2006年6月15日、雇用機会均等法などの改正法案が 衆議院本会議で採択され、成立しました。雇用機会均等法は1985年、日本が女性差別撤廃条約を批准する際に、そのための法整備の一環として勤労婦人福祉 法を改正するという形で制定されました。この法律は、女性労働者の雇用機会と待遇の均等を図るとして、募集、採用、配置と昇進について、事業主に男女の均 等待遇を求め、訓練、福利厚生、定年、退職、解雇について差別待遇を禁止していました。しかし、募集、採用などの均等待遇は罰則のない、努力義務にとど まっていましたが、1997年の改正で、 これらも禁止規定の対象となりました。違反する企業には行政指導が行われ、それでも改善のない企業は企業名を公表することが規定されました。97年の改正 では、その他、セクシュアル・ハラスメント防止のための事業主の配慮義務、男女機会均等の促進のためにとられる積極的措置(ポジティブ・アクション)に関 する規定などが新たに導入されました。
今回の改正では、この法律の禁止対象が女性であることに基づく差別であったのを、性別に基づく差別とし、男性に対する差別も禁止対象になりました。また、 差別的取扱いが禁止される事項が、業務配分、権限の付与、職種、雇用形態の変更、労働契約の更新などより詳細にあげられました。
さらに、禁止される差別的措置に間接差別の考え方が導入されました。間接差別とは、明文上男女を区別するなど直接差別するのではなくても、ある措置などを 実施した結果、男女いずれかに差別的な効果をもたらす場合、その措置が職務に必要であるなどの合理的な理由がない限り差別となるというものです。雇用機会 均等法が初めて施行された時期に導入が拡大したコース別人事制度などがこれにあたるおそれがあるとして、女性差別撤廃委員会の日本政府報告審議の際、間接差別について周知をはかることなどを求める勧告が出されていました[PDF 29KB]。 今回の改正にあたり、厚生労働省労働政策審議会で間接差別の導入などについて検討が行われましたが、使用者側からは間接差別の概念が普及していないなどの 強い反対があり、最終的には間接差別の一般的禁止ではなく、募集や採用において、一定の体重・身長を要件とすること、総合職への募集や採用において全国転 勤できることを要件とすること、昇進について転勤の経験があることを要件とすることと、禁止される事例3例を省令で限定列挙するという規定になりました。
その他には、女性労働者の妊娠、出産や産前・産後休養などを理由の解雇やその他の不利益な取扱いの禁止、妊娠中、および出産1年未満の女性の解雇の原則無 効などが規定されたほか、男性に対するセクシュアル・ハラスメントも法律の範囲内とされ、事業主は、配慮義務だけでなく、窓口を設置するなど相談に対応す る具体的な体制を整備するなどの措置が求められることになりました。
出所:
・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律案
・97年雇用機会均等法などの一部改正(法律第九十二号)(平九・六・一八)
・女性差別撤廃委員会 日本政府第4回・5回報告に対する総括所見[PDF 29KB]
(2006年06月12日 掲載)