MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

  1. TOP
  2. 資料館
  3. ニュース・イン・ブリーフ
  4. 自由権規約委員会、「国内人権機関の設置」をはじめ多数の勧告からなる「総括所見」を公表(11/4)

ニュース・イン・ブリーフ サイト内検索

 

Powered by Google


ニュース・イン・ブリーフ Archives


自由権規約委員会、「国内人権機関の設置」をはじめ多数の勧告からなる「総括所見」を公表(11/4)

繰り返される同じ勧告
 国連自由権規約委員会は11月3日、ジュネーブの国連欧州本部で記者会見を開き、136会期(2022年10月10日~11月4日)で審査した日本をはじめフィリピンやロシアなど6か国の「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)の実施状況についての総括所見を公表しました。
 自由権規約は、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)とあわせて「世界人権宣言」の内容を基礎として条約化されたもので、人権条約の中で最も基本的で包括的な条約です。生命の権利、身体の自由、表現、集会・結社の自由、参政権と公務就任の権利、民族的マイノリティの権利などを保障する条文で構成されています。本体の条約に加えて、第1選択議定書(個人通報制度)と第2選択議定書(死刑廃止)が採択されています。
 日本は1979年に批准し(第1・第2選択議定書は未批准)、自由権規約員会による政府報告審査は今回で7回目のことです。総括所見は、2014年の第6回報告審査以降の新たな施策や法整備を肯定的側面(パラグラフ3)としてあげる一方、文書の大半にあたるパラグラフ4から45にかけて懸念と勧告が列挙されています。冒頭には、前回の総括所見でも強調された個人通報制度を規定した第1選択議定書の批准(パラ4&5)、およびパリ原則に沿った国内人権機関の設置(パラ6&7)、あらゆる理由に基づく差別を禁止する包括的な反差別法の制定(パラ8&9)などが盛り込まれています。

マイノリティの権利に関する勧告
 この報告では、人種差別・民族差別の課題をはじめとするマイノリティの権利に関わる勧告の概要を紹介します。
「ヘイトスピーチとヘイトクライム」(パラ12&13)に関しては、2016年制定の「ヘイトスピーチ解消法」の適用対象を、外国ルーツの人たちだけでなく、被差別部落出身者、琉球民族など先住民族、性的マイノリティなどにも拡大するとともに、ヘイトスピーチとヘイトクライムを明確に犯罪化するための刑法改正を求めています。
「性暴力およびDVを含む女性に対する暴力」(パラ18&19)では、性暴力、DV被害を受けた移民女性に関して、法執行官の認識の欠如を懸念し、法的地位(在留資格)にかかわらず、すべての被害者に迅速かつ適切な援助、支援、保護を提供するよう勧告しています。
「奴隷、隷属、人身取引の撤廃」(パラ30&31)は、技能実習制度に関して、実地検査の件数拡大を評価する一方、強制労働が続いていることに引き続き懸念し、その認定手続きの強化および労働基準監督官などへの研修を求めています。
「難民および庇護希望者など外国人の処遇」(パラ32&33)では、2017年から2021年にかけて3人の被収容者が死亡するなど、入管収容施設における健康状態を顧みない劣悪な処遇を懸念し、国際基準に沿った包括的な難民保護法の整備、適切な医療へのアクセスなど収容施設の処遇改善、仮放免者への支援と収入確保の機会設定を検討することなどを勧告しています。
「マイノリティの権利」(パラ42&43)では、アイヌ、琉球、その他の沖縄コミュニティの伝統的土地・天然資源に対する権利を完全に保障し、人々に影響を及ぼすあらゆる政策に事前情報を受けたうえで参加する権利の保障、および子どもたちに自己の言語による教育を可能な限り促進するさらなる措置をとるべき、と勧告しています。
 また、植民地時代から日本に居住し、民族的マイノリティとして認識されるべき在日コリアンとその子孫に対して、利用できるはずの複数の支援プログラムや年金制度を利用できるようにするとともに、永住コリアンとその子孫に地方選挙の投票権を認めるよう法改正を検討すべきと勧告しています。
 
 委員会は、日本政府に対して、「国内人権機関」と「難民および庇護希望者など外国人の処遇」の勧告の実施状況について2025年11月4日までに報告するよう求めています(パラ47)。

<参考>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/index.html
国際人権規約(外務省)
https://sites.google.com/view/ncfoj/observation?authuser=0
国連自由権規約委員会第7回日本政府審査の総括所見の仮訳
(「表現の自由と開かれた情報のためのNGO連合」(NCFOJ))

<参照> ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2022/10/7ngo1010.html
自由権規約の第7回日本政府報告審査に先立ちジュネーブでNGOブリーフィング開催(10/10)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2022/10/11013.html
国連自由権規約委員会、日本報告審査を開催(第1日目・10月13日)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2022/10/101410.html
国連自由権規約委員会、日本報告審査を終える(第2日目・10月14日)-10月28日に総括所見採択


(2022年11月14日 掲載)