第25回国連人権理事会が3月3日から28日まで開催されました。この会期では、北朝鮮の人権状況に関する調査委員会の報告が取りあげられたほか、子どもの司法へのアクセスの権利、対テロリズム戦争における無人航空機などについて議論し、42件の決議を採択しました。またこの会期に対外債務に関する独立専門家の日本訪問についても報告が提出されています。
北朝鮮の人権状況に関する調査委員会を設置することが2013年の第22回国連人権理事会で決議され、8月末から9月初めには韓国と日本において、10月にはロンドンとワシントンD.C.において公聴会が開催され、拉致被害者の家族、北朝鮮の収容所に拘束されていて国外に逃れた人などからの聞き取り調査が行われました。公聴会や非公開で行われた聞き取りなどによる情報をもとに作成された報告が、会期前に提出され、広範で深刻な人権侵害が現在も行われていることが指摘されました。また、政治犯や他の収容所の披収容者、国外に逃れようとした人、北朝鮮の政治体制や指導部が脅威とみなした人を対象とした殺害、強制労働、拷問などや、食糧難において、飢餓状態を悪化させるような政策をとったこと、国外からの拉致など人道に対する罪にあたることが行われたことも報告されています。
理事会は、それらのような人権侵害に対して強く非難し、直ちに調査委員会の勧告に従い、侵害を止める措置をとるよう求める決議を採択しました。また、他国への庇護申請が認められず、帰国した人が収容され、拷問や非人道的な取扱いを受けるなど報告されていることから、庇護を求める人を迫害を受けるおそれのある国に送還しないノン・ルフールマンの原則を守るよう各国に求めるほか、国連総会に、国際刑事制度への付託も含め、人権侵害、人道に対する罪の責任者に対する適切な措置をとるよう、調査委員会の報告を安全保障理事会に送るよう求めています。
2012年の第19会期において、理事会はスリランカに対して2009年に終結した内戦における人権侵害や人道法違反について、同国がつくった「教訓および和解に関する委員会」の勧告にそって調査し、被害者に救済するよう求めていましたが、今回に提出された人権高等弁務官の報告では、委員会の行った285の勧告のうち、政府が実施すると述べた145のなかにも、適切に実施されていない勧告があるほか、重要な勧告の一つである独立した信頼できる調査が行われておらず、現在も宗教的マイノリティに対する襲撃が増えるなど十分な対応がされていないことがあげられていました。
理事会はスリランカに対して、国際人権法、人道法の違反について独立した、信頼のできる調査を行い、責任者を追求すること、ジャーナリストや人権活動家、宗教的マイノリティや宗教施設への攻撃をすべて調査し、そのような攻撃を防止する措置をとること、人権高等弁務官や他の特別報告者などの特別手続に同国政府と協議のもと,助言や技術支援を行うよう求める決議を採択しました。
アフガニスタンやパキスタンなどにおいて、無人航空機が投入され、民間人の死傷者が報告されていることについて、「対テロリズムにおける人権および基本的自由の伸長・保護に関する特別報告者」が、総会に続き人権理事会に対して報告を提出しました。特別報告者は、この問題について国際法に関するコンセンサスがない点があり、締約国に27会期までに意見を送るよう求めました。
理事会は、対テロリズム戦争においてとられる、無人航空機の使用を含むあらゆる措置が国際人権法、人道法を含む国際法の義務に従うよう各国に求め、人権高等弁務官事務所、特別手続や条約機関に無人航空機の使用による人権侵害に注意するよう呼びかけ、第27会期にパネル・ディスカッションを開催することを決めました。
そのほかにも、「十分な生活水準への権利の構成要素としての十分な住居に関する特別報告者」が提出した、都市に住む貧困者の住居の保有の安全に関する指導原則を評価し、各国に政策の策定や実施において考慮するよう促すことを決議しました。原則は、保有の安全は、占有権、使用権、集団的取決めなどによって強化、保護されること、商業活動、開発協力においても損なわれないよう確保することなどをあげています。(3月31日)
出所:
国連人権理事会 25会期 報告(OHCHR)http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session25/Pages/ListReports.aspx
国連人権理事会 25会期 決議(OHCHR)http://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/RegularSessions/Session25/Pages/ResDecStat.aspx
Human Rights Council Concludes Twenty-Fifth Session After Adopting 42 Texts UNOG 3月28日付 http://www.unog.ch/unog/website/news_media.nsf/%28httpNewsByYear_en%29/E124F8EA32C74D77C1257CA90068F353?OpenDocument
参考:
「対外債務に関する国連独立専門家、人権理事会で日本の政府開発援助(ODA)と公的債権について報告」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2014年3月)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2014/03/oda.html
「『北朝鮮における人権状況に関する国連調査委員会』が公聴会を実施」ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2013年9月)https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2013/09/post-48.html
(2014年04月01日 掲載)