07年2月27日、国際刑事裁判所(ICC)の検察局は、スーダンのダルフールで起きている住民虐殺・虐待の事件で、ハルン元内務大臣 / 現人道問題担当大臣と、民兵組織ジャンジャウィードの指導者クシャイプについて、人道に対する罪や戦争犯罪の責任を負う十分な根拠があるとして、予審部にその証拠を提出しました。
スーダン西部のダルフール地域では、03年頃からジャンジャウィードが、村を襲撃し、殺害、レイプや家、財産の破壊、放火などを行い、大勢の住民が国内外 に避難を強いられる状況が続いています。今までに20万人以上の人が殺害され、少なくとも200万人の人が難民となっているといわれます。また、ジャン ジャウィードがスーダン政府の支援を受け、または一緒に襲撃をしているともいわれています。
この状況に対し、国連事務総長が任命した国際諮問委員会は05年1月、ダルフールにおいて、大規模の人道に対する罪および戦争犯罪が行われたとして、安全 保障理事会にこの事件をICCに付託するよう勧告する報告を提出しました。これを受けて安保理は3月、ICCへの付託を決議していました。
検察局は、ダルフール地域における政府と反政府組織との紛争を背景に、ジャンジャウィードが時にはスーダン政府軍とともに、反政府軍を支持したとして地域 の住民を襲撃したと主張しています。そして、03年にダルフール治安担当に任命されたハルン元内務大臣が、ジャンジャウィードなど組織の民兵の募集、武装 や資金提供に関わり、民兵組織に襲撃を促した証拠があると述べました。また、クシャイプ容疑者については、ジャンジャウィードの指導者として、住民の殺 害、略奪、レイプなどを指示したとして、両名についてICCに召喚状を発するよう求めました。
国際刑事裁判所規程は、管轄権について補完性の原則をとり、事件について管轄権を有する国が捜査、訴追をしている場合は受理しないとしています。スーダン 政府は05年7月にダルフールに関して、特別裁判所を設置しましたが、指揮系統の上位者や政府関係者などは訴追されず、重大な犯罪も取りあげられておら ず、検察局は、スーダン政府がこの件について捜査、訴追をしていないとして判断しました。
ダルフールの状況に関し、政府関係者などどのレベルまで責任を追及できるか注目されていました。また検察局は今後も捜査を続けると述べています。
スーダンはICC規程に加盟していませんが、締約国または安保理が付託した場合、ICCは裁判の管轄権を行使することができます。
ちなみに日本は、ICC規程を批准していませんが、07年1月から開催されている第166回国会に同規程締結承認案、および国際刑事裁判所に対する協力などに対する法律案が提出されています。
参照:
・国際刑事裁判所2月27日付プレスリリース "ICC Prosecutor Presents Evidence on Darfur Crimes" (英語)
・国際刑事裁判所2月27日付プレスリリース "Prosecutor Opening Remarks" (英語)
・衆議院第166回国会議案の一覧
参考:国際刑事裁判所が公判の開始を 決定 ヒューライツ大阪ニュースインブリーフ(2007年2月)
(2007年03月07日 掲載)