フィリピン大統領府は07年2月22日、続発する左派活動家や教会関係者、ジャーナリストなどの殺害事件を調査するためにアロヨ大統領が06年8月に設置 した「特別調査委員会(通称:メロ委員会)」の報告書[PDF919KB] (A4 サイズで86ページ)を 公表しました。報告書は、政治的殺害にはフィリピン国軍の一部が関与していると結論づけるとともに、国軍が主張している「左翼活動家間の粛清説」の信憑性 に疑問を呈しています。報告書は、とりわけ一連の事件の「指揮官」とされてきたパルパラン退役少将が統率してきた部隊の関与を指摘しています。同少将は下 院議員3名を擁するバヤン・ムナ党などをフィリピン共産党の軍事部門である新人民軍(NPA)の前線組織だと公言し、「国家の敵」と断定していました。
アロヨ大統領に対しては、政治的殺害の再発を防止するための強い意志の表明を求めています。また、メロ委員会の独立性に対して疑問を持つ遺族やカラパタン をはじめとする人権団体が調査に協力しなかったことから、加害者の逮捕や訴追を可能にする具体的証拠が欠落していることを指摘し、遺族たちに調査協力を要 請しています。
この特別委員会の報告書は、07年1月に完成し大統領に提出されていたものの、「内容が不完全」だという理由をあげて非公開にされていました。しかし、 EU(ヨーロッパ連合)や、フィリピンを公式訪問し調査したフィリップ・アルストン「超法規的・即決・恣意的殺害に関する国連特別報告者」などの要請を受 けて公開されるに至りました。
報告書の発表直後には、アロヨ大統領は国軍が関与していることに心を痛めた一方、エスペロン国軍参謀総長は、軍の提出した証拠が反映されていないとして不 快感を示しました。
出所:Palace releases Melo report "Arroyo 'pained' by findings -- Bunye" INQ7.NET, 22 February, 2007 (英語)
参考:フィリピンでNGOやジャーナ リストの殺害をめぐる調査委員会が設置される ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2006年8月)
(2007年03月01日 掲載)