総括所見先行未編集版(日本語).pdf
Concluding Observation (Advance unedited Version).pdf
国連人種差別撤廃委員会は、8月20日と21日にスイスのジュネーブで人種差別撤廃条約の実施状況に関する第7・8・9回日本政府報告書の審査を行い、8月29日に総括所見を採択しました。日本についての総括所見が出されたのは2001年と2010年に続き三回目。今回の総括所見は35のパラグラフからなっていますが、そのうち29項目にわたり懸念と勧告が盛り込まれています。
なかでも近年、右翼集団が外国人やマイノリティ、とくにコリアンを標的に、人種主義的なデモや集会などを組織し、差別や暴力を扇動するヘイト・スピーチを繰り返していることについて、委員会は懸念を表明し、日本に対して適切な対策を講じるよう以下のような厳しい勧告を出したことが注目されます。
委員会は、ヘイト・スピーチ規制に関連し、日本が付している条約第4条(a)( b)の留保の撤回の検討を勧告しています。同項は、人種差別の宣伝・扇動の法律による禁止と処罰を定めていますが、日本は「正当な言論までも不当に委縮させる危険を冒してまで処罰立法措置を検討しなければならないほどの状況にあるとは考えていない」との見解から留保を固持し続けています。
委員会はまた、「慰安婦」に対する権利侵害に関する調査、責任者の処罰、謝罪および賠償が実現するよう求めるとともに、教育機会の提供に差別がないよう朝鮮学校に対する「高校授業料就学支援金」の支給を勧告しています。また、アイヌ民族、琉球・沖縄人、被差別部落出身者に対する差別や格差の状況を指摘したうえで、各集団の権利向上のための具体的な施策を勧告しています。
また、公職へのアクセスや国民年金制度の国籍条項の問題、技能実習生に対する労働搾取、人身取引、女性移住者に対する暴力の被害者などの権利救済について述べています。
さらに、パリ原則に準拠した国内人権機関の設立、包括的な人種差別禁止法の制定、個人通報制度の宣言といった人権条約の審査のたびに求められる勧告が今回も盛り込まれています。
総括所見は法的拘束力がないものの、条約の締約国である日本は、勧告に対して誠実に対応することが求められています。
(2014年09月01日 掲載)