06年6月6日、アナン国連事務総長は「国際移民と発展」と題した報告を総会に提出しました。その報告によると、2005年現在、世界には1.91億人の移民がいて、そのうち、1.15億人が先進国に、7500万人が発展途上国に在住しています。2005年、最も移民が多いのは米国で、移民の5人に1人は米国に在住しています。
また、国際的な移民の流れが、受け入れ国において、賃金の低下や失業の増加をもたらすと言われていることについて、報告は移民自身による影響は少なく、む しろ、受け入れ国の労働人口を補完することになると述べています。一方、移民の出身国について、移住先からの送金が最も直接的な利益となっており、 2005年には2320億ドルと、1995年の1020億ドルよりも倍以上に増えていることをあげています。また、フィリピンやセルビア・モンテネグロで は海外からの送金がGDPの大きな部分を占め、海外からの送金がGDPの1割を占める国のほとんどが小さい発展途上国であることを指摘しています。その反 面、高学歴や熟練労働者の移住により、国によっては「頭脳流出」あるいは医療など特定の部門の人材の不足を招いていることも指摘されています。
報告は、国際移民が移民自身、送り出し国や受け入れ国に利益をもたらすためには、移民と受け入れ先の社会の適応にかかっていると述べ、差別禁止や、人種主義からの保護、労働の権利や社会的サービスへのアクセスなどが重要であることを指摘しています。
9月の14-15日の総会第61会期の際に、移民と発展に関するハイレベル会議が開催される予定ですが、その会議に向けて、NGO、市民社会との対話を含めた準備会合も予定されています。
出所:
・国連事務総長報告 (英語)
・国連「国際移民と発展」ハイレベル対話 (英語)
(2006年06月06日 掲載)