第1会期開催中の国連人権理事会は2006年6月29日、「強制失踪からのあらゆる人の保護に関する条約」案と「先住民族の権利に関する宣言案」を採択しました。
本条約は、どのような人も、戦争、政情不安、緊急事態などいかなる状況においても強制的な失踪を強いられないと規定し、強制失踪を公務員または国家の許 可、支持または黙認のもとで行動する人または集団による逮捕、拘束、拉致または他のいかなる形態の自由の剥奪で、その後、自由剥奪を否認したり、失踪した 人の居場所または状況を隠すなどして、その人を法の保護の範囲外におくことと定義しています。条約の下で国家は強制失踪を犯罪とし、そのような行為を捜査 し、責任者を訴追、処罰する義務を負います。また強制失踪が広範、制度的に行われることは人道に対する罪であるとして、国際法上の責任も生じることを規定 しています。締約国は人の自由の剥奪が認められる要件を規定し、そのような人が拘禁される場所を公に認められた場所に限定し、家族、友人や弁護人などとの 面会、通信を保障すること等も求められています。さらに、条約を批准した国が、条約実施のためにとった措置について提出した報告を審議する10人の専門家 による委員会の設置についても規定しています。条約は総会に付託され、採択されると各国の署名・批准に開放されることになります。
先住民族の権利に関する宣言は、先住民族が個人として、また集団として国連憲章、世界人権宣言を始め、国際人権法に認められるあらゆる人権を享有する権利 があり、その権利の行使について、いかなる差別もなく、平等であるとしています。また自決権に基づいて、独自の政治的、法的、文化的な制度を保持する権利 があり、強制的な同化政策や、文化の破壊を受けない権利を有するとしています。そのほかにも、立ち退きや移住を強制されない権利、独自の宗教、教育、メ ディアなどを維持する権利、自分たちに関わる意思決定に参加する権利などもあげられています。
この権利宣言は、1995年に人権委員会が2004年の第1次先住民族の10年終了までに採択するよう、設置した作業部会が起草しました。しかし、自決権 や土地の権利などについて合意が進まず、第1次10年終了には間に合いませんでした。今回の理事会での採択でも、カナダ、ロシアが反対し、12カ国が保留 しています。この宣言案についても総会に付託されます。
出所:国連人権高等弁務官事務所6月29日付けプレスリリース(英語)
参考:
・「強制失踪からのあらゆる人の保護に関する条約」決議案 A/HRC/1/L.2
・「1994年12月23日の総会決議49/214第5段落に従い、宣言案を起草する人権委員会の作業部会」決議案 A/HRC/1/L.3
・作業部会が「強制失踪からのあらゆる人の保護に関する条約」案を作成 ヒューライツ大阪・ニュースインブリーフ(05年9月)
(2006年06月15日 掲載)