特集:承認せず
世界の先住民族はそれぞれの国の政府に対して、先住民族として生きる権利とその他すべての権利の享有を認めるよう求めている。アジア太平洋を見れば、多くの国々ではそれに応えることに失敗している。先住民族の権利の否定は、土地や自然資源の収奪の固定化とそれにより生じるさまざまな暴力の持続を招いている。最近では、ソーシャルメディアなどのネットを利用した先住民族へのヘイトスピーチも行われている。今号では日本の先住民族であるアイヌ民族に焦点をあて、アイヌ民族の歴史と政府の施策、そしてヘイトスピーチと呼ばれるこの新しい形態の差別がもたらす先住民族への影響を考える。
土地の権利とアイヌ民族
阿部千里(アイヌ・先住民族電影社)
本稿で、筆者はなぜアイヌ民族が先住民族として認められなくてはならないのか、なぜアイヌ民族の土地の権利が尊重されなくてはならないのかについて議論する。
現在のアイヌ政策を越えて:日本従属からアイヌ民族を解放する
丸山博(ウプサラ大学ヒューゴ・バレンティンセンター客員教授)
現在の日本政府のアイヌ政策への批判的検討を試みた本稿で、筆者は政府の見解がアイヌ民族の権利の限定的な承認を招いていることを議論する。
人権とサイバー・ヘイトスピーチ:アイヌ民族の場合
アン・エリス・リワレン(カリフォルニア大学サンタバーバラ校准教授)
本稿で、筆者は政府によるアイヌ民族の先住民族としての承認を撤回させることを目的としたソーシャルメディアにおけるアイヌ民族へのヘイトスピーチについて考察する。
ケアで悲劇を回避:忘れ去られた子どもたち-中国
許楨(Xu Zhen)
本稿で、筆者は親が外に働きに出たために子どもだけが家に取り残される中国の家庭において、子どもたちが遭遇するさまざまな問題について議論する。