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日本政府発表の2015年の人身取引のケースと女性差別撤廃委員会の勧告
人身取引の被害者は日本人を含めて49人-警察庁
警察庁と法務省は毎年2月から3月にかけて前年における人身取引事犯に関する概要をそれぞれのホームページで公表しています。
警察庁の2016年2月18日の発表によると、2015年の人身取引事犯の検挙件数は44件、検挙人員は42人で、被害者は49人でした。被害者の内訳は、女性46人・男性3人で、国籍はフィリピン28人、日本13人、タイ8人。主な年齢層は20歳未満14人、20~29歳21人でした。日本人被害者は出会い系サイトを通じて売春を強要されるケース、外国人被害者はホステスとして働くことを強要されたケースが目立つとしています。
人身取引は、検挙者数および被害者数ともに政府の「人身取引対策行動計画」が施行された直後の2005年をピークに減少傾向でしたが、2007年以降で最多となりました。
2015年は、日本人を父親にもつJFC(ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン)の支援を標榜した人身取引事犯において、岐阜・広島県警合同捜査本部がフィリピン人24人(女性22人、男性2人)を被害者として認知した、と警察庁は被害者人数の増加の背景を報告しています。
外国籍の被害者は26人-法務省
一方、法務省が2016年3月15日に発表した「2015年に保護又は帰国支援した人身取引被害者数等について」によると、同省入国管理局が帰国支援を含む保護の手続きをとった外国籍被害者はフィリピン人17人(前年7人)、タイ人8人(前年1人)、スリランカ人1人(前年なし)の合計26人(前年9人)でした。性別は女性23人・男性3人。在留資格別の内訳は、短期滞在9人、日本人の配偶者等(日本人の子どもを含む)3人、定住者2人、技能(「技能実習」とは異なる在留資格)1人、「不法入国」2人、「不法残留」9人でした。「不法入国」と「不法残留」の被害者には在留特別許可を与えた、と入国管理局は報告しています。
なお、警察庁と法務省の被害者認知数は毎年誤差が生じています。
技能実習制度における人身取引に着目する国連条約機関
そうしたなか、国連女性差別撤廃委員会が2016年2月16日に女性差別撤廃条約の実施状況に関する日本報告審査を行い、3月7日に総括所見を発表しましたが、人身取引(労働搾取と性的搾取)に関して防止策や訴追の強化などを日本に勧告しています。
そのなかで、「外国人技能実習制度のもとで女性の人身取引に取り組むために、定期的な監視などを強化すること」と技能実習制度に焦点を当てています。また、自由権規約委員会も2014年、「労働搾取目的の人身取引事例やその他の労働法違反については実効的に捜査、訴追し、制裁措置をとるべき」という勧告を採択しており、技能実習制度における人身取引の問題を指摘しています。自由権規約委員会は、勧告のなかで1年以内に改善措置のフォローアップに関する情報を提供するよう日本政府に求めています。
そのような勧告が出されているなか、警察庁や法務省は、搾取にあった技能実習生を人身取引の被害者としては認定していません。
<参考>
女性差別撤廃委員会の総括所見(16 年 3 月 7 日 原文: 英語 先行未編集版 )
人身取引と売買春による搾取
26.委員会は、締約国による 2014 年 12 月の人身取引対策行動計画採択と人身取引推進会議の設置 に留意する。委員会は、国会に法案を提出し、外国人技能実習制度を改善しようとする締約国の努 力を歓迎する。しかし、委員会は、締約国が依然として労働及び性的搾取の目的で人身取引の被害 者、特に女性と少女の供給国、通過国および受け入れ国であることをはじめ、以下のことを懸念する。(a)女性が依然として娯楽産業、特に売買春および映像ポルノグラフィ製作において性的搾取の対 象になっていること。(b)外国人技能実習制度の下で締約国に来る女性および少女が、依然として強制労働および性的搾 取の対象となっていること。
27.委員会は、以下のことを締約国に勧告する。(a)特に外国人技能実習制度の下で募集される女性および少女の人身取引に対処するために、定期的な労働監督その他の努力を強化すること。(b)性的搾取を防止するために、成人用娯楽を提供し、映像ポルノグラフィを製作する事業所を対 象とする、監視および検査プログラムを強化すること。(c)地域の他の国々との情報交換や人身取引業者を起訴するための法手続きの調整を含め、二国間、 地域内および国際協力を目的とする努力を継続すること。(d)次回定期報告で、外国人技能実習制度の下で予定されている改善の実施についての情報を提供すること。(e)「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人、(特に女性及び児童)の取引を 防止し、抑止し及び処罰するための議定書」を批准すること。
翻訳:日本女性差別撤廃条約 NGO ネットワーク(JNNC)暫定訳(2016.3.15 版)
日本に移住するJFC(ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン)母子をめぐる搾取 国際人権ひろば No.121(2015年05月発行号)
女性差別撤廃委員会 第7次・第8次日本定期報告に関する総括所見
日本女性差別撤廃条約 NGO ネットワーク(JNNC)暫定訳
3月21日国連自由権規約委員会が日本政府のフォローアップ情報を審査します(ヒューライツ大阪 お知らせ)