2015年6月にドイツのエルマウで開催されたG7サミット(主要先進国首脳会議)の「首脳宣言」にある「責任あるサプライ・チェーン」の課題を、2016年5月に開催される伊勢・志摩サミットでも取り上げ、その中で言及されている「ビジネスと人権に関する国別行動計画」(National Action Plan on Business and Human Rights-NAP)を日本政府も早急に策定し始めるべきだとする提言「G7 伊勢・志摩サミットの『責任あるサプライ・チェーン』アジェンダに関する提言」が、NGO団体などから出されました。
エルマウ・サミット「首脳宣言」では、「世界経済」「外交政策」「保健」「気候変動、エネルギー、環境」「開発」のテーマごとに、いま世界が直面し、G7各国が共有する諸課題が述べられていますが、その冒頭「世界経済」には「責任あるサプライ・チェーン」の項目が含まれています。そこでは、G7国として、世界のサプライ・チェーンにおける労働者の権利や環境保護を重視すること、国連ビジネスと人権に関する指導原則を強く支持し、企業に対して人権デュー・ディリジェンスの実施を求めること、が具体的な方策も含めて日本語で約1600字(外務省仮訳による)にわたって述べられています。また、そうした持続可能で責任あるサプライ・チェーンを推進するために、「ビジネスと人権に関する国別行動計画」を策定する努力を歓迎する、とも述べられています。
本「提言」では、「グローバル化のなかで、国境を越えて伸長してきたバリュ―・チェーンの先に連なる農園や資源採掘の現場、工場、廃棄の現場などでは、児童労働による子どもの権利の侵害、強制労働、土地収奪、環境汚染、劣悪な安全衛生などさまざまな人権侵害や環境破壊が引き起こされています。」と世界の深刻な現実を述べた上で、そうした現実に対処する「責任あるサプライ・チェーン」の課題を伊勢・志摩サミットでも引き続き取り上げるとともに、G7国では、すでに政策枠組みの中に「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた指針を有するカナダと、そして日本の2国だけが策定していない「国別行動計画」(NAP)について、伊勢・志摩サミットを控える中、日本政府として早急に策定プロセスを開始するべきことを提言しています。また、そのことが議長国としての責務であるとも述べています。
<参照>
「G7 伊勢・志摩サミットの『責任あるサプライ・チェーン』アジェンダに関する提言」(英・日)
(Business and Human Rights Resource Centreサイト)
http://business-humanrights.org/en/business-and-human-rights-at-the-2016-g7-summit-at-ise-shima-japan#c132408
「ビジネスと人権に関する国別行動計画」(NAP)については下記もご覧ください。(当サイト)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2016/01/nap.html
(2016年02月04日 掲載)