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国連人権理事会の特別報告者、日本の生活保護削減の方針の見直しを求める(5月24日)
国連人権理事会の「極度の貧困と人権の特別報告者」であるフィリップ・オルストン氏をはじめとする4人の専門家が2018年5月24日、日本政府が生活保護のなかの日常生活に必要な費用である生活扶助費を10月から段階的に引き下げようとしていることに対して、貧困層、特に障害者、ひとり親世帯、高齢者などの最低限の社会保障を脅かすとして、見直しを求める声明を出しました。
この声明は、日本政府が2017年12月に生活扶助の支給額を、今後3年間で最大5%引き下げる方針を決定したことを受け、この措置によって現時点の受給世帯の約3分の2で生活扶助額が減額される見通しになると警告を発したものです。
専門家は、扶助費の削減は、2013年に実施された生活保護の予算削減に続くもので、年収の最も低い10%層の消費支出にあわせて生活保護基準を見直すという方式の正当性に疑問を呈するとともに、その方式では日本はますます多くの人々を貧困に陥れることになる、と主張しています。
さらに、「高齢者の貧困と社会的排除により、またも多くの人々が声を上げられないまま苦しむこと になろう。これらの政策が修正されなければ、貧困に最も影響を受けやすい人々、特に女性 の高齢者、女性世帯主世帯、女性の障害者などを傷つけるだろう」と強調しています。
専門家は、国際義務に基づき、生活扶助費の引き下げについて人権の観点から包括的な評価を行い、負の影響を緩和するための必要な対策を講じるよう日本政府に要請しました。
国連特別報告者および独立専門家は、人権理事会に任命され、特定の国や地域における人権状況や、テーマ別に人権状況について調査、報告、勧告などを行う専門家です。
今回共同で声明を発表した国連の専門家は次の通りです。フィリップ・オルストン氏(極度の貧困と人権の特別報告者)、ホアン・パブロ・ボホスラブスキー氏(対外債務と人権の独立専門家)、カタリーナ・デバンダス氏(障害者の権利の特別報告者)、ローザ・コーンフェルド・マッテ氏(高齢者の人権の独立専門家)。
報道によると、5月29日の参議院厚生労働委員会で、倉林明子議員から要請への対応を聞かれた加藤厚労相は「一方的な情報に基づく発表だ」と述べ、「大変遺憾であり、国連人権高等弁務官事務所に対して抗議を行った」と答えています。
<出典>
Japan: Benefit cuts threaten social protection of the poor, UN rights experts warn
(上記ページに日本語翻訳文のリンクあり)
日本:「貧困層の社会保障を脅かす生活保護削減」国連の専門家が警告
国連の生活保護削減見直し要請に安倍政権が居直りの抗議(赤旗 2018年6月1日)