2013年の第22会期国連人権理事会において設立された「北朝鮮における人権状況に関する国連調査委員会」が韓国と日本を訪れ、北朝鮮による人権侵害について公聴会を実施しました。
北朝鮮は2004年から任命されていた「北朝鮮における人権状況の特別報告者」に対して、会談やその他の人権の調査に対して非協力的な態度を示してきました。そこで、調査委員会は国際社会が北朝鮮の人権状況に対する意識を高めて、同国の調査委員会に対する協力を促すために公聴会を実施しました。北朝鮮は調査委員会が同国に入国して人権の調査することを認めていないので、韓国と日本で公聴会が実施されることになりました。
8月20日から行われた韓国での公聴会では、北朝鮮の強制収容所から逃れてきた人たちが人権侵害の実態について証言を行いました。被害者は、収容所ではまともに食事が与えられないため、飢餓で多くの人が亡くなったと、述べました。収容所での凄まじい人権侵害を聞いて、調査委員会のマイケル・カービー委員長は国連の報告書だけでは人権侵害の是正は難しいことを踏まえ、調査委員会の目的を政府や指導者も責任をもって同じ心構えで取り組んでいくべきである旨を述べました。
8月27日から9月1日まで、調査委員会が北朝鮮による拉致問題と人権に関する調査のために来日しました。調査委員会は北朝鮮に公聴会へ参加するように呼びかけましたが、何の回答もありませんでした。
日本での公聴会は8月29日と30日に行われました。公聴会では脱北者による北朝鮮の人権侵害の状況や拉致被害者の家族が証言をしました。拉致被害者の家族は「(被害者)が絶対に生きているという思いで救出活動をしてきた」と訴えました。また、脱北者による証言では、北朝鮮は楽園のような国と聞かされて行ったが、実際の生活は非常に厳しく壮絶な生活であったと語りました。
また、調査委員会は8月30日に安倍内閣総理大臣を表敬訪問し、カービー委員長は、拉致問題をはじめとする北朝鮮による深刻な人権侵害の報告書をまとめ、国連人権理事会に提出する旨を伝えました。調査委員会よる北朝鮮の人権侵害の実態の報告は、10月の国連総会において口頭で行われ、2014年の人権理事会第25会期にて報告書が提出されます。
出所:
北朝鮮における人権状況に関する国連調査委員会(OHCHR)
http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/CoIDPRK/Pages/CommissionInquiryonHRinDPRK.aspx
「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会による安倍総理大臣表敬」外務省 8月30日付 http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/page4_000161.html
参考:
BBCニュース 8月24日付
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-23791114
「『ヤギの足をむさぼり食べた』脱北者たちが証言した悲惨な実態」8月21日付livedoor NEWS 海外
http://news.livedoor.com/article/detail/7972450/
「『生きている』と家族 北朝鮮拉致、国連調査委が公聴会」8月29日付 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO59061360Z20C13A8CR0000/
(2013年09月05日 掲載)