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第3回アジア・太平洋地域国内人権機関ワークショップ結論

付属書3:会議の結論

 インドネシア、オーストラリア、インド、ニュージーランド、フィリピン、スリランカの国内人権委員会代表からなる、第3回アジア太平洋地域国内人権機関ワークショップが、1998年9月7日~9日、インドネシアのジャカルタで開催された。ハビビ・インドネシア大統領が開会式典において開会宣言を行い、インドネシア人権委員会委員長ミリアム・ブディアルジョ博士、国連人権高等弁務官の国内人権機関に関する特別顧問であるブライアン・バードキン氏が挨拶した。

 ワークショップは、会議の開催引受けをインドネシア人権委員会に感謝した。ワークショップはまた、国連人権高等弁務官事務所の協力と財政援助を感謝した。また、オーストラリア国際開発機関には財政援助について、ワークショップ事務局には会議の運営作業についてそれぞれ感謝した。

 ワークショップは、国内人権機関を持つ政府、ならびに、パリ原則に沿って国内人権機関の設置を検討している政府による、オブザーバー参加を歓迎した。ワークショップは、さらに、そのほかの関連機関の代表、および数多くの国際的、地域的、国内的NGOの代表による、オブザーバー参加を歓迎した。

 ワークショップは、1996年の会議発足以来の、関心の高まりと参加者数の増大を確認した。政府およびNGOからのオブザーバーを含めて、会議への参加者すべての効果的参加の機会を確保するために、また、域内の国内人権機関による非公式会議という会議本来の性格を保持するために、ワークショップは、1999年の会議を、加盟国国内人権機関だけであらかじめ草案文書を配布しておく非公式会合を含めて、3日間開催することを決定した。

 ワークショップは、1996年オーストラリア・ダーウィンで開催された第1回アジア太平洋ワークショップのララキア宣言、ならびに、1997年9月インド・ニューデリーでのワークショップの結論を再確認した。ワークショップは、国内人権機関に与えられる地位と責任は、国連総会(決議48/134)が採決した、通常「パリ原則」と呼ばれる、国内人権機関の地位に関する原則に従うべきであることを繰り返した。ワークショップは、国内人権機関がこの原則に従い、独立性、多元性を確保し、普遍的人権基準に基づくべきであることを強調した。

 会議の特別テーマは、アジア・太平洋地域における人権の保護と経済危機についてであった。この問題について、ワークショップは、インドネシアの元財務大臣、マリー・ムハンマド氏を基調報告者として迎えた。ワークショップは、経済的、社会的、文化的権利の遵守への経済危機の影響について、深い関心を表明した。また、ワークショップは、経済危機が域内の市民的・政治的権利をさらに制約する機会として利用されることのないよう、懸念を表明した。

 政府間組織および国際組織の政策、計画、活動が人権に与える影響を、当該組織が自ら認識できるメカニズムを開発強化すべく、国連人権高等弁務官が奨励するよう、ワークショップは要請した。この点に関して、国際金融機関が、その活動のなかで、どのようにすれば国際人権章典に含まれる国際基準を押しすすめることができるか検討する必要があることに、ワークショップは高等弁務官の注意を促した。国際金融機関が、その政策と活動の人権への影響について、声明の作成を検討することも望ましい。

 ワークショップは、地域内外の政府が人権の不可分性への取組みに、明瞭な効果を与えることを要請した。それは、WTOやAPECのような国際金融機関、国際的・地域的経済ワークショップの政策と活動に人権を組み込むことなどを通してである。また、ワークショップのメンバーは、その関心を自国政府および国連人権高等弁務官に伝えることを決定した。メンバーである人権委員会は、経済危機が人権に与える影響に、優先的に取り組むことを決議した。ワークショップは、経済的、社会的、文化的権利の遵守という問題に取り組むためのワークショップの開催をめざすことを決議した。ワークショップは、事務局作成の背景説明資料を広く配布することに合意した。

 ワークショップは、1997年9月第2回ニューデリー会議以降のワークショップ活動に関する事務局報告書に留意した。ワークショップは、国内人権機関の強化と設立をめざす技術協力活動のレベルが高まりつつあることを歓迎した。ワークショップは、メンバーである人権委員会が、技術協力計画を提案するよう促すとともに、以下の趣旨の事務局勧告に留意した。ワークショップ・メンバーが、国連人権高等弁務官と相談・協力しつつ、効果的な技術協力計画の基礎として、技術協力に関する必要性評価調査団の受入れを検討するという趣旨の勧告である。ワークショップ・メンバーは、さまざまな背景説明資料の作成を歓迎した。これらのペーパーに関連して;

 ワークショップは、法律家諮問会議を設立して、域内の人権判例を発展させるための援助を行うことに同意するとともに、参加資格と機能に関する諮問会議の権限についても同意した。ワークショップ・メンバーは、年末までに適切な者を諮問会議メンバーに指名することとし、諮問会議が可能なかぎり早急にその活動を開始するのを確保するため、事務局が必要な措置をとるよう要請した。さらに、ワークショップは、国内的・国際的人権判例の収集・普及のためのメカニズムを承認した。

 ワークショップは、子どもの性搾取を大規模人権侵害として、再度非難した。ワークショップは、域内のすべての政府が、子どもの性搾取と闘うために、法執行の改善、社会政策の変更、公教育におけるキャンペーン、被害者である個人ならびに共同体の援助措置などを含む、広範な措置をとるよう呼びかける。ワークショップは、事務局がインターネットによる子どもポルノの問題を検討し、次回の会議に報告書を提出するよう要請する。ワークショップは、この分野で活動しているその他の機関とのつながりを引き続き発展させ、関連する法律とその実施についての情報を収集することを決議した。また、ワークショップは、子どもの性搾取を、1998年2月イラン・テヘランで開催された第6回国連アジア太平洋地域における人権の地域的取極に関するワークショップによって定められた4つのワークショップの1つの主要テーマとすることを提案した。

 ワークショップは、人権救済の苦情申立ての受理、調査、解決のための国内人権機関の実行に関する事務局作成の草案文書を検討し、継続作業とすることを表明した。ワークショップは、国内人権機関およびその設立を予定している国にとって、この文書が便利で最新の資料となるように、文書の内容を検討し、意見を与え、事務局に修正案を勧告することを決定した。また、次回の会議に文書の改訂版を提出することを決定した。ワークショップは、国内人権機関が、個人の苦情の取扱いにあたって、制度的、予防的、教育的アプローチを展開することの重要性を認めるべきであると考える。

 ワークショップは、ワークショップ・ウェッブサイトの設置、ならびに、国連人権高等弁務官など他の人権ウェッブサイトとの連携を歓迎した。それによって、ワークショップ・メンバー、政府、NGO、一般市民が、このサイトを域内人権促進の資源として利用することが奨励される。ワークショップは、このサイトを定期的に更新し、ワークショップ会議の文書を含めることを事務局に要請した。ウェッブサイトを持たないメンバーの国内人権機関は、その設置に向けて努力することを決議し、このために必要なあらゆる援助を提供するよう事務局に要請した。

 ワークショップは、世界人権宣言50周年記念ビデオ作成の提案を歓迎し、この作成のために、事務局がワークショップ・メンバーと密接に連携することを要請した。

 ワークショップは、人権の保護および伸長における市民社会の重大な役割を確認する。ワークショップは、NGOの、とりわけ、今回の会議に対する貢献、ならびに、会議の作業運営へのNGO参加者の建設的な取組みに感謝する。ワークショップは、「パートナーシップとしての、国内人権機関とNGO組織」というテーマで、1998~99年にワークショップを開催することに同意し、NGO団体との協議を通して、ワークショップ準備のための適切な措置をとるよう事務局に要請した。ワークショップは、メンバーである人権委員会がワークショップの基礎として検討するため、事務局が準備文書を作成することを要請した。

 ワークショップは、国連総会がその第53回会期において人権擁護者に関する宣言草案を採択することを期待するとともに、地域NGO活動の基礎であるこの宣言に、国内人権機関および政府の注意を促した。

 ワークショップ・メンバーは、女性の人権問題の解明と差別撤廃への取組みに、高い優先順位を与えることを表明した。ワークショップ・メンバーは、女性に対するいかなる形態の暴力も、重大かつ広範な人権問題として非難し、政府が法的援助、避難所、リハビリテーションを提供することによって、女性の保護へ向けた活動を行うよう要請した。ワークショップ・メンバーの国の政府が、いずれも、あらゆる形態の女性差別撤廃に関する条約の締約国であることに満足をもって留意する一方、ワークショップは、域内のその他の国がこの条約を批准するよう要望し、すべての締約国がこの条約への留保を撤回する措置をとるよう要請する。ワークショップは、事務局がワークショップの活動の選択肢を明記した文書を作成するよう要請した。メンバーである人権委員会は、女性の権利のさらなる伸長と保護をめざし、次回の会議ではその討議に1セッションを確保することをめざした。報告書は、関連資料を明らかにし、適切な場合、それを収録するものとする。

 ワークショップは、以上の段階すべてが、アジア・太平洋地域における人権の伸長と保護にいっそうつながっていく環境を創造し、政府、国内人権機関、NGOの能力を高めることになると信じる。

 ワークショップは、バングラデシュ、フィジー、モンゴル、ネパール、パフア・ニューギニア、韓国、タイの代表による、自国が国内人権機関設置プロセスの途上にあるという声明に留意し、域内の他の国家にも同様の措置をとるよう要請した。この課題の検討開始からすでに時間が経過している場合、ワークショップは、関係政府にそのプロセスを早めるよう促した。ワークショップは、パリ原則に従った新たな国内人権機関設置の重要性を強調した。ワークショップは、域内の政府がこれを行うにあたって援助を提供し、政府がワークショップとの技術協力を政府活動を促進するものと考えるよう促した。

 ワークショップは、イランのイスラム人権委員会、第2回国内人権機関に関するアフリカ地域会議、太平洋人民の集団的権利に関する会議の報告書を関心をもって留意した。

 ワークショップは、国連難民高等弁務官地域代表から域内の難民申請者に関するコメントを聞いた。ワークショップは、難民、国内で強制移動を強いられた人々、移民労働者、国内人権機関の役割といった問題を討議した。ワークショップは、政府がこれらの課題にいっそう効果的に取り組む必要性を確認した。

 ワークショップは、国連人権高等弁務官が、アジア・太平洋地域の国内人権機関とワークショップ会議との間における緊密な協力を促進するよう、要請した。これは、国内人権機関関連の作業に必要な財源が利用できるよう確保することなどによる。ワークショップは、ワークショップと国連人権高等弁務官が、相互協力の基礎として了解覚書を交すという提案を歓迎し、事務局が国連人権高等弁務官事務所とともにこの件を遂行するよう要請した。これに関連して、ワークショップは、また、国連人権高等弁務官が、アジア・太平洋地域への技術支援基金のよりいっそう公平な配分を考慮するよう要請する。ワークショップは、1998年2月テヘランで開催された人権の地域的取決めに関する第6回国連アジア・太平洋ワークショップにおいて、国内人権機関の発展強化に関して払われた注意を歓迎した。ワークショップは、このワークショップの勧告を繰り返したが、その内容は、国連が、独立した国内人権機関の固有の地位と性格を正式に承認し、さらなる措置を講じることによって、国内人権機関が権利として国連人権諸機関の作業に参加することを確保するというものである。

 フィリピン人権委員会は、約12カ月以内に第4回アジア・太平洋地域国内人権機関ワークショップ会議を開催する要請を受理した。

(訳:窪誠/大阪産業大学経済学部助教授)