イギリスの環境保護NGOのグローバルウィトネス(Global Witness)は、07年6月1日、カンボジアでの森林崩壊の原因の1つは、違法伐採事業に関係するフン・セン首相ファミリーや政府高官の不正にあると 告発する報告書「Cambodia's Family Trees」を発表しました。今回の報告書では、違法伐採事業に関係するシンジケート(Seng Keang社)の実態を明らかにし、フン・セン首相のファミリーメンバーや森林資源省の政府高官や軍などが、違法な森林伐採や密輸、脱税、住民の強制立ち 退きや失踪などに深く関与していると詳細データや写真をもとに告発しています。また、カンボジア政府が最近、原生林地帯にプランテーションを開発するため 土地リース政策を決定したことを批判し、この政策は、法令を順守しない企業に森林伐採/材木販売の口実を与えることになると警告しています。
これに対し、報告書で名指しされたフン・セン首相の実兄のフン・ネン・コンポンチャム州知事は6月5日、地元新聞のインタビューの中で「グローバルウィト ネスのスタッフがカンボジアに来たら頭をぼこぼこにしてやる」と恫喝し、報告書の配布禁止など言論統制を強めることを表明しました。また、カンボジア政府のキュー・カナリット情報相は、「フン・セン首相とその 一族がカンボジア国内の森林を違法伐採したとする報告書は事実ではない」と批判しましたが、指摘された違法な森林伐採や密輸、脱税、住民の強制立 ち退きや失踪事件などについては、政府として調査を実施することを表明しました。
一方、グローバルウィトネスは6月8日、フン・ネン州知事発言は、カンボジア憲法や国際人権規約に保障された言論の自由を否定するものであると批判し、同 時にキュー・カナリット情報相が調査に着手することを表明したことを歓迎し、政府による調査に全面協力を申し出ました。
IMFによると、カンボジアの森林は1990-2005年の間に2250万ヘクタール減少しているといわれていますが、グローバルウィトネスは、過去10 年以上にわたってカンボジアの森林伐採の状況を調査し、国内外で情報発信を行い、森林違法伐採取締りに消極的なカンボジア政府の対応をたびたび批判してき ました。そのため、03年7月には、再入国しようとした同NGOの職員1名がカンボジアへの入国を拒否され、同団体の報告書2千部がプノンペン空港で没収 されるなどの事態が起こりましたが、それにも屈せず、現在までモニタリングと情報発信を続けています。
出典:
・グローバルウィトネス(global witness) 2007年6月8日プレス・リリース "Global Witness offers full cooperation with government investigation into state looting in Cambodia" (英語)
・「カンボジア 続く森林違法伐採」 (バンコク週報1274号<2007年6月11日~2007年6月17日>)
・報告書「Cambodia's Family Trees」 (英語)
参考:「<カンボジア森林>違法伐採監視NGOが国外追放」 (メコン・ウォッチ 2006年9月2日メールニュース)
(2007年06月12日 掲載)