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アジア・太平洋地域の国内人権委員会の発展の意義
1996年7月8日から10日にかけて、オーストラリアのダーウィンで第1回アジア・太平洋地域国内人権委員会ワークショップが開催された。これは、オーストラリア人権およびおよび均等委員会とニユージーランド人権委員会の共催によるもので、この2つの人権委員会関係者およびインドとインドネシアの人権委員会の代表者が参加した。現在、国内人権期間の設立の準備・検討をおこなっている国々(フィジー、モンゴル、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、ソロモン諸島、スリランカ、タイ)から関係省が参加している。ここでは、アジア・太平洋地域の人権委員会の相互協力と、現在、人権委員会の設立準備をしている国々への支援について論議された。
この会議はララキア宣言を採択したが、その中で次のように述べている。
- 人権の伸長と保護は社会のすべての構成員の責伍であり一人権を守るための活動に従事している者は人権の進展のため協調してあたること。
- 人権の原則が有効で実質的な方法により十分に実施されるべく国内機関は非政府機関と、そして可能な場合は政府とも密接な協力をもって活動すること。
- 国際的なレベルにおいては、地域的な協力が人権の有効な伸長と保護を確保するためにもっとも重要であること。
- 国内機関の有効性と信頼性を確保するためには、国内機関の地位と責任は、総会で採択された国内機関の地位に関する諸原則(「パリ原則」)-これは国内機関が独立、多元的であり、可能であれば憲法もしくは法律その他のこの原則に合致するような方法で設立されるべきこととしている一と合致したものであるべきであること。
また、この会議は、国内人権委員会のアジア・太平洋地域フォーラムを設立し、オーストラリアの人権および機会均等委員会に最初の3年の間、事務局を置くことを決定した。なお、インドの人権委員会は、第2回の地域ワークショップを1年以内に開催することを約束した。
このような会議か開催されたこと自体、アジア・太平洋地域で国内人権委員会を設立する機運は高まっている。
このような人権委員会の意義について、国内人権機関、地域的人権機構および予防的戦略についての国連人権高等弁務官の顧闘であるブラィアン・バードキン氏はワークショップの中で次のように指摘している。
民主主義はマイノリティの権利の保障を自動的には意味しない。また憲法で認める権利を強化拡大することも、それが実際に保障されることを確実にしない。このような中で、独立し自立的に活動する国内人権委員会があれば、民主的政府の欠点や憲法を実際に保障するうえでの限界、利用が実質的に難しい司法システムの間題を南る程度軽減することができる。
具体的には、(1)国内人権委員会は、地方政府において同様の役割を果たす機関の設立を推進することができ、このことにより多くの人に対して人権が実質的な意味をもつようにすることができる、(2)国内の文化的状況や憲法の特徴を考慮しつつも、国際条約で規定される基準にそってこのようなことを行うことができる、(3)そして地域的機関や国際的機関と比べればより国内の状況に合致した方法でこれを行うことができる、(4)マイリティの人権を多数派の意志に反して守ることもできる、(5)政府の国際条約にもとづく人権状況の報告の完全性を保障し、その内容を監視することができる、(6)国内の惰勢の確かな理解にのっとった内側からの建設的批判を行うことができる。
人権委員会の代表者が集まる場でパードキン氏が行った指摘は、現状を反映しているというよりも、アジア・大平洋地域の国々で、国内人権機構が果たしうる潜在的な役割を指摘していると考えたほうがよい。
この指摘は、政治的、社会的な条件が多様、複雑で、地域組織もなく人権に対する考え方にもかなりの幅があるアジア・太平洋地域に施いては、確かに説得力はある。地域人権機構がすぐに生まれるとは考えにくく、バードキン氏が指摘した国内人権機構の積極的な意義を最大限強化、促進することが、それぞれの国における人権の伸長についても、または将来的に地域的人権機構を作り出していくという意味でも、大きな意義があるだろう。
(川村暁雄「アジア・太平洋地域の国内人権機関の野発展」、『アジア・太平洋人権レビュー1997』所収)