国連人権理事会の第17会期が5月30日から6月17日まで開催され、移住者、教育の権利、健康の権利に関する特別報告者との対話や女性に対する暴力に関する討議などが行われました。
この会期に「移住者の人権に関する特別報告者」の2010年3月の日本訪問の報告が,国際人権基準を取入れた包括的な移民政策を作成することや,人種主義、人種差別を防止し撤廃する法律を早急につくるなどの勧告とともに提出されました。
さらに今会期に、子どもの権利条約の個人通報制度に関する選択議定書案が採択されました。この案は2009年、第11回理事会において設置が決議された、子どもの権利条約の報告制度を補完するための通報制度を規定する選択議定書を作成する作業部会が作成したもので、条約、子どもの売買、買春、ポルノグラフィに関する選択議定書および武力紛争における子どもの関与に関する選択議定書にあげられた権利を侵害された個人または集団、あるいはその代理による通報に関する規定、締約国のいずれかが条約の義務を果たしていないという他の締約国からの国家間通報に関する規定と重大または制度的な侵害に関して、子どもの権利委員会が調査を行う調査制度に関する規定をおいています。理事会は、国連総会に対して議定書案を採択するよう求める決議を採択しました。
また、理事会はラギー「ビジネスと人権に関する国連事務総長特別代表」による、人権の「保護・尊重・救済」の枠組みをどのように業務に取入れるかに関する指導原則について、特別代表の作業を歓迎し、指導原則を採択することを決めました。ラギー特別代表の任期が7月に終了することを受け、新たに5人の専門家による企業と人権に関する作業部会を設置し、さらには、この指導原則に関して議論を進めるために、国家、国連機関、国際・地域組織、企業、労働組合、研究者、NGOなどの参加するフォーラムを設置することを決議しました。
そのほか、人権と性的指向、性別自認に関する決議で、人権高等弁務官に対して2011年末までに性的指向や性別自認を根拠に差別する法や慣行、そのような根拠で個人に対して振るわれる暴力について、また暴力や侵害に対して国際人権法がどのように活用できるかに関して調査を行うよう要請し、この問題に関し19会期で取りあげることを決めました。
LGBTに関して、2004年、人権理事会の前身である人権委員会で決議案が出され、結局審議が持ち越され、採択されることはありませんでした。2008年の第63回総会では、決議という形ではなく、声明が出されています。今会期での決議は、賛成23、反対19、棄権3で採択され,モーリシャスを除くアフリカ、中東諸国は反対、棄権に回っています。一方、南アフリカはこの決議案の共同提案国の一つですが、人権理事会のメンバーではないので、投票には入っていません。
また、反政府デモや抗議行動などが続く北アフリカ・中東地域の動向を受け,次会期に,平和的抗議行動の文脈における人権の促進と保護に関してパネル討議を行うことが決められたほか、北アフリカから避難する人びとについて,危険で困難な状況について懸念を表明し,大きな負担が北アフリカの近隣諸国にかかっていることを認め、人道的な対応を求める決議が採択されています。(6月27日)
出所:
Human Rights Council concludes seventeenth session 6月17日付 (国連人権高等弁務官事務所)http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=11170&LangID=E
第17回人権理事会 (国連人権高等弁務官事務所) http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/17session/
参考:
「第16回国際人権理事会、人権教育および研修に関する宣言、イランの人権状況に関する特別報告者など決議」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2011年3月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2011/03/16-1.html
「国連人権委員会が人権と性的指向に関する決議案の審議を次回に持ち越し」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2004年4月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section2/2004/04/post-21.html
「国連総会、死刑のモラトリアムに関する決議などを採択」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2009年1月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2009/01/post-34.html
(2011年07月01日 掲載)