1月15日、最高裁判所第一小法廷は、在留期間が経過した後も日本に滞在を続けた上告人が、国民健康保健の被保険者証交付を拒否されたことについて、被保 険者を規定する国民健康保険法5条の「市町村または特別区の区域内に住所を有する者」にあたるとし、交付の拒否を違法としたが、それを判断した自治体職員 の過失は認めず、損害賠償の請求を退けた。外国人に対する国民健康保健の適用に関して、厚生省の通知は適用対象を外国人登録を行っており、入国当初の在留 期間が1年以上の者、あるいは登録を行っており、在留期間が1年未満であるが、入国目的などに照らして1年以上滞在すると認められる者と規定しているが、 今回初めて在留資格を有しない者でも国民健康保健に加入が認められることが判断された。
判決は、同法5条が市町村に「継続的に生活の本拠を有する者をいうものと解するのが相当」とし、当初6条に定める適用除外に日本の国籍を有しない者の規定 が含まれていたものの、その後難民の地位に関する条約の批准などを経てその規定が削除されたことから、在留資格を有しない者を一律に除外すると解釈するこ とはできないとした。しかし、「住所を有する者」とは単に居住しているというだけではなく、外国人登録をして、在留特別許可を求め、また入国の経緯や入国 時の在留資格、在留期間、家族の状況、生活状況などに照らして、その市町村で安定した生活を継続的に営み、将来にわたってそれを続ける可能性が高いと認め られることが必要であると述べた。従って在留資格の有無や在留期間は重要な要素とみなした。
この上告人に関して、韓国で生まれた在外華僑で、韓国での永住資格を喪失し、台湾の国籍も有していないという特殊な状況や家族と共に長年横浜で仕事を続け ながら家族と生活していること、特別在留許可を求めていることなどが考慮され、市町村に「住所を有する者」に当たると判断された。(平成14年(受)第 687号損害賠償請求事件)
(2004年01月15日 掲載)