2024年9月9日から10月11日に開催された第57会期国連人権理事会において、「人権教育のための世界プログラム」の第5段階の行動計画が採択されました。
「人権教育のための世界プログラム」は2005年から開始され、第1段階では初等・中等教育における人権教育、第2段階では高等教育における人権教育および教員、教育関係者、公務員、法執行官、軍関係者のための人権研修、第3段階はそれまでの取り組みの強化とメディア関係者およびジャーナリストの人権研修、第4段階は若者への人権教育を通したエンパワメントに焦点を当て、各国に人権教育を促進するよう呼びかけていました。
人権理事会は2023年の第53会期(6月~7月)において、同プログラムの第5段階の重点領域を第4段階に引き続き、若者と子どもとし、特にデジタル技術、環境や気候変動とジェンダー平等に焦点を当てること、また「持続可能な開発に関する2030アジェンダ」と連携させることを決め、第57会期には、その行動計画が提出されていました。
行動計画は、それらの要素としてまず、各国に子どもと若者のための人権教育に関する政策を策定し、実施・モニターすることを求めています。
人権とデジタル技術に関する教育では、子どもや若者が得る知識として、デジタル世界における自分の権利、デジタル技術による人権を促進する可能性、社会への否定的な影響などに着目しています。学ぶスキルとして、様々な技術を活用して情報を検索し、批判的に評価し、作り、発信すること、オンライン上の誤情報や偽情報を発見すること、そして情報を得る態度としてオンライン上での他者の権利と尊厳の尊重および差別や暴力、有害な行動に取り組むことなどがあげられています。
環境と気候変動については、清潔で健康的な持続可能な環境への権利とそれが他の権利とどう関わっているのかを知り、どのように環境や気候変動に関する情報にアクセスする権利を行使するかなどを学ぶとしています。
また、ジェンダー平等については、いかなる区別もなく、あらゆる多様性をもつすべてての人がすべての権利を平等に享受する権利、ジェンダーに基づく暴力、様々な分野におけるジェンダー格差などの歴史的な原因やその発展についての知識、ジェンダー・バイアスなどを特定し、それを変えていくスキル、特に女性や少女にとって、男性や少年と平等に様々な権利を要求し、行使するスキル、およびジェンダー不平等や差別的なジェンダー規範に立ち向かう自信をもつことなどをあげています。
人権理事会は、行動計画を考慮し、2025年から2029年までの世界プログラム第5段階を開始し、各国に人権教育の取り組みを開発し、実施するよう呼びかける決議を採択しました。また、第4段階に関する各国の任意の評価報告の期限が2025年4月であることを念押ししています。さらに、第63会期(2026年)には「国連人権教育とトレーニングに関する宣言」の50周年を記念するハイ・レベル・パネル・ディスカッションを開催することを決めました。
第57会期人権理事会ではそのほか、スリランカ、スーダン、アフガニスタン、ベネズエラ、ロシアなどの人権状況、政治や公的な活動への平等な参加、家庭内暴力の撤廃などに関して、合計37本の決議を採択しました。
(構成・岡田仁子)
<出典>
https://documents.un.org/doc/undoc/gen/g24/189/97/pdf/g2418997.pdf
Resolution adopted by the Human Rights Council on 9 October 2024 57/10.
World Programme for Human Rights Education: the plan of action for the fifth phase
https://documents.un.org/doc/undoc/gen/g24/128/37/pdf/g2412837.pdf
Plan of action for the fifth phase (2025-2029) of the World Programme for Human Rights Education- Report of the Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights
<参考>
https://www.mext.go.jp/content/20200310-mxt_jidou02-000100368_04.pdf
「国際社会の主な動向」関係資料(文科省)
「人権教育のための世界計画」第1フェーズ~第4フェーズ
(2024年11月07日 掲載)