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日本政府と市民社会がビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)に関する文書を公表

 日本政府は2016年11月、国連ビジネスと人権フォーラムの場で、今後数年以内にビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)を策定することを表明しました。その後、国別行動計画の策定はSDGs(持続可能な開発目標)の具体的な施策の一つに位置づけられ、また2018年3月から8月まで10回にわたり、「ビジネスと人権に関するベースラインスタディ意見交換会」が、日本経団連、連合、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン、日弁連、ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォームなどの団体と政府各省庁が参加して開催されました。
 この「意見交換会」は「ベースラインスタディ(現状把握調査)」の一環と位置づけられ、「公共調達」「法の下の平等(障害者、LGBT、女性)」「労働(児童、外国人労働者(外国人技能実習生を含む))」「救済へのアクセス」「国際約束における人権の扱い」「サプライチェーン」「中小企業」というテーマが政府により設定されました。

政府の報告書

 2018年12月27日、日本政府(外務省総合外交政策局人権人道課)は「ビジネスと人権に関するベースラインスタディ報告書―ビジネスと人権に関する国別行動計画策定に向けて」を公表しました。この文書は「国別行動計画策定の第一段階として、企業活動における人権保護に関する我が国の法制度や施策等についての現状を確認すべく、政府主導にてベースラインスタディ(現状把握調査)を実施する旨決定し、本報告書は、その結果をまとめたもの」と位置づけられており、外務省ウェブサイト「ビジネスと人権」ページから「全体版」と「概要版」をダウンロードすることができます。
 155ページの「全体版」では、国別行動計画の策定に至った経過や、上記「意見交換会」でのテーマごとの「政府の取組」の概要の説明とともに、「国家の義務」に関して59ページ、「救済へのアクセス」に関して26ページにわたり、「デスク・レビュー」の結果としての「ベースラインスタディ(現状把握調査)」とされる内容が記述されています。そこでは、ICAR(国際企業説明責任円卓会議)とデンマーク人権研究所が作成したツールキットに沿って、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の「国家の義務」と「救済へのアクセス」部分に関連する121項目にわたって、政府が設問に答えるかたちで、法的その他の制度枠組みの現状が説明されています。また、「意見交換会」に参加していた団体の、策定プロセス及び各テーマに関する見解も所収されています。
 なお、この報告書を踏まえた「ビジネスと人権に関する国別行動計画に盛り込むべき優先分野・事項」を対象とするパブリックコメントの募集も始まっており、2019年1月31日が締め切りとなっています。

市民社会からの提言

 上記の政府報告書に先立ち、2018年11月25日に、ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォームから「ビジネスと人権に関する国別行動計画(NAP)策定への市民社会からの提言」が公表されています。そこでは、これまでの国別行動計画策定プロセスが十分な「参画可能性と透明性」を確保していたか、などを問い直すとともに、取り上げるべきテーマなどについて今後の策定プロセスへの具体的な提言を行っています。また、上記「意見交換会」で取り上げられなかったテーマなど、政府報告書に所収されていない内容も大幅に含めて市民社会としての見解を示しています。

 ベースラインスタディ(現状把握調査)の結果が公表されたことで、国別行動計画の策定は次の段階へ進むことになります。次の段階とは、国連ワーキンググループの「ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針」によれば、企業活動による人権への負の影響を特定し、そこから明らかになる課題を念頭におきながら、政府の法的その他の制度枠組みのギャップ(不十分性)、及び企業の取り組みのギャップを特定すること、とされています。そしてその後、取り上げるべき具体的な優先分野を定め、国別行動計画の策定へと進むことになります。

<参照>

<参考>

(2019年01月04日 掲載)