第2回アジア・太平洋地域国内人権機関ワークショップは、インド、オーストラリア、インドネシア、ニュージーランド、フィリピンおよびスリランカの国内人権委員会が参加し、インドのニューデリーで1997年9月10日から12日にかけて開催された。ワークショップ開会にあたり、インドのインデル・クマル・グジュラル首相があいさつを行った。
ワークショップは、スリランカの人権委員会の設立と、アジア・太平洋地域フォーラムへの参加を歓迎した。
ワークショップでは、1996年7月にオーストラリアのダーウィンで開催され、国内人権機関のアジア・太平洋地域フォーラムの設置を決めた第1回アジア・太平洋地域国内人権機関ワークショップで確認された原則、結論、提言と決定を再確認した。とりわけ、参加者は世界人権宣言や他の国際文書に掲げられている人権の普遍性、不可分性、相互依存性、相互の関連への参加者の信念を再確認した1)。人権の不可分性を再確認するにあたり、ワークショップは、どのような範疇の権利も他の範疇の権利に比べて優先されることがないこと、国内人権機関が人権への広い接近法を採用し、経済的、社会的および文化的権利、そして市民的および政治的権利に関心を払うべきであることを再確認した。
ワークショップは、その有効性と信頼性を確保するため、国内人権機関の地位と責任は国連総会にて採択された「国内人権機関の地位に関する原則」(いわゆる「パリ原則」、決議48/134)2)に合致したものであるべきであることを強調した。ワークショップはまた、人権機関は独立した組織であるべきこと、そして、多元性をもつ必要があることを強調した。
ワークショップは、必要な政治的意思を示し、すべての必要な支援と適切な法的枠組みを提供することにより、国内人権機関がその職務を有効に果たすことを可能とするよう各国政府に対して要請した。
ワークショップは、国内人権機関が存在するか、もしくは「パリ原則」に従ったかたちでの機関の設立を検討している政府の代表がオブザーバーとして参加したことを歓迎した。とりわけ、多くの政府がパリ原則に則って国内機関を設置すると表明したことを歓迎した。ワークショップは、まだ国内人権機関を設立していない政府に対して、設立するよう呼びかけた。
ワークショップは、いくつかの非政府機関(NGO)がオブザーバーとして参加したことを歓迎し、人権の伸長と保護における市民社会の役割の重要性を強調した。ワークショップは、国内人権機関がNGOとは異なる役割と構造をもつことを前提としたうえで、NGOとのパートナーシップをもって活動することの意義を強調した。ワークショップは、フォーラムがNGOとの協力関係をさらに強化する方法について関心を払うべきであると考える。
ワークショップは、地域内・2国間・多国間の実際的な技術支援活動計画の結節点としての活動を、アジア・太平洋地域国内人権機関フォーラムが強化すべきであると考えた。ワークショップは、この分野において継続もしくは計画されている活動に留意した。ワークショップは、バングラデシュ、ネパール、モンゴルの代表が国内人権機関を設置する過程にあると発言したことを歓迎した。また、国内人権機関、国内人権機関を設置することを検討している政府、およびNGOが組織強化のための技術協力を行う可能性を検討するよう呼びかけた。また、技術協力活動に従事する団体に対し、実効的な相互調整に関心を払うよう勧告した。
ワークショップは、草の根活動を通じて人権文化を作り出していくことの必要性をとくに強調した。また、人権および国内人権機関の役割についての情報を広く普及することの必要性もとくに強調した。
人権侵害の申立ての徹底した調査と有効な救済の重要性を確認しつつも、ワークショップは多くの国内人権委員会が急速な申立て数の増加による負担に直面しつつあることについて懸念を表明した。ワークショップは、このことが国内人権機関の資源に対してもつ深刻な影響と、これが国内人権機関の人権伸長活動、とりわけ教育活動を進めるうえで制約となっていることについて留意した。ワークショップは、
a)国内機関が、コンピューター化も含め業務方法と制度を改善し、申立ての処理について効率的で有効な運営に努めていることを認識し、b)国内機関がこの問題の解決のため、職員の交流、研修、技術協力などをフォーラムの枠組みのなかもしくはそれ以外の協力活動のなかで実施すること考慮するよう示唆し、
c)国内人権機関の設置を考慮している政府が、申立ての負荷の増加を考慮し、国内機関がこれらの業務負荷の増加に対処できるような柔軟性をもてるような立法・行政的措置をとることを勧告し
d)国内機関が申立てを受理し調査し、解決するにあたってのさまざまな業務様式についての情報をフォーラム事務局が収集し、資料として準備するよう要請した。
ワークショップは、人権に関わる法解釈を照合・整理し、普及し、発展させることの意義を強調した。また、フォーラムの事務局に対しては、なるべく早い段階で人権の法解釈を照合・整理、普及するための機構を設置すること、そしてその目的のために国内人権機関との連携を開始するよう要請した。さらに加えて、ワークショップは、オーストラリアの人権および機会均等委員会が国際人権法諮問パネルの設置をフォーラムに提案したことに留意し、パネルの設置に原則的に合意した。このパネルの活動についてのさまざまな考え方を整理するため、ワークショップは、インドとオーストラリアの国内人権委員会の代表からなる小委員会を設置し、そこでオーストラリアの委員会の提案やワークショップの間に行われたコメント、そして今後フォーラムのメンバーである国内人権機関から出されうる意見にすべて留意しながら、この件についてすべての側面から検討を進めることとなった。ワークショップは、さらに討議を深めるため、小委員会が第3回アジア・太平洋地域国内人権機関ワークショップ開催の2カ月前に資料を提出するよう求めた。
ワークショップは、子どもの性的搾取を重大人権侵害として非難した。ワークショップは、域内のすべての政府に対して、子どもの性的搾取と闘うために、法執行面での改善、社会政策の変更、教育・啓発キャンペーン、被害者・共同体への支援措置などを含む広範な政策をとるよう要請した。ワークショップは、以下のように決議した。
a)フォーラム事務局が、関連の法律や慣行について整理と普及を行うことb)現在提案されている子ども権利条約の議定書が、子どもの性的搾取に限定されたものとされるべきであること
c)フォーラムの構成員が、選択議定書についての意見を各政府に伝えること
ワークショップは、域内の人権についてとくに普遍性の問題に力点を置いたビデオ制作を企画し、1998年に制作するという想定でフォーラム構成員による検討を行うための原案を作成するよう事務局に要請した。また、ワークショップは事務局に対して、1998年末までの間に設けることが考えられているウェブサイトを含む技術協力と情報提供活動において世界人権宣言にとくに焦点をあてるよう要請した。ワークショップは、世界人権宣言の採択を記念する日は、子どもや女性も含めた社会の構成員全体の権利を強調する適切な機会であると考える。ワークショップは、ウィーン人権宣言および行動計画でも謳われているように、域内の政府に対し、それが可能な場合は国内人権機関と協力し、人権の伸長と保護のための国内行動計画を作成するよう呼びかけた。
ワークショップは、国連人権高等弁務官に対して、アジア・太平洋地域の国内人権機関の定期的な会合の間の期間、および会合の開催に際して密接な協力ができるよう、必要な資金を確保することも含め支援を提供することを要請した。ワークショップは国際連合が独立した国内人権機関の固有の地位と性格を正式に承認し、国際連合の人権に関わる機関での活動にそれ自体の権利として参加できるようさらなる措置をとるよう繰り返し要請した。
ワークショップは国際連合人権高等弁務官、国際連合人権センターおよびインド国家人権委員会に対し、ワークショップへの財政的その他の支援について謝意を表明した。
ワークショップはインドネシアの人権委員会が第3回アジア・太平洋地域国内人権機関ワークショップをおおむね12カ月の間に実施する用意があるという申し出を感謝をもって受諾した。
訳注1)同会議の宣言「ララキア宣言」は『アジア・太平洋人権レビュー1997』(現代人文社)178~179頁に掲載。
訳注2)『アジア・太平洋人権レビュー1997』175~177頁参照。
(翻訳:川村暁雄)