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人身売買禁止ネットワーク結成10周年記念シンポ「使い捨てにされる人々~人身売買大国ニッポンの現実」開催(6月29日)
各地のNGOや女性のための民間シェルターなどが協力して2003年に「人身売買禁止ネットワーク」(JNATIP)を結成し、人身売買(人身取引)に関する市民啓発の活動、および政府関係省庁や国会議員に対して、多言語ホットラインの開設、被害者の認定基準の明確化と認定対象の拡大、政府の専門部署の設置、被害者保護・支援を含む包括的な人身売買禁止法の制定などを要請してきましたが、いまだ実現には至っていません。
「人身売買禁止ネットワーク」はそのような経緯をふまえて、「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)、「ノット・フォー・セール・ジャパン」(NFSJ)、「反差別国際運動」(IMADR)との共催で、6月29日に東京で結成10周年記念シンポジウム「使い捨てにされる人々~人身売買大国ニッポンの現実」を開催しました。学生をはじめ関心ある市民やメディアなど約200人が参加しました。
シンポジウムは、①外国人技能実習制度(2010年まで外国人研修・技能実習制度)にみられる労働分野における搾取、②女性に対する性的搾取といった人身売買の実態の報告、③問題解決に向けた提言の三部構成で行われました。
実習制度を廃止し移動の自由のある労働者としての受け入れを
外国人技能実習制度に関しては、徳島県の縫製工場などで働く中国出身の3人の女性技能実習生により、日本の雇用主による契約違反、法定最低賃金をはるかに下回る賃金や残業代の不払いなど不明朗な賃金計算、契約期間内での帰国の強要といった現在直面する数々の労働基準の違反や人権侵害の実態が報告されました。
また、技能実習生の人権擁護に取り組む鳥井一平さん(全統一労働組合・移住連)が、多くの技能実習生が行動の自由などが制約されたなかで長時間の強制労働に就かされていること、女性実習生の場合は雇用主からのセクハラ被害にあっていることなどについて、現場や寮の写真をまじえながら報告しました。鳥井さんは、この問題に長年取り組んできたことにより、米国務省から6月中旬に「人身売買と闘うヒーロー」として表彰されたばかりです。
さらに、2008年6月に設立された外国人研修生問題弁護士連絡会の共同代表の大坂恭子さん(弁護士)が、相談を受けたり数多くの裁判で明らかになった実態をふまえて、「技能実習制度を維持していることじたいおかしい」と語りました。
大坂さんによると、日弁連は09年に人権擁護委員会内に技能実習生問題PTを設置し、11年4月に日弁連として「外国人技能実習制度の廃止に向けての提言」(注1)を、13年6月に「早急な廃止を求める意見書」(注2)を発表して厚生労働大臣と法務大臣に提出しています。
男女の親密な関係を悪用した性的搾取
女性の性的搾取に関しては、武藤かおりさん(NPO法人女性の家サーラー)と藤原志帆子さん(NPO法人ポラリスプロジェクトジャパン)が報告しました。被害者の多くが公的な保護・支援につながっていない実態について、また、夫婦や恋人など親密な関係を利用した人身売買が起きていることについて、シェルターおよびホットラインを民間ベースで運営する二人の共通した経験として語りました。近年、そのような背景のもと、日本人女性が人身売買の被害者になる例も明らかになっているといいます。
参加者に活動への参加を呼び掛ける共同代表の大津恵子さん(写真:JNATIP提供)
人身取引対策に関する提言
原由利子さん(反差別国際運動)が、09年に公式に日本を訪問調査し、10年6月、国連人権理事会に日本に対する勧告を含む報告書(注3)を提出したジョイ・エゼイロさん(人身売買に関する国連特別報告者)が提示した21項目の勧告をあらためて解説し、実施の重要性を訴えました。
さらに、山岡万里子さん(ノット・フォー・セール・ジャパン)が、13年4月にバングラデシュで1,100人を超える労働者が命を落とす大惨事となった、複数の工場が入居するビル倒壊事故を例に、安価で手に入る製品の背景にある労働搾取の現実を日本の消費者はまず知る必要があると報告しました。
最後に吉田容子さん(弁護士、人身売買禁止ネットワーク共同代表)が、政府の人身取引対策の体制の確立、技能実習制度の廃止と外国人を労働者として受け入れる制度設計、的確な被害者認定、被害者支援の充実、防止施策のための現行法の見直しや教育・啓発の拡充などを政府に求める要請書案の内容を説明しました。
(注1)外国人技能実習制度の廃止に向けての提言(2011年4月15日、日本弁護士連合会)
(注2)外国人技能実習制度の早急な廃止を求める意見書2013年6月20日、日本弁護士連合会)
(注3)人、とくに女性と子どもの人身売買に関する特別報告者-ジョイ・ヌゴジ・エゼイロ提出の報告書(反差別国際運動)
<参考>人身取引対策に関する関係省庁連絡会議(内閣官房)