「ミャンマー国営テレビは6月5日夜、同国軍事政権が新憲法制定に向けた国民会議を7月18日から再開すると報じまし た。」新憲法制定のための国民会議は、民主化に向けた7段階のロードマップの第1段階にあたるもので、1993年から14年にわたって断続的に開 かれています。これまでに「軍の役割」や「国民の権利や義務」などについて議論を終えています。同テレビは「次の会期が最後の審議となる」としており、会 期内に新憲法の基本原則や枠組みなどの指針を一括採択、年内に新憲法草案の起草作業に入るとみられます。起草作業が終了すれば、新憲法草案の是非を問う国 民投票が予定されており、軍政は既にヤンゴンなど都市部で各家庭を訪問、国民投票や総選挙の有権者名簿の作成に着手していつと伝えられています。民主化運 動のリーダー、アウンサンスーチーさん率いるNLD=国民民主連盟は、この新憲法制定国民会議に参加していません。
一方、アウンサンスーチーさん(国民民主連盟書記長)に対し、ミャンマー軍事政権は2007年5月25日、自宅での軟禁を1年間延長することを通告しまし た。アウンサンスーチーさんは、過去17年のうち11年以上を自宅軟禁下に置かれていています。今回の自宅軟禁延長に対して「潘基文(パン・ギ・ムン)・国連事務総長は25日、声明で『深い遺憾の意』を表明し、早期の『国民和解や民主主義の 回復』と訴えました。」また米国や欧州連合(EU)もアウンサンスーチーさんの解放を求め、日本の麻生外相も5月29日、ドイツで開催中のASEM外相会議の際にミャンマー外相に遺憾の意を表明しました。
ミャンマー軍政は、隣国タイへの天然ガス輸出や中国の支援による電源開発などで外貨を獲得し国内の支配体制を固めており、中国ロシアとの関係強化を進める 一方でアウンサンスーチーさんの解放に応じる気配はみせていません。
6月1日付のGulf Newsによると、「ASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国は、ASEAN憲章の一環として、この地域での人権抑圧問題、特にミャン マーでの事例にかかわるための人権協議会の設立について合意しました。 ASEAN憲章作りのためのハイレベル作業部会のロサリオ・マナロ代表は、『ASEAN人権機構を設立するための付託条件(TOR)が、7月にマニラで開 催予定のASEAN外相会議(AMM)までに提出されるであろう』と同紙のインタビューで答えています」。
出所:
・「7月に憲法制定会議再開 ミャンマー、指針採択へ」 (共同通信 2007年6月6日)
・「スー・チー氏軟禁延長、内外から非難相次ぐ」 (朝日新聞2007年5月27日)
・ミャンマー外相:「騒乱の情報」スーチーさん軟禁延長釈明 (毎日新聞2007年5月28日)
・"Asean members to set up human rights panel", Gulf News 01/06/2007
参考:
・ビルマ(ミャンマー)訪問の ASEAN特使、アウン・サン・スー・チーさんに面会できずに帰国 ヒューライツ大阪・ニュースインブリーフ(2006年3月)
・サルウィン川ダム~未来を奪う電源開発 (秋元由紀、『国際人権ひろば』70号)
・ビルマの「変わ らぬ現実」~正論」伝わってますか (宇田 有三、『国際人権ひろば』68号)
・ASEAN域内における地域的人権 保障メカニズム設立へと一歩前進 ヒューライツ大阪・ニュースインブリーフ(2005年12月)
(2007年06月08日 掲載)