東南アジア諸国連合(アセアン)は07年1月13日、フィリピンのセブで開催していた第12回首脳会議において、「移住労働者の権利の保護と伸長に関する宣言」を採択しました。同宣言は、移住労働者がアセアン域内の受け入れおよび送り出し国双方の社会と経済にもたらす貢献を認識したうえで、移住労働者に対する虐待や暴力などが発生した際に対処する必要があることを確認しています。
宣言は一般的原則、送り出し国と受け入れ国の責務、およびASEANのコミットメントに関して明記しています。一般的原則では、受け入れ国および送り出し 国は、すでに生活している移住労働者とその家族の基本的権利と尊厳について受け入れ国の法規を損なうことなく考慮しなければならないとしています。
受け入れ国に対しては、それぞれの国の法律や政策、二国間・多国間協定に基づいて、差別、虐待、搾取、暴力などの被害を受けた場合は救済や司法、社会保障 などへのアクセスを促進することや、賃金や労働条件の面で移住労働者に対する公平な扱いを促進することを求めています。
送り出し国に対しては、移住労働に代わる雇用機会や生計手段へのアクセスを確保するとともに、移住労働者の募集には合法的なシステムを確立し、合法的で有効な契約を結ぶことによって、悪質な仲介業者を排除するためのメカニズムをつくることを求めています。
アセアンに対しては、人の密輸や人身売買を防止するための具体的な措置を実施し、そうした活動に関わる者を厳しく処罰することとしています。また、アセア ンの関連ある機関がこの宣言のフォローアップを行うとともに、移住労働者の権利の保護と伸長のための条約の策定をめざすことを求めています。
経済格差の拡大に伴い、アセアン域内で移住労働者が増えています。おもな送り出し国としてはフィリピンやインドネシア、また難民としてミャンマー(ビルマ)から多くが越境している一方、タイ、マレーシア、シンガポールなどが受け入れ国となっています。
参照:アセアン「移住労働者の権利の保護と伸長に関する宣言」の全文 (英語)
(2007年01月05日 掲載)