韓国の国家人権委員会[韓国語]は、8月21日、過去の政権による人権侵害事件の補償法である「三清(サムチョン)教育被害者名誉回復及び補償審議に関する法律」(「三清(サムチョン)補償法」について、外国人の被害者も韓国国民と同等の補償請求権があることを法律で明文化するよう国会議長と国防部長官(大臣)に勧告しました。[韓国語]
「三清(サムチョン)教育隊事件」とは、1980年に軍事クーデターにより政権を掌握した全斗煥元大統領の下で、社会浄化を名分に市民が組織的な暴力を受 け、人権を踏みにじられた事件です。暴力、密輸、麻薬、詐欺事犯等の社会悪一掃ということで、まともな令状もなく検挙し、検挙者を一方的にランク付けしま した。そして等級BとCになった4万2千余人を「三清(サムチョン)教育隊」に入隊させ、「純化教育」行いました。1980年8月から81年1月の半年で 6万人を越える検挙者があり、無実の市民も多数連行されました。教育隊では暴力と過酷な労役が待っていました。88年に被害者たちが真相究明と国家補償を 求めて立ちあがりましたが、翌年に「三清(サムチョン)教育隊」での死亡者が54名であることが初めて国防部によって明らかになりました。被害者たちの長 年の要求が実り、04年1月に、「三清(サムチョン)補償法」が制定されました。
さらに行方不明者、後遺症で苦しむ人などが多数いると推測されますが、この法律に基づいて国務総理の下に設置された「三清(サムチョン)教育被害者名誉回復及び補償審議委員会」に申請した人は、05年8月現在で、2800余人と伝えられています。[韓国語]
ところで、当時の被害者の中に、台湾籍と中国籍の人がいて、「審議委員会」に補償申請をしたところ、「外国人に対する補償規定がない」ということで棄却さ れました。そこで、2人は、06年2月に、国家人権委員会に対し、審議会の決定は、出身国家による差別であるとして申立を行いました。
国家人権委員会は、「三清(サムチョン)教育隊」が、国家の不法な公権力行使による大規模かつ組織的な人権侵害の事例であり、憲法に規定されている平等 権、身体の自由が外国人にも適用されるべきであること、国際法上でも外国人が当該国家から被った被害を賠償する義務があるという判断をしました。
出所:
・韓国国家人権委員会 (韓国語)
・2005年8月9日付ハンギョレ新聞の記事 (韓国語)
参考:三清教育隊人権運動連合 (韓国語)
(2006年09月05日 掲載)