国連人権理事会は2007年6月11日から18日開催の第5会期において、理事会の運営方法、人権委員会の特別 報告者などの特別手続や、「国連各加盟国の人権状況を定期的に審議する手続」(UPR)について合意し、1年目の作業を終了しました。
また、06年3月、人権理事会の設立に関する総会決議は、これまでの人権委員会の下の特別報告者などの特別手続について、理事会の第1会期から1年以内に 必要に応じて改善と合理化に向けた見直しを行うとしていましたが、理事会はUPRや運営のルールなどともに、政府間作業部会を設置し、これらについて議論 を続けていました。最終日の夜中に、各部会の意見をまとめた議長の文書が合意され採択となりました。
UPRについては、他の人権メカニズムを補完するものであり、重複してはならないとされたほか、NGOを含むステークホルダーの参加も原則にあげられてい ます。
審査はまず理事会のメンバーから、行われることになりますが、日本も現在、任期が2年のメンバーです。審査は4年ごとに行われるように1年に48カ国の審 査を行います。審査は理事会のメンバーから構成される作業部会で行われ、対象となった国の人権状況の評価、勧告や結論、技術援助、対象国の自発的なコミッ トメントを含む報告を対象国との協議の上で採択し、その成果は理事会の全体会議で採択されます。
特別報告者などの特別手続については、特定国を対象とする国別報告者の廃止を求める国、特別報告者などの行動規範を求める国など、特別手続の縮小、制限に つながり得る議論が出されていましたが、最終的にベラルーシとキューバの特別報告者をのぞいて、国別、テーマ別の手続が継続されることで合意されました。
一方、特別報告者などの人選について透明性を確保するために、従来の人権委員会の委員長、または国連事務総長による任命から、新たに、前もって作成された 候補者リストから理事会の議長が提案し、理事会が任命することが合意されました。
さらに、アフリカ・グループの提案に基づく特別報告者などの独立性、公平性を強調した行動規範に関する決議が、あわせて採択されています。
人権委員会の下部組織であった、人権保護促進小委員会に代わって人権理事会のシンク・タンクの役割を努める人権理事会諮問委員会についても合意が得られま した。諮問委員会は国連加盟国が推薦する候補者の中から、理事会が選出する個人の資格による専門家18人によって構成されます。その任務と利益の対立が起 こり得る、政府、または他の組織、団体の意思決定を行う地位にいる者は委員になることはできません。諮問委員会は、理事会の要請を受け、調査・研究を行 い、決議や決定を採択することはできません。諮問委員会は、その任務を行うにあたり、国家、国内人権機関やNGOなどと対話することが求められ、これらの 機関、団体などは同委員会の作業に参加することができます。
小委員会の下に設置されていた、先住民族に関するなどの作業部会や社会フォーラムの作業を続けるための適切なメカニズムについて、理事会の第6会期におい て決められることとなりました。
そのほか、重大で継続的な人権侵害を取りあげる1503手続に代わる手続や、会期の議題を含む理事会の運営に関するルールなどが合意されています。
6月19日、各国政府代表は、合意を歓迎する発言を行いましたが、多くの政府は、文書が妥協によるものであることを強 調しています。潘国連事務総長は20日、理事会の合意を歓迎する一方、特定の地域が常設の議題にあげられていることに失望感を表明し ました。
人権理事会の次の通常会期は9月に予定されています。
出所:
・国連人権高等弁務官事務所 人権理事会第5会期(英語)
・国連人権高等弁務官事務所プレスリリース(6月19日) "Human Rights Council Concludes Fifth Session after Adopting Presidential Text on Institution Building of Council"
・国連人権高等弁務官事務所プレスリリース(6月19日) "Human Rights Council Hears Praise and Criticism about Adopted Text on Institution Building of Council"
・国連プレスリリース 6月20日付 HRC/8 "Secretary-general Urges Human Rights Council to Take Responsibilities Seriously, Stresses Importance of Considering All Violations Equally"
(2007年06月20日 掲載)