第22回国連人権理事会が2月25日から3月22日に開催されました。人権の主流化の中で平和、安全、発展・開発と人権が国連の主要な柱ということが確認された会合でした。今会期では北朝鮮の人権侵害に関する調査委員会(COI)が設立される決議やイスラエルのパレスチナ問題などの35の決議と2つの決定と議長声明が採択されました。
国連人権理事会は今会期において人権高等弁務官事務所で組織される調査委員会を北朝鮮の人権問題に対して設立することを決議しました。人権に関する調査委員会は、過去に200万人以上が死亡したスーダンのダルフール問題や内戦により深刻な人権侵害が起こっているシリアに対して人権状況を調べるために調査団などとして設立されたことがありました。今会期の北朝鮮の人権状況に関する調査委員会の設立案は日本とEUが共同で決議案を提出し、コンセンサスによって採択されました。この調査委員会の設立の経緯はとして、2013年2月1日に開かれた国連総会において、北朝鮮人権状況特別報告者のマルズキ・ダルスマンが「これまで北朝鮮は、特別報告者に対して協力を拒み続けてきた」と報告したことがあります。そこで人権理事会は、マルズキ・ダルスマンとの他2名を委員とし、調査委員会として2014年3月の第25回人権理事会において報告書を提出するように要請しました。今後、調査委員会は拷問や恣意的拘禁、生存権の侵害など「大規模かつ体系的で深刻な人権侵害」の状況を1年の任期で調査していきます。
人権理事会からキューバやロシアなどに対して指摘されている人権擁護活動家に対する暴力や逮捕あるいは強制失踪が問題となっています。フィンランドやカナダのように人権擁護活動家の活動に対し法的な保障の付与やスムーズに任務をこなせるようにサポートをしている国家が既にあるのにも関わらず、未だに世界中で人権の保障を推進するNGOや活動家が国家から不当に法的圧力をかけられたり、時に危険分子として見なされることがあります。このことに対して人権理事会は国家に対して人権擁護活動家を人権保護、民主化、法の支配を促進する重要な役割を担っていることを認めるよう要請しました。また、人権擁護活動家の特別報告者であるマーガレット・セカギャは人権擁護活動家の安全性の確保や人権擁護機関に対する任務遂行のための資金の援助などを人権理事会に報告書として提出しました。
第19会期の人権理事会でも採択されたイスラエルによるパレスチナ自治区の占領問題が今会期でも採択されました。イスラエルは現在、パレスチナ領を不法に占拠していると国際社会から批判されています。イスラエルは新たなビルや建物を作るという理由でパレスチナ自治区からパレスチナ人を強制退去させて、イスラエルの領土を広げようとしています。その方法として武器や軍隊を使って無理矢理にパレスチナ領から追い出そうとしており、人権理事会はどのような方法であれ、そのようなことは認められないという決議を採択しました。パレスチナ人の絶体に奪うことのできない永久の自決権を尊重すべきであるとして、国連とその他の国連に関連する国際機関はパレスチナ人の自決権を認めるように決議を採択しました。そして、イスラエルがパレスチナ領で行っている市民的、政治的、経済的、社会的、文化的な権利の侵害を是正する為に必要な行動を第26会期でワーキング・グループに報告することを要請しました。また、イスラエルは人権状況の普遍的・定期的審査(UPR)の作業部会に参加せず国際社会からの批判が高まっています。
人権理事会は2011年に国連事務総長に対して死刑に関する報告書を提出するように求めました。現在、死刑制度を導入している国は198カ国中58カ国です。死刑制度の廃止を進めている国家が増加している一方で、未だに、58カ国が死刑制度を導入しています。人権理事会は死刑廃止の議論に関して、第25会期のハイレベルパネルで議論をするように決議を採択しました。引き続き、国連事務総長に対して政府や死刑に関する専門家、NGOなどと議論して報告書を提出するように決議を採択しました。
その他の決議として、イラン、ハイチ、ミャンマーの人権に関する特別報告者・独立専門家の任期を1年延長しました。また、非人道的な扱いに関して、どのような状況においても非人道的な扱いをすることは正当化されないとして、法律によってそのような行為を行うものを処罰することを強く求めました。さらに人権侵害に対して平和的に抗議を続けている場合には誰一人として武器の使用の対象としてはならないことを呼びかけました。
出所:
国連人権理事会ニュース
http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=13181&LangID=E
Human Rights Documents
http://ap.ohchr.org/documents/alldocs.aspx?doc_id=21400
参考:
外務省「談話・コメント」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/page6_000020.html
(2013年04月08日 掲載)