6月16日、衆議院本会議は今162会期に提出されていた刑法などの一部を改正する法律案を全会一致で可決し、同法案が成立しました。
この改正により、刑法において新たに人身売買罪を創設し、人を買い受けた者を3カ月以上5年以下、未成年を買い受けた者を3カ月以上7年以下、営利、わい せつ、結婚、身体および生命への加害の目的で買い受けた者を1年以上10年以下の懲役とし、人を売り渡した者も同様としました。また、所在国外移送目的の 売買あるいは移送は2年以上の懲役となります。
また、刑事訴訟法の改正により、これらの罪の被害者が裁判において証言する際、ビデオリンクによる尋問が可能となります。
さらに、出入国管理法が改正され、法務大臣が上陸や在留許可を認める特別な事情として、人身取引などにより他人の支配下におかれて入国・在留した場合などが新しく含まれ、同じく人身取引などにより他人の支配下におかれた者は退去強制の対象から除外されました。
組織犯罪の処罰や、組織犯罪による収益の没収や追徴を規定する、組織犯罪処罰法も改正され、人身売買、人の密輸などに関わる犯罪もその対象とされました。
この一連の改正は国連国際組織犯罪防止条約の人身売買防止補足議定書、密入国防止補足議定書の批准に向けてとられた措置の一つです。この他には旅券の不正取得、偽造旅券などの所持の罰則の強化などを行った旅券法の改正が成立しています。
政府は04年12月に人身取引対策行動計画を策定し、加害者の処罰の法整備、被害者の支援の施策などを行うとしていました。
参照:提出案(日本語)
参考:
日本政府が「人身取引対策行動計画」を発表(ニュース・イン・ブリーフ04年12月)
ILOが日本における「人身取引」に関する調査報告書を公表(ニュース・イン・ブリーフ05年1月)
イベント:05年7月1日(18:30から於:ドーンセンター)国際シンポジウム「タイから日本への人身売買-実態と支援の現状を考える-」
(2005年06月08日 掲載)