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国連の人権専門家、マレーシア政府に対して「COVID-19パンデミックとの闘いのなかで移住者、ジャーナリスト、市民社会に対する弾圧を止めよ」と要請(5/21)
マレーシア当局が非正規移住者を収容した施設内で集団感染が起きている事態に対して、国連移住者の人権に関する特別報告者などが共同で5月21日、収容の代替措置をとるようマレーシア政府に要請しました。以下、翻訳と背景情報です。
ジュネーブ(2020年5月21日) - マレーシア政府は、COVID-19パンデミック(新型コロナウイルス感染症の世界的大流行)との闘いの中で、移住者、ジャーナリスト、市民社会に対する現在行っている取り締まり・弾圧を止め、移住者に対する排斥やヘイトスピーチに強く反対すべきである、と国連の専門家は5月21日に述べた。
移住者の人権に関する特別報告者フェリペ・ゴンサレス・モラレス氏は、「マレーシア政府は当初、パンデミックへの包括的な対応に向け前向きな姿勢をとっていたが、いま起こっていることに驚いている」と述べる。
「現在の取り締まりとヘイトキャンペーンは、マレーシアによるパンデミックと闘う努力を著しく損なっている」と述べる。「私たちはマレーシア当局に対し、ロックダウンされた地域を強制捜索して移住者を逮捕・収容することを控えるよう強く求める」。
ゴンサレス・モラレス特別報告者は、5月1日から始められた3回の捜索は、今後の捜索活動の脅威と同様に、移住者コミュニティの間で恐怖を拡大していると述べる。「このような状況では、移住者はコロナウイルス感染の症状が出ていても、検査のために名乗り出たり、医療サービスにアクセスしたりすることができなくなる」と語る。
恐怖に包まれた雰囲気は、ここ数週間で移住者に対するヘイトスピーチが著しく増えていることで、さらに悪化している。人権擁護者は移住者を支援していることで脅され、ジャーナリストは強制捜索について報道することを妨げられてきた。脅迫や憎悪に基づく発言は、政府や政党、公務員などの関係者によっても行われている。
特別報告者の今回の要請は、他の国連人権専門家(注)によっても支持されており、専門家たちは、子どもや高齢者、その他の脆弱な人々を含む350人以上の移住者が、過密な入管施設に収容されていることにも懸念を表明している。
ゴンサレス・モラレス特別報告者は、「収容の代替手段は常に第一に検討されるべきだ。物理的な距離やその他の予防措置が収容施設では確保できないことから、パンデミックに直面している場合には、代替手段はさらに重要である」と述べた。
報道によると、拘束された移住者を出身国に強制送還する計画も示されており、移住者が弁護士にアクセスできるかどうか、また拘束や強制送還に異議を唱えることができるかどうかは依然として不明である。
「移住者が個々のケースごとに評価されずに強制送還されれば、マレーシア政府は事実上、移住者を出身国での拷問やその他の虐待の危険にさらすことになる。これは、ノン・ルフールマン原則(難民を生命または自由が危機にさらされるおそれのある国に送還してはならない)に反することになる」と特別報告者は結論づけた。
国連人権専門家たちはこの問題を注視し、関係当局に伝達している。
(注)「身体的・精神的健康の権利に関する特別報告者」、「人権擁護者の状況に関する特別報告者」、「人種主義・人種差別・外国人排斥・関連する不寛容の現代的形態に関する特別報告者」、「拷問およびその他の残酷な、非人道的または品位を落とすような処遇・処罰に関する特別報告者」、「恣意的拘禁に関する作業部会」が共同で要請している。
背景情報:入管収容施設で集団感染が発生
マレーシアの非正規移住者が収容されている3カ所の入管施設でコロナウイルスの新たな集団感染がここ数日の間に発覚した。
マレーシアが5月、都市封鎖された地域で強制捜索を実施し、正規に滞在していない2,000人以上の外国人を逮捕したことに端を発している。入管施設は混雑していて、一つの部屋に何十人も詰め込まれ、社会的距離をとることができない状態に置かれている。
保健省のアブドラ局長は、何千人もの拘禁者を収容している入管施設において、即時の医療処置と消毒を行うべきであると強調し、移住労働者は健康管理の面で差別されるべきではないと述べている。
マレーシア政府は5月25日、新たに172人 の新型コロナウイルス感染のケースを発表したが、そのほとんどが入国管理局に拘束されている外国人である。内訳は、ブキット・ジャリルセンターが1,400人の収容者のうち60人、セメニイ拘禁センターが1,600人の収容者のうち49人で、セパン入管施設では6人の感染が確認されている。
労働運動活動家たちは、マレーシアで非正規に働いている外国人たちが、検査を受けるために自発的に名乗り出るのではなく、当局から隠れてしまうのではないかと危惧するとともに、パンデミックの中で非正規移住者を逮捕しようとする政府の動きを非難している。
その一方で、一部のマレーシア人は、外国人労働者の強制送還を求めたり、移住者がウイルスを媒介していると非難し、経済不況の中で地元の人々から仕事を奪っていると非難している。
マレーシアには、正規の移住労働者が約220万人で、非正規の移住労働者が約300万人いるとみられている。
<出典>
Malaysia / COVID-19: “Stop crackdown on migrants, journalists and civil society” – UN rights experts (OHCHR)
<背景情報の出典>
Malaysia's health chief warns against discrimination of migrant workers amid coronavirus outbreak at detention centres (Straitstimes) May 25, 2020