今まで、「国内人権機関」という呼び方を使ってきましたが、それぞれの機関が具体的にどのような役割に力を入れているか、どういう構成になっているか、などによって、いくつかのタイプに分けることができます。国内人権機関のガイドラインは「パリ原則」ですが、このパリ原則では、どういうタイプの国内人権機関を作るべきかについては書いてありません。その国の状況にあったタイプのものを作ればよいからです。
一番多いのは、「人権委員会」というタイプで、これは委員長1人と複数の委員がメンバーとなっています。だいたいは10人以下ですが、パレスチナの人権委員会のように17人いる場合もあります。このタイプの場合、人権を踏みにじられた人の相談を受けて解決することと、一般の人びとに人権について知ってもらうこと、人権についての政府の方針に意見を言うことが主な役割です。たとえば、アジア太平洋地域には、2013年7月時点で21カ国に国内人権機関がありますが、そのうち19カ国の国内人権機関がこのタイプです。相談を受けて解決策を提案する場合、人権を踏みにじったとされた人はその提案を絶対に守らなければいけないのか、それとも、守らなくてもいいのかは、その国内人権機関にどういう権限があるかによって異なります。
また、「オンブズマン」タイプもあります。オンブズマンの主な役割は、国や地方自治体などの行政機関が不正をしていないかどうかをチェックすることです。このタイプの国内人権機関の多くも、不正があるかどうかのチェックが重要な役割となっています。たとえば、ティモール・レステ(東ティモール)の国内人権機関は、「人権と正義のオンブズマン事務所」といいます。この事務所の役割は、大きく分けて、人権を守るために取り組んで国などにアドバイスする役割と、行政機関などが不正をしていないかどうかをチェックし、不正をなくすためのアドバイスをすることです。
さらに、人権を踏みにじられた人からの相談は受けつけず、政府や議会に人権についての意見を言うことを一番の役割とする国内人権機関もあります。フランスの国家人権諮問委員会がこのタイプで、その役割は、フランスが国際社会と結んだ約束をきちんと守るようにすること、法律案について議会などにアドバイスをすること、人権について国民一人ひとりの意識を高めていくことなどです。国内のさまざまな意見を反映させるために、この委員会のメンバーは64人もいます。政府や議会は、そのアドバイスなどに従わなくてもよいことになっていますが、人権を守るためには重要なものとして誠実に受け止めているようです。
国内人権機関についてもっと詳しく知りたい人は、次のような本やウェブサイトを見てください。
<本>
<日本語のウェブサイト>
<英語のウェブサイト>