日本はとりわけ女性や子どもの性的搾取を目的とした人身売買の大きな受入国でありながら、政府はその対策のための積極的な施策を立てていないという国内外 からの批判を受けて、2004年4月に「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を設置し、同問題に取り組むNGOとも意見交換を行うなどして協議を重ね てきましたが、政府の「人身取引対策行動計画」としてまとめて12月7日に発表しました。
この「行動計画」の前文では、「人身取引対策を推進するに当たっては、その防止・撲滅、被害者の保護を含む総合的・包括的な対策を取ることが重要である」 という認識に立ち、「総合的・包括的な人身取引対策を早急に講ずることを目指して、行動計画を策定し、国際的な組織犯罪である人身取引に決然として立ち向 かうこととした」と背景を説明しています。
そして、「人身取引被害者を保護の対象として明確に位置づけ、被害者が心身共に過酷な状況に置かれていたことを十分配慮し、被害者の状況に応じ、きめ細か な対応を行うとともに、加害者(ブローカー、雇用主等)の処罰に関しては、事案の重大性を十分に踏まえた刑罰法令等の整備を図るとともに、取締りを一層強 化することとした。また、我が国に人身取引の存在を許容する要因となり得ていた諸制度にも踏み込み、人身取引の防止を図ることとした」と述べています。
人身売買の被害者の保護や支援に取り組んでいる日本のNGOのネットワークである「人身売買禁止ネットワーク」(JNATIP)では、加害者処罰とともに とりわけ被害者の実効性ある保護・支援・防止策を盛り込んだ包括的な「人身売買禁止法」の制定を求めて、政府との協議に臨んできましたが、「行動計画」で は、加害者の処罰に関しては刑法改正などの法整備を行うとしていますが、保護や支援に関しては具体的な計画は盛り込まれているものの法律制定には言及され ていません。
(2004年12月10日 掲載)