06年11月9日、「開発、人道支援、環境分野の国連システムの一貫性に関する国連事務総長ハイレベル・バネル」が国連の開発、人道支援および環境分野での活動について機構改革を含めた改革案を示す報告[PDF438KB]を公表しました。
報告は、国連の開発や環境の分野での弱点として、国連の活動が分散しており、政策が一貫せず、重複するなど非効率が生じており、ガバナンス不足や予測不可 能な資金繰りがそれを一層悪化させていることを指摘しています。また、「一体性」を中心的な概念として、国連諸機関が一体として、目標に向かって一つの戦 略を実施するということに一致して協力する必要性をあげています。
そのために、国レベルでは、複数の国連機関がそれぞれの予算で、様々なプロジェクトを行うのではなく、その国家の希望に応じ、一人の駐在コーディネーター の下、それぞれのプロジェクトをその国の優先順位にそって一つに統括し、一つの予算の枠組みのもとで執行することを提案しています。また、それらの国別の 単一のプログラムを調整、監督する国連持続可能開発理事会(Board)を経済社会理事会の下に設置し、事務総長に国連システムの中の重複を排し、必要に 応じて国連機関を統合するために独立のタスクフォースを設置することなどを求めています。
資金については、成果に応じて、「ミレニアム開発目標」資金メカニズムの設置などによる多年度の資金供与を可能にするほか、透明性および説明責任促進のために08年までに国連共通の評価制度をつくることを勧告しています。
さらに、ジェンダーの平等が実効的な開発成果を達成する主要な要素であるとして、既存の女性に関する機関を統合し、ジェンダー平等、女性のエンパワメント に向けて規範機能、およびアドボカシー機能などを強化すること、ジェンダーの平等をすべての国別プログラムの要素とすることなどを勧告しています。
このハイレベル・パネルは、05年開催された国連総会首脳会議の成果文書[PDF157KB]が、 国連の開発や人道支援などの活動において、各機関や基金、プログラムなど一貫性をもたせることを求め、国連事務総長に対してミレニアム開発目標などの達成 に向けた活動の運営や調整を一層強化することを求めたことに応じて設置されました。アジズ・パキスタン首相、ディアズ・ディオゴ・モザンビーク首相、シュ トルテンベルグ・ノルウェー首相が共同議長をつとめ、ブラウン英国蔵相、ミシェル欧州連合委員(開発人道支援担当)、武見厚生労働副大臣などあわせて15名のメンバーで構成され、06年4月に最初の会合が開催されています。<
参照:
・Report of the Secretary-General's High-level Panel on System-wide Coherence: 'Delivering As One' [PDF 438KB] (英語)
・国連プレスリリース2006年11月9日付 "Annan welcomes high-level coherence panel's blueprint for sweeping UN overhaul" (英語)
・「開発・人道支援・環境分野の国連システムの一貫性に関する国連事務総長ハイレベル・パネルの報告書の発表について」 (外務省)
・2005年国連総会首脳会議成果文書 [PDF 157KB] (外務省)
・国連システムの一貫性に関する国連事務総長ハイレベル・パネル (英語)
参考:国連総会首脳会合(2005年世界サミット)が成果文書を採択 ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ (05年09月)
(2006年11月02日 掲載)