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国連総会採択に向け、「難民グローバル・コンパクト」最終文書まとまる(7月20日)
2018年7月20日に、「難民に関するグローバル・コンパクト(Global Compact on Refugees:GCR)」(以下、難民グローバル・コンパクト)の最終文書(先行版)が公表されました。
1. 難民グローバル・コンパクトとは?
難民グローバル・コンパクトは、2016年9月に開催された難民と移民に関する国連サミットで採択されたニューヨーク宣言を受け、2018年の採択を目指し、「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト(Global Compact for Safe, Orderly and Regular Migration/GCM:「移住グローバル・コンパクト」)」と平行する形で議論が進められてきました。最終文書がまとまるまで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が事務局となり、ジュネーブにある国連欧州本部にて、2018年2月から7月まで国連加盟国による難民グローバル・コンパクトの公式協議が合計6回開催されました。この公式協議には、NGOもオブザーバーとして参加することができ、日本からは、認定NPO法人ジャパン・プラットフォーム、認定NPO法人難民を助ける会(AAR Japan)、認定NPO法人難民支援協会よりそれぞれ代表が参加しました。そうして、まとめられた最終文書は、8月に作成されるUNHCRの年次報告に附属書として含まれ、国連総会で12月をめどに採択されることになります。
最終文書は、A4サイズで24ページあり、1951年の難民の地位に関する条約(難民条約)の難民の定義を変更したり、UNHCRのマンデート(任務)を広げたりするものではないことを前提にまとめられました。また、難民グローバル・コンパクトは、移住グローバル・コンパクト同様、法的拘束力がないことが文中に明記されています。
2. 難民グローバル・コンパクトで何が決まったのか?
難民グローバル・コンパクトは、2011年のシリア危機以降増え続ける難民を受け入れて続けている国々(そのほとんどが難民発生国の近隣にある開発途上国です)の負担や責任を、世界全体で分担していくための枠組みについてとりまとめたものです。
具体的には、その枠組みを通じて、受入国の負担軽減、難民の自立強化、第三国への受け入れ機会の拡大、安全で尊厳ある帰還のための出身国での条件整備という4つの目的を実現していくとされています。
この枠組みを動かすため、大きく2つのしくみが盛り込まれました。1つが国際的な対応をするグローバル難民フォーラム(Global Refugee Forum/GRF)で、もう1つが、大規模な難民の流入といった緊急事態や、庇護を求めた先の難民キャンプなどで長期にわたり難民として生活する状態が発生した時など、特定の難民状況への包括的な対応のためのアレンジメントです。
(1) 国際的な対応「グローバル難民フォーラム」
2019年に第1回目を開催する閣僚級会合のことで、ここで各国が難民グローバル・コンパクトの目標を達成するため、どのような負担・責任分担をしていくかについての公約を発表することになりました。この閣僚級会合の開催頻度については最後まで各国の意見が対立していましたが、最終的には、4年に1回開催され、各国の公約の進捗状況を評価していくことになります。また、次のグローバル難民フォーラムが開催されるまでの間、2年毎に高官会合を開催し、中間見直しを行うことになりました。最初の高官会合は2021年に開催される予定です。公約は、日本も掲げることになります。
(2)特定の難民状況への包括的な対応のための取決め
これは、大規模な難民の流入といった緊急事態や長期化する難民状態が発生した時に、対応するための取決めで、「国による対応」と「サポート・プラットフォーム」そして、「国を越えた地域的アプローチ」の3つがあります。
① 国による対応
まず、大量の難民の流入や長期化する難民状況が発生した国が行うのは、その国主導で行う「国による対応」です。UNHCRや専門機関、NGOなど関係者の支援を受けつつ、全ての関係者の支援活動を調整、促進し、包括的な対応を行います。
② サポート・プラットフォーム
この「国による対応」をサポートするものとして作られることになったのが、「サポート・プラットフォーム」です。受入国の対応能力を超える大規模で複雑な難民状況が起こっている、あるいは受入国がかなり追加的な支援を必要とするような長期化する難民状態が起こっている、また大規模な国籍国への自主帰還など解決の機会が生じたと判断された場合、受入国からの要請を受けてUNHCRによって始動されます。このプラットフォームは常設の組織ではなく、非常時に要請に基づいて立ち上がる組織で、対応する状況によって関係する国や専門機関、NGO関係者も違ってきます。プラットフォームの活動は、定期的にUNHCRの執行委員会、国連総会、そして、グローバル難民フォーラムに報告されることになっています。
③ 国を越えた地域的アプローチ
大量の難民の流入や長期化する難民状況が発生状況は地域によって違います。他の地域で行われている事例を違った視点として紹介し、それぞれの活動に一貫性を持たせるために、UNHCRがグローバル難民フォーラムなどで定期的に地域の好事例の共有を行うことになっています。
(構成:認定NPO法人難民支援協会難民研究フォーラムリサーチフェロー、大阪大学大学院博士後期課程 河尻(川阪)京子)
<出典>
Refugees and Migrants – Global Compact on Refugees (英文)
Towards a Global Compact on Refugees (英文)
Formal Consultations on the Global Compact on Refugees (英文)
UNHCR Global Trends Forced Displacement 2017 (英文)
Global Compact on Refugee Advance Version (2018年7月20日) (英文)
難民研究フォーラム 2018年公開シンポジウム
難民保護の国際潮流を改めて知る「難民受け入れにおける責任の分担は可能か? 〜難民に関する国際約束(グローバル・コンパクト)採択へ向けて〜」(2018年4月21日)
認定NPO法人難民を助ける会(AAR Japan)「国連「難民に関するグローバル・コンパクト」の公式協議にオブザーバー参加します」(2018年4月26日)
認定NPO法人難民を助ける会(AAR Japan)「難民グローバル・コンパクトとこれからの難民支援:第4回公式協議にオブザーバー参加報告」(2018年6月19日)
<参照>いずれもヒューライツ大阪のニュース・イン・ブリーフ
移民および難民に関する国連「グローバル・コンパクト」の原案まとまる(2018年1〜2月)
国連「移住グローバル・コンパクト」の文案合意(7月13日)2018年12月採択へ