ドイツ、フランス、ギリシャ、イスラエル、イタリア、ルクセンブルグ、米国及び英国は2006年7月26日、ドイツのバード・アーロルゼンにある国際追跡サービス(ITS)の公文書館が所蔵するナチス政権下の強制収容、強制労働、強制移住などの被害者に関する資料の公開に合意する文書に署名しました(ドイツ語)。
ITSは赤十字国際委員会の機関で、戦後、連合軍や国連機関などが行っていた、収容所に連行されたり、強制労働や難民となって行方不明になっている人々の 追跡調査を行う業務を行っています。ITSの設立に関わる1955年のボン条約に基づいて、上記の8カ国の他、ポーランド、オランダ、ベルギーをあわせた 11カ国が国際委員会をつくり、運営に関する取り決めを決定し、実際の運営は赤十字国際委員会が行っています。ここには、11カ国が共同管理する、 1750万人以上に関する、5000万点以上の資料が所蔵されています。従来資料にアクセスできるのは、本人、またはその家族によるその本人に関する情報 へのアクセスだけに限定されていました。05年には15万を越える犠牲者本人、あるいはその家族からの照会がありましたが、回答に時間がかかるなどもの問 題も指摘されていました。1996年からは研究目的であれば、個人に関わらない情報の提供が始まっていましたが、対象となったのは全体の資料の2%にすぎ ませんでした。米国、オランダなどが資料全体の公開を求めていたことに対し、ドイツやイタリアは個人情報の保護を理由に反対していました。ITSの保管す る資料の中には、個人の医学的情報や犯罪歴などに関する情報や、ナチス政権への協力者なども含まれるとされています。11カ国と赤十字国際委員会は06年5月、資料の公開に合意し、それに応じてボン条約が改正されることになりました。
この改正により、研究目的のため、資料が公開されるほか、加盟国に所蔵資料のコピーが提供され、それぞれの国の法律などに従い、公開できるようになります。
出所:
・ドイツ外務省(7月26日付プレスリリース) (ドイツ語)
・国際追跡サービス (英語)
・赤十字国際委員会 (5月17日付プレスリリース)
・"Germany signs Nazi files accord" BBC News (26 July, 2006) (英語)
(2006年07月12日 掲載)