9月4日、英国政府は世界初の試みとして、2011年に国連の人権理事会で採択、承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」を実施するための行動計画を発表しました。
「グッド・ビジネス:国連ビジネスと人権に関する指導原則を実施するために」と題された行動計画では、指導原則の3つの柱に従い、「国家が人権を保護する義務」、「英国企業(法人住所として英国住所を登記している企業)が人権を尊重する責任」、「英国政府および企業活動に起因する人権侵害に対する救済へのアクセス」の項目から構成されています。
例えば、英国企業の尊重責任に関する施策として、2013年10月1日に施行する新会社法のなかに人権情報を含む非財務情報の開示を求める規定が盛り込まれたこと、外務・英連邦省・貿易投資総省による対外ビジネスリスク情報サービスのなかで人権情報を提供していることなどを挙げています。
今後の取組みとして、中小企業向けの政府ガイドラインの開発や、事業者団体や産業団体に指導原則実施のためのガイダンスを開発するよう奨励を行います。EUでは欧州委員会を中心に中小企業および三業種(情報通信技術、人材派遣、石油・ガス)に向けたガイダンスをすでに完成させており、英国政府はこれらを活用しながら自国の取り組みを方向づけたいとしています。加えて、進出先の国内法が国際的な人権基準に合致せず、英国企業が責任を果たせない場合には、政府代表部を通じて現地政府に懸念を提起するようにします。これら具体的な取組みの進捗について、英国政府は外務・英連邦省の年次報告書のなかで公表するとしています。
EUでは、欧州委員会が2011年に発表したCSR新戦略のなかで、EU全加盟国政府に対し指導原則を実施するための行動計画の策定を求めており、英国に続く加盟国が出てくることが期待されます。
菅原絵美(大阪大学大学院国際公共政策研究科特任研究員)
出所:
HM Government, “Good Business: Implementing the UN Guiding Principles on Business and Human Rights” (September 2013),
Foreign & Commonwealth Office, “UK first to launch action plan on business and human rights”(4 September 2013),
* 欧州委員会による中小企業および三業種(情報通信技術、人材派遣、石油・ガス)ガイダンスは下記を参照ください。
European Commission, “Business and Human Rights”,
* 2011年に発表されたEUのCSR新戦略は下記を参照ください。
(2013年09月18日 掲載)