バンコク週報(no.1160)によれば、タイのタクシン首相は、先ごろ国会での所信表明演説で人権保護に力を入れる考えを強調するとともに、新しい人権委員会を設置する考えを明らかにしました。
この背景としては、(1)全国一斉の薬物一掃キャンペーンで2,000人以上が逮捕時に死亡したことについて国内外から批判を浴びたこと、(2)昨年10 月に南部のナラティワート県で起きたタクバイ事件で逮捕されたイスラム教徒の若者など80人以上が、軍用トラックで護送中に死亡したことをイスラム教国が 非難していること-などに配慮したと思われますが、新人権委員会の設置案の「真意」は、国家人権委員会の権限を弱めることにあるとの見方が支配的です。
国家人権委員会は、タクシン政権の姿勢をこれまで厳しく批判し、これにタクシン首相が強く反発するというのがこれまでのパターンで、首相にとって国家人権 委員会はまさに「目のうえのタンコブ」的存在でもあったといわれています。野党第1党である民主党のクライサク上院外交委員会議長は、「タクシン首相は、 新しい人権機関を設置すると言っているが、国家人権委員会が現行憲法の規定に基づいて設置されたことを忘れているのではないか。あるいは、人権機関を新設 することでこれまでの人権侵害の責任を曖昧にしようとしているのではないか」と指摘しました。
(2005年04月05日 掲載)