報道によると、カンボジアのポル・ポト政権時代に起きた大量虐殺などの罪を裁く特別法廷(Extraordinary Chambers in the Courts of Cambodia、ECCC)の報道官は7月31日、ポル・ポト派元幹部でトゥールスレン政治犯収容所の所長を務めたドッチ容疑者(Duch:正式にはカ ン・ケク・イエウ Kang Kech Ieu,。64歳)を特別法廷の拘置施設に収容し、捜査を担当する予審判事が事情聴取を開始したと語りました。特別法廷がポト派元幹部を拘束したのは初め てです。1999年以来軍の刑務所に収監されていたドゥイ容疑者は、自分が所長を務めるトゥールスレン政治犯収容所で虐殺が行われたことは認めて いますが、「自分は上層部からの命令を実行しただけだ」と主張し ています。「S21」と称されていたこのトゥールスレン政治犯収容所は、もとは学校でしたが、1976年からの2年9ヶ月の間に 14,000~20,000人の政治犯が収容されたと言われ、そのうち生還できたのは7名(現在身元が分かっているのは6名)のみであったことが明らかに なっています。
捜査を担当する予審判事は、ほかの元 幹部4人の捜査も進めており、今後逮捕、起訴する見通しです。ポル・ポト政権元幹部として訴追の対象となっているのは「最大6人」とされています が、特別法廷はいまだに氏名を公表していません。この「6人」の中には06年7月に死亡したタ・モク元参謀総長も含まれているため、生存している元幹部の 訴追対象者と見られるのは、ヌオン・チア(元人民代表議会議長)、キュウ・サンパン(元国家幹部会議長・首相)、イエン・サリ(元外務担当副首相)、ケ・ ポク(元党中央委員)などと見られています。今後の見通しとしては、引き続き予審判事が元幹部らの捜査を継続し、来年3月をメドに起訴され、特別法廷の裁 判が始まる見込みとされています。
出所:
・"Khmer Rouge prison chief handed over for trial",ABC News(31 July, 2007) (英語
・「元所長を特別法廷拘置施設に収容=ポト派元幹部で初-カンボジア」 時事通信(2007年8月1日)
・「ポル・ポト虐殺の特別法廷、容疑者拘束」 Newsclip.be(2007年7月31日)
参考:
・カンボジア特別法廷-判事団が訴訟 規則で合意。2008年にも公判開始へ ヒューライツ大阪・ニュースインブリーフ(2007年6月)
・カンボジアのクメール・ルージュ特 別法廷が始動 ヒューライツ大阪・ニュースインブリーフ(2006年7月)
・「カンボジアの 再生とポルポト裁判」 北村泰三 『国際人権ひろば』51号(2003年5月)
・The Khmer Rouge Trial Task Force (クメールルージュ法廷公式ページ) (英語)
(2007年08月02日 掲載)