2005年12月1日、厚生労働省は「セクシュアルハラスメントによる精神障害などの業務場外の認定について」という通知を出し、セクシュアルハラスメントを受けた場合でも、それ自体によって、あるいはその後の雇用者の対応などによっておこった障害に対して労働災害が認定され得るという統一見解を都道府県労働局に示しました。
1999年同省から出された「心理的負荷による精神障害等にかかる業務場外の判断指針について」では、セクシュアルハラスメントも業務上、心理的負荷(ス トレス)を招き得る具体的出来事の一つとしてあげられていましたが、実際には業務上の行為に当たらないとして、労災の申請がほとんど認められないことが指 摘されていました。
この通知では、極度のストレスを与えたものについてはそのハラスメント自体を評価対象とするほか、極度のストレスに当たらない場合でも、雇用者のセクシュ アルハラスメントに関する雇用管理上の義務、具体的には防止方針の明確化やその周知、相談、苦情への対応や事後の対応などを総合的に評価するとしていま す。
この統一見解の通知を受け、函館労働基準監督署では、以前、個人的資質によるもので職務に関係しないとして一旦不認定としていたある申請を取り消し、改めて労災を認定しました。
セクシュアルハラスメントについて、男女雇用機会均等法では雇用者が必要な配慮をしなければならないとしていますが、何がハラスメントに当たるか、雇用者 が具体的に何をしなければならないかについて、厚労省は指針を出しています。その中には、相談や苦情のための窓口や制度を設置すること、適切に対応するこ と、相談や苦情を申し出たことを理由にその従業員に対して不利益な取扱いをしないことなどがあげられています。
一方、労基署などでのセクシュアルハラスメントの相談件数は増え続け、2005年12月に提出された労働政策審議会の報告「今後の男女雇用機会均等対策について」では、男性に対するセクシュアルハラスメントも対象とすることのほか、紛争解決のための調停や違反企業名公表の対象とすることなどが提案されています。
参考:
「セクシュアルハラスメントによる精神障害等の業務上外の認定について」財団法人労災保険センター
「セクハラによる心の病は『労災』 厚労省が労基署に通知」アサヒ・コム 2005年12月13日
「今後の男女雇用機会均等対策について」厚生労働省
(2006年01月12日 掲載)