4月27日、第2次大戦中に強制連行され、広島県内の水力発電所の建設現場で過酷な労働をさせられたとして中国人の元労働者ら5人が西松建設を相手に約 2700万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決があり、損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は、原告側の請求を棄 却しました。朝日新聞によると、最高裁で強制連行をめぐる訴訟が実質審理され、判決が出るのは初めてですが、第二小法廷は、 「72年の日中共同声明は個人の損害賠償等の請求権を含め、戦争の遂行中に生じたすべての請求権を放棄する旨を定めたものと解され、裁判上請求する権能を 失った」と初めての判断を示し、戦後補償問題は日中共同声明によって決着済みで、個人が裁判で賠償を求める権利はない、と原告側が主張した司法救済上の根 拠を否定しました。一方、「被害者らの被った精神的、肉体的苦痛が極めて大きく、西松建設が強制労働に従事させて利益を受けていることにかんがみ、同社ら 関係者が救済に向けた努力をすることが期待される」との見解を付しています。原告らは98年1月、広島地裁に提訴。44年ごろに日本に連行され、同県加計 町(現・安芸太田町)の「安野発電所」を建設するため、1日12時間以上、導水トンネル工事などに従事させられたと訴えていました。
同新聞では、この最高裁判決により、慰安婦訴訟などほかの20を超える係争中のすべての戦後補償裁判でも、中国人原告側の敗訴を決定づけたものと懸念され ています。
この判決に対して、中国国営新華社通信も、判決を至急電で伝えるなど大きな関心を示していますが、時事通信によると、日中関係が先の温家宝首相の訪日で改善する中、懸念材料になる可能性も指摘されています。判 決の前日26日、中国外交部の劉建超報道官は、「労働者の強制連行は日本軍国主義が第二次世界大戦中に侵した重大な犯罪行為であり、日本政府は、誠実な態 度でしかるべき責任を担い強制連行問題に真剣に対処し、これを適切に処理すべきだ」、「『中日共同声明』は中日両国政府が調印した厳粛な政治文書であり、 戦後の中日関係の回復と発展の政治的基盤をなしていることから、いかなる一方もこの文書の重要な原則と事項に対し、司法的解釈を含む一方的な解釈を加える べきでない。中国側は原則に基づき関連問題を処理するよう日本側に要求する」と記者会見で強調していました。
出典:
・朝日新聞2007年04月27日 強制連行訴訟、中国人元労働者らの請求棄却 最高裁
・時事通信2007年04月27日 「共同声明の一方的解釈」に反発=最高裁判決、新華社も速報-中国
参考:中国、強制連行問題を適切に処理するよう日本政府に要求 (中国国際放送局 日本語部 2007/04/27)
(2007年05月01日 掲載)