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在日コリアンの「本名裁判」、大阪地裁が棄却(1月30日)
大阪市内の建設現場で、民族名でなく通名で働くことを強制されたとして、在日コリアン2世の金稔万(キム インマン)さんが2010年5月、日雇い先の建設会社と元請けの大手ゼネコン、そして国を相手として大阪地方裁判所に損害賠償請求の訴えを起こしていましたが、同地裁は13年1月30日に「強制の事実は認められない」と請求を棄却する判決を出しました。原告の金さんは即時に控訴する方針です。
判決によると、金さんが09年年9月に建設現場で働くにあたり、会社者側から「本名だと外国人就業届の手続きのため、働くまでに数日かかる」と言われたので、「通名で構わないのですぐ働きたい」と答えたと会社側の言い分を採用して指摘しています。在日韓国・朝鮮人など特別永住者の在留資格をのぞく外国人の雇用状況を厚生労働大臣(最寄りのハローワーク)に届け出を義務付ける雇用対策法を誤解した会社側が、手続きをする必要のない特別永住者である金さんに対して通名使用を求めたことがこのケースの発端なのですが、「会社が強制したとは認められない」と判断したものです。
判決のあった30日夜、大阪市内で「支援する会」による「不当判決報告集会」が開かれました。弁護団は、「裁判所の事実認定が被告企業側のみの証言に基づいており、判決文は原告の証拠や証言については『たやすく信用することが出来ない』を繰り返し述べる一方、金さんが長年本名で生活してきたことや名前の権利性にも一切触れていない。人の名前はその個人のアイデンティティに関わるものであり、人格権に含まれるものだ。我々の主張が全面的に退けられた」「日本の『常識』では、通名を使わせることが問題であるとは考えられていないという前提に立った判決である。これは、裁判官だけの問題ではなく、日本社会の問題である」と一審判決を振り返りました。
原告の金さんは、「自分に起きたことや考えを誰にも共有できるように伝えることを意識して陳述書を書き、裁判に臨んできた。しかし、伝えきれなかった。今度こそ私の痛み、そして名前の人格権が認められるようさらに努力したい」と控訴審での抱負を語りました。
<参考>
イルムから-当たり前に本名が名乗れる社会を求めて