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韓国の憲法裁判所が、刑法に定める「堕胎罪」に対し違憲判決を出す

 2019年4月11日、韓国の憲法裁判所は、刑法に定められている「堕胎(妊娠中絶)罪」に対し、憲法に合致しないという決定をくだし、2020年12月31日までに法改正をするように求めた。現行の刑法では、女性が薬物を使うなどして自ら妊娠中絶をした場合は1年以下の懲役または200万ウォン(約20万円)以下の罰金に処せられ、医師などが女性の依頼や承諾があって中絶をした場合、2年以下の懲役に処するとなっている。今回、憲法裁判所の9人の裁判官の内、7人が違憲(「憲法不合致」4人、「単純違憲」3人)とし、2人が合憲と判断した。

 この判決の直接の契機になったのは、2013年11月から約1年8か月の間に、69件の堕胎をおこなったということで産婦人科の医師が、刑法違反で起訴された事件である。その裁判中に、当該医師は、刑法に定める堕胎罪が憲法違反であると主張し、最終的に2017年2月に、刑法の該当条項の違憲確認を求める憲法訴願審判を憲法裁判所に請求した。

 また2017年9月には、女性、人権、医療、労働など様々な分野の団体が参加して、「みんなのための堕胎罪廃止共同行動」(以下、「共同行動」)が結成され、堕胎罪廃止運動が進められてきた。「共同行動」は「堕胎が罪というなら、犯人は国家だ」というスローガンを掲げ、国家による女性の身体に対する管理を問題とし、女性の自己決定権の保障を追求して、憲法裁判所の判決結果を注視していた。この度の判決について、「共同行動」は、韓国の刑法に堕胎罪が規定されて以来66年ぶりの、そして2012年の憲法裁判所の「堕胎罪」合憲判決から7年ぶりの歴史的な判決であるとし、これを歓迎するという声明を出している。韓国の憲法裁判所は、大法院(最高裁判所)とは別に、違憲立法審査などの裁判を行う独立した機関である。韓国では軍事独裁政権時代に憲法裁判が機能せず、権力による人権侵害を防げなかったという経験を経て、独裁政権に終止符を打った1987年の新憲法のもとに設置された。

 「共同行動」は、国に対し、今後なすべき対応をいくつか要求している。具体的なものを挙げると、妊娠中絶の完全な非犯罪化、安全な妊娠中絶、中絶後の健康管理、避妊・妊娠・中絶・出産に関する安全な情報提供と相談体制の整備、そして、政策における性平等とリプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康/権利)の保障のための各省庁連携システム作りなどである。


(出典)
「みんなのための堕胎罪廃止共同行動」(韓国語)
https://www.facebook.com/SafeAbortionOnKorea 
「韓国女性民友会」
http://www.womenlink.or.kr/minwoo_actions/19423 (韓国語)
https://www.womenlink.or.kr/statements/21848?f_query=낙태죄 (韓国語)
「憲法裁判所 報道資料」(韓国語)
https://www.ccourt.go.kr/cckhome/kor/ccourt/pressrelease/selectPressreleaseList.do

(2019年05月16日 掲載)