の新しい波だ」と非難したことに懸念を示している。

 

地域における人権教育の促進とAPCEIU

 UNESCOの「国際理解教育のためのアジア・太平洋センター」(APCEIU)は韓国政府の支援を得て2000年にソウルに設立された。近年では、国連グローバル教育ファーストイニチアチブ(GEFI)と連携したプログラムに取り組んでいる。APCEIUは2001年より毎年集中ワークショップを開催している。2014年、平和の文化に対する視点の再構築と実践的なスキルの強化を目的として、地球市民育成をテーマにした集中トレーニングがソウルで開催された。ヒューライツ大阪はAPCEIUの設立当初より人権教育プログラムの発展に協力しており、2000年および2003年にはAPCEIUとの共催で人権教育に関するワークショップや会議を開いている。ヒューライツ大阪は、今後もこの取り組みに貢献していく。

 

第14回非公式ASEM人権セミナー:ビジネスと人権

 2014年11月18日-20日、ベトナム・ハノイにて、アジア欧州会合(ASEM: Asia-Europe Meeting)がビジネスと人権に関する非公式のセミナーを開催し、47のASEMメンバー国・機関から政府関係者や民間専門家ら125人が参加した。このセミナーでは、「ビジネスと人権に関する国連指導原則」(UNGP)を国内および地域レベルの政策策定や実践の基本的枠組みとすることを共通の認識とし、企業による人権侵害から市民を守る国家の責務や企業による人権実施の責任などに関して、集中的に議論を行った。そして、討議の最後に、ASEM加盟国への10項目の一般的勧告を採択した。