9月12日から30日まで第18回国連人権理事会が開催され、民主的で衡平な国際秩序の促進に関する特別報告者、真実、正義、補償などに関する特別報告者を新しく設置し、第17回で設立が決まった人権と多国籍および他の企業に関する作業部会のメンバーを選出など決議しました。
会期中、北アフリカや中東で起こった反政府デモなどを受けて、平和的な反対運動の文脈における人権の伸長と保護に関するパネル討議のほか、人種主義、人種差別などに関する討議などが開催されました。
民主的で衡平な国際秩序の促進に関して、人権理事会は、民主的で衡平な国際秩序が、すべての人民の自分の政治的地位を決定し、経済的、社会的および文化的発展を自由に追求することを可能にする自決権、すべての人民の天然資源に対する恒久的主権、すべての人と人民の発展の権利、平和への権利,すべての国の意思決定過程における平等な参加、連帯などに基づいた国際的経済秩序への権利、すべての人の国内およびグローバルな意思決定に差別なく衡平に参加する権利、文化的な多様性やすべての人の文化的権利の尊重などを要するとして、国際社会のすべての国、機関、人など行為体に、正義、平等、衡平、人の尊厳、相互理解および普遍的人権と文化的多様性の促進、尊重に基づいた国際秩序をつくることを促しました。また、民主的で衡平な国際秩序の促進保護の障害を特定し、それに対する行動を提案し、ベスト・プラクティスをまとめるなどのための特別報告者を任命することを決めました。
真実、正義、補償などに関する特別報告者について、重大な人権侵害や国際人道法の違反があった際、そのような事態の再発や将来の人権侵害を防止し、社会の結束、国づくり、和解の促進などに向けてそれぞれの状況に則した戦略や政策などがつくられなければならないこと、責任が追求され、正義が果たされ、被害者の救済がなされ、和解が促進され、国の制度に対する信頼を回復し、法の支配を促進するために個別の訴追手続、補償、真実の解明、制度改革などを含むあらゆる司法的、非司法的な措置を含む包括的なアプローチが重要であることが強調されました。新たに設置される特別報告者は、規範的枠組み、真実委員会や和解委員会のようなメカニズムなどの実践のような重大な人権侵害や国際人道法違に関して、真実、正義、補償および再発防止の保証の促進に関する各国の状況に関する情報を収集し、その傾向や課題などについて調査し、促進を改善し強化する方策について勧告などを行います。
この会期には、10年7月に来日した,安全な飲み水と衛生に関する独立専門家の日本訪問を含む報告が提出されていました。特別報告者は理事会において、訪日に触れ、日本では水へのアクセスが全くない集団にあうことはなかったこと、公共のトイレは他のほとんどの先進国に比べても清潔で、衛生的であった一方、貧困や、刑務所内など水や衛生設備などへのアクセスに懸念がある場合があると述べています。報告には、差別や排除によってアクセスが限定される集団の状況の他、国際協力について、援助の対象や地元との協議や参加などに関する調査があげられ、すべての人に安全な水と衛生への権利を保障する包括的な法律の制定、老朽化したインフラストラクチャー整備の取り組みの継続、ホームレスの人、障害のある人、ウトロ地区に住む人などへの水と衛生へのアクセスの改善に取り組むこと、開発援助政策に人権を取り込むことなどが勧告されています。
理事会はそのほか、少数者の権利宣言採択20周年を記念して第19会期に、この分野における成果や課題などに関するパネル討議を開催すること、11年3月、自国民に対する武力攻撃などのため国連総会決議により人権理事会のメンバーの資格停止となっていたリビアの復帰を総会に勧告することなどを決議しました。(10月6日)
出所:
第18会期国連人権理事会(OHCHR)http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/18session/
参考:
「第17回国連人権理事会、子どもの権利条約の通報制度に関する選択議定書など採択」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(11年7月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2011/07/17.html
「安全な飲み水と衛生に関する国連独立専門家、7月に訪日調査」国連人権ひろばNo. 93(2010年9月号)https://www.hurights.or.jp/archives/newsletter/sectiion3/2010/09/7.html
「リビアの人権状況に関する国連第15回特別人権理事会、リビアの資格停止を勧告、総会決議」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(11年3月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2011/03/15-1.html
(2011年10月07日 掲載)