アジア開発銀行(ADB)の第40回総会が07年5月4日から4日間にわたり京都市内で開かれ、アジア・太平洋地域の環境・エネルギー問題や金融協力など 協議がされました。総会と並行して5月5日と6日には、ADBの活動をモニターしているNGOなどが共同で「市民フォーラム」を同志社大学構内で開催し、 ADBの融資がもたらす環境、債務、人権問題などに関して、事業地の地元や市民の視点から考えていくためのシンポジウムなどを開きました。「市民フォーラ ム」には、総会に出席したADB関係者に対する政策提言を行うために来日したアジア各国・地域からのNGOの代表たちも多く合流しました。
そのひとつ、「日本の廃棄物輸出政策」に関するパネル・ディスカッションでは、日本が3Rイニシアティブ(廃棄物のReduce=発生抑制、 Reuse=再使用、 Recycle=再生利用)とアジア諸国との経済連携協定(EPA)の締結を通じて、有害廃棄物を含む廃棄物を「自由に」アジアに輸出しようとしているこ とに対する懸念が強調されました。
パネリストの化学物質問題市民研究会の安間武さんは、「問題なのは、すでに日本とのあい だで調印されたフィリピンやタイとの経済連携協定では、有害廃棄物までもが関税ゼロのリストに含められてしまっていること。3Rイニシアティブという名の もとで、先進国から途上国への廃棄物や中古品の輸出を簡易化しようという意図が巧妙に隠されている」と指摘しました。
安間さんは、「ADBに対する最大の出資国出である日本は大きな影響力を持っており、日本の廃棄物貿易政策がADBに影響を及ぼさないと考えるのは早計で ある」としたうえで、「もしADBが3Rイニシアティブ関連プロジェクトに資金を供与することになれば、開発途上国は、日本や他の先進国からの有害廃棄物 を受け入れざるを得ないようになるかもしれない」と述べました。
バーゼル・アクション・ネットワーク(BAN)のアジア・太平洋地域担当のリチャード・グティエレスさん(フィリピン)は、「なぜ日本以外のアジア地域 が、日本の有害廃棄物の負担を、ただ貧しいという理由で担わなければならないのか」と疑問を呈しました。 グティエレスさんによると、会議に先立つ5月2日、マニラの日本大使館前で環境保護団体のメンバーなどが日比経済連携協定の批准反対を訴える抗議活動を行 い、「アジアは日本の廃棄物植民地ではない」と訴えたといいます。
グリーンピース東南アジアのターラー・ブアカムシーさんは、電池や電子部品、ガラス容器など2006年に日本からタイに輸入された廃棄物の量や金額を紹介 するとともに、日タイ経済連携協定のなかで、フィリピンとの場合と同様にヒ素、水銀、タリウムなどの有害廃棄物が関税削除対象としてリストアップされてい ることを指摘しました。
また、ターラーさんは、ADBや日本の国際協力銀行(JBIC)が融資したタイ国内のごみ焼却炉が地域の環境に悪影響を与えている事例を報告ました。
各パネリストは、「アジアを日本のゴミ捨て場にするな」という共通の考えから、先進国から途上国への有害廃棄物の輸出をどのような理由でも禁止することを 定めた「バーゼル条約の禁止修正条項」を批准し、経済連携協定に有害廃棄物を関税削除対象としないことを、日本をはじめとするとりわけ先進国に対して提言 していくことの必要性を強調しました。
参考
・「有害廃棄物、アジアに押しつけ 日本に抗議へ、6日に京で集会も」 京都新聞(2007年5月1日)
・「日本は廃棄物を輸出するな! 5月2日に世界行動デーでアジア各地で抗議行動」 日刊ベリタ(2007年5月3日)
・「日本のゴミ アジアに捨てるな~NGO「開発銀が汚染に加担」」 インターネット新聞JANJAN(2007年5月13日)
・化学物質問題市民研究会 「経済連携協定」
(2007年05月03日 掲載)