06年12月8日付の国連ジュネーブ事務所のプレスリリースに よると、「国連北朝鮮の人権状況特別報告者」であるビティット・ムンタボーン(タイ・チュラロンコン大学教授)さんは、12月10日~14日まで日本、 14日~18日まで韓国、18日~23日までモンゴルをそれぞれの政府の招待に基づいて訪問します。北朝鮮の人権状況に関する直接の情報およびその影響に 関して検証することを目的に、各国の政府関係者、国家人権委員会、政治家、市民組織の代表、国際機関などと面談する計画です。
日本では、外務省のプレスリリースによると、同省幹部を含む政府関係者および拉致被害者家族などと拉致問題を含めた北朝鮮の人権状況に関して意見交換を行う予定です。また、滞在中、北朝鮮人権侵害問題啓発週間(12月10日~16日)の関連行事にも出席する予定です。
北朝鮮人権侵害問題啓発週間は、06年6月に制定された「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」の 第4条に基づき、毎年12月10日~16日まで「国民の間に広く拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題について関心と認識を深めるため」に設けられ たもので、「国および地方公共団体は、北朝鮮人権侵害問題啓発週間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする」と定められています。
国連総会第三委員会では06年10月20日、北朝鮮の人権状況に関するムンタボーン特別報告者の報告が審議されました。
報告では、おもに2005年から2006年8月にかけての人権状況を取りあげています。食料に対する権利について、北朝鮮政府が外国からの支援、特に市民 社会からの支援の拒否を表明したことや、ミサイル実験により人道支援が停止されるほか貴重な資源が浪費されることなどの懸念があること、刑法や刑事訴訟法 が改正されたにもかかわらず、治安維持のための別個の「準司法制度」のようなものがあり、そこには独立した司法や、弁護士へのアクセスなどのような保障が 及ばないことや、刑務所に収監される人、特に政治犯の処遇が懸念されること、日本、韓国やタイなど外国から人が拉致されていることなどが指摘されていま す。
また、北朝鮮国内の移動の自由が制限されているほか、近隣諸国に逃れた人が強制送還されていることをあげ、送還された人々について、特別報告者が北朝鮮に照会した通報に対して政府から特別報告者の権限・任務を認めない旨の回答があったことを述べています。
ムンタボーン特別報告者は、2004年の国連人権委員会決議2004/13に基づいて、どの政府からも独立した個人資格の立場で同年7月13日に任命され ました。その任務は、北朝鮮を訪問することなどを通じて、同国政府および人々との直接のコンタクトを築き、人権状況および国際人権文書の同国の履行状況に 関して調査・報告することにあります。
しかし、現在にいたるまで北朝鮮は、同報告者の訪問を一度も受け入れていません。
出所:
・国連ジュネーブ事務所のプレスリリース"UN Special Rapporteur on situation of Human Rights in Democratic People's Republic of Korea to Visit Japan, Republic of Korea and Mongolia"
・外務省プレスリリース ムンタボーン国連北朝鮮の人権状況特別報告者の来日について
・「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」
・北朝鮮の人権状況に関するムンタボーン特別報告者の報告(英語)
参考:国連第三委員会で北朝鮮の人権状況に関して審議 ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(06年10月)
(2006年12月07日 掲載)