パンフレットの内容はこちら→pdf 近畿弁護士会連合会が主催して、2月25日、大阪弁護士会館で、弁護士会会員を中心に市民活動家などが参加したシンポジウム「外国籍だと調停委員(司法委員・参与員)になれないのー多文化社会における調停委員の職務の実態と公権力の行使ー」が開催された。11年間の弁護士会の取り組み、日本が加入している条約監視機関からの勧告についての基調報告、採用を拒否された弁護士や調停委員でもある弁護士などによる問題提起があった。また、わかりやすくこの問題を解説したパンフレット「外国籍だと調停委員(司法委員・参与委員)になれないの?」を最近、日本弁護士連合会が作成し、参加者に配布された。 調停委員とは、市民から裁判所に選任され、民事や家族に関する紛争において、当事者の話を聞いて合意形成をはかる役割で,非常勤公務員とされている。 |
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問題の発端は、2003年に兵庫県弁護士会が、神戸家庭裁判所へ家事調停委員として、これまでの実績から韓国籍の会員弁護士を推薦したところ、神戸家裁が最高裁への申請(採用)を拒否したことにはじまる。それから2014年に至るまで毎年、各地の弁護士会が推薦して拒否された外国籍の弁護士ののべ人数は34人にいたるという。弁護士会は、調停委員等になるのに、法律では国籍(条項)は要件として明記されておらず、「調停」は、公権力の行使をするものではないとして、採用を拒否していることに対し最高裁に申し入れや不服申し立てをしてきたが、10年以上、解決されないままである。 一方、日本が締約国となっている人種差別撤廃条約の下に設置された人種差別撤廃委員会は、2014年8月に、第7回・第8回・第9回日本政府報告を審査したが、それに関する総括所見 で、調停委員の問題に関する懸念を表明している。これは、2010年の第3回~6回に続いて2回目の指摘である。具体的には、「懸念事項及び勧告」の「日本国籍でない者の公的サービスの仕事に対するアクセス」の項で、「…国家権力の行使を要さないいくつかの公的サービスの仕事に対するアクセスにおいて、日本国籍でない者が直面する制限及び困難について懸念する。委員会はとりわけ、家庭裁判所における調停委員として行動する能力を有する日本国籍でない者を排除するとの締約国の立場及び継続する実務について懸念する」とし、その立場を見直すことを日本政府に勧告している。 かつて、司法修習生の採用にも国籍の壁があった。司法試験に合格し、弁護士になろうとするなら外国籍の人たちは、帰化を選ばざるをえなかった。その風穴を開けたのは、在日2世の韓国籍の司法試験合格者であった。今回の調停委員の問題については、まずその事実を多くの人が知らないといわれている。作成されたパンフレットの活用を主催者が願っている。 |
(2015年03月03日 掲載)