8月1日から19日に開催されていた、第67会期人種差別撤廃委員会は、17日、刑事司法における人種差別の防止に関する一般的勧告31を採択しました。
勧告は、各国の刑事司法行政、刑事司法の機能の中の人種差別の存在や程度をはかるための措置をあげています。その中には、暴力や他の犯罪の被害者、特に警 察や他の公務員による暴力などの被害者の人数や率、苦情の有無、人種差別的行為の起訴や処罰の件数などの人種差別を示す指数の検討なども含まれています。 また、警察・司法関係者と人種、民族集団の代表との対話を促す、人種差別の構造的撤廃を目標とする国内戦略を実施する、特定の人種、民族集団の皮膚の色、 特徴だけを根拠に行う職務質問、逮捕や捜査などを防止する措置をとる、公務員による暴力、拷問、非人道的などの取扱いを防止し、厳しく処罰することなどを 人種差別を防止する措置としてあげています。
委員会はその他、前66会期において採択したジェノサイドの防止に関する決定に続いて、ジェノサイドにつながり得る制度的で甚大な人種差別に関する指標に 関する決定を採択しました。指標には、人種差別を禁止する法制度の欠如、特定の人種、民族集団の存在の公式、制度的否定、特定の人種、民族集団の権力およ び公的地位からの排除、身分証における民族の記載、教育、居住地域などの分離、メディアを含む広範なマイノリティに対する憎悪・暴力扇動発言およびその認 容、政府その他の指導者による人種的優位、マイノリティに対する暴力扇動発言、マイノリティに対する私人による攻撃の多発などがあげられています。委員会 は各国の報告審議の中で指標にあげられるような状況が見られた場合、総括所見の中でそのことを指摘し、期限を付して政府に対応措置を報告するよう要請する としています。また、これらの指標の示す状況が存在しても必ずしも、ジェノサイドにつながるわけでなく、それらとあわせて考慮する、特定の集団に対する ジェノサイドまたは暴力の歴史、不処罰の政策または実行、国外から過激主義、武器をもたらす集団の存在、逆に軽減要因として国連または要請による他の第三 者の介在などの条件もあげています。
参照:国連高等弁務官事務所内 人種差別撤廃委員会 (英語)
参考:人種差別撤廃条約について (日本語)
(2005年08月10日 掲載)